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知財判例の重要性とは?有名判例や閲覧方法もご紹介!

知財業務に関わっている人にとって、判例を知っていることは実務に大きく役立ちます!

知財業務を担当していると、権利侵害事件の対応に迫られることがあるかもしれません。
侵害事件が起きた場合は、何らかの対策を考える必要がありますが、判例を用いることで対策が見えてきます。

同様の事件に対する最新の判例を正確に理解し、裁判所が下す判断を予測して業務を行うために、とても重要な資料になり得ます。

本記事では元知財部員が、実務に活かせる重要な判例についてご解説いたします。

知財の判例とは?

同じような事案に対する解決基準を示す裁判例のことを、判例と言います。

知財で裁判が起こった場合、過去に起こった類似の事案の判例が、今後の裁判所の判断に大きく影響することとなります。

判例の役割とは?

判例は類似の事案に対する結果に大きく影響します。

例えば、以下のような判決があったとします。

A事件・・・条文Xを適用して、判決Yが下された

このような判決Yが判例となった場合、その後に以下の事件が起きた場合は

A事件と類似したA’事件・・・同様に条文Xを適用して、判決Yが下される

と考えられます。

なぜ判例は重要?

上記の例のように、先例である判例に基づき、類似の事件は判断されます。

これはつまり

先例の判例を知っていれば、結果を予測することができる!

ということです。

結果を予想できるということは、事件が起きた場合にどのように対応すれば勝てるのか、戦略を練ることができるということになります。

判例の記録・結果はどこで見れる?

判例が重要と言われても、一体どこでどうやって見れるのでしょう?

最近はインターネットを利用して簡単に判例を見ることができます!

判例が見れるサイトを以下にご紹介いたします。

  • 裁判所(知的財産 裁判例集)
  • 知的財産判例データベース
  • 裁判所判例Watch

判例は重要とは言っても、実際に事件の当事者にならなければあまり見ることもなく、見たとしても難しくてなかなか簡単に頭に入ってこないかもしれません。

まずは、有名な事件や、最新の判例から興味のある内容などを選んで、覗いてみるのも勉強になりますよ!

詳しくは以下のリンクをご覧ください。

裁判所(知的財産 裁判例集)
▶︎https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search7

知的財産判例データベース
▶︎https://hanrei.jp/

裁判所判例Watch
▶︎https://kanz.jp/hanrei/

誰でも検索できる?

上記で紹介した判例をみることのできるサイトでは、検索することも可能です。

サイトによって検索項目に多少の差はありますが、大体同じ様に検索できます。

検索項目としては

  • 事件番号
  • 裁判期日
  • 全文テキスト

などがあります。

ピンポイントで調べたい事件があれば事件番号を入力するのが早いですが、事件番号が分からない場合は、日付や当事者名で検索してみてください。

閲覧するのに費用はかかる?

有料の判例検索サービスもありますが、上記サイトで公開されている情報は誰でも無料で閲覧可能です。

サイトによって、PDFやテキストでダウンロードや印刷ができたりしますので、ご自身にあった方法でご利用ください。

有名な知財判例を紹介!

最高額の損害賠償事件!「アルゼvsサミー CT特許事件」

1999年パチスロメーカーであるアルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)が同業者のサミーに対し、パチスロの遊技システムの1つ「チャレンジタイム(CT)」に関する特許権(特許1855980、以下CT特許)を侵害したとして訴えました。

この事件が注目を集めたのは、当時の国内における知財訴訟において過去最高額となる74億円の損害賠償を請求したことが理由の一つです。

当時の日本の知財訴訟においては、胃潰瘍治療薬事件が最高額でしたが、それを30億円も上回るものでした。

特許が無効審決に!

この事件において、東京地裁では特許権侵害を認め、サミーに対して74億円の損害賠償を命じました。

しかしその後、CT特許はサミーが起こした無効審判により無効審決が確定したため、知財高裁は

  • 「本件特許権は初めから存在しなかったものとみなされるため、本件特許権を有していることを前提とする請求は、その前提を欠き、理由がないことが明らか」

など述べ、1審判決を取り消し、アルゼの請求を棄却しました。

長く争われた裁判は、サミー勝訴で幕を下ろしました。

本事件は一度は特許侵害が認められています。ただ、その特許が、特許とするべきものではなかったため(無効審決)、結果的にはサミーが勝訴しました。

無効審判において特許請求の範囲が変わらず、特許が維持されたならば、サミーが特許侵害で負けていることになります。そこから考えると、商品を販売する前には抵触調査が重要だと言えます。

また、訴訟を提起する側は、本特許権が無効化されないか事前調査が重要だということが分かりますね。

長引く争い

実は、このアルゼ逆転敗訴から数ヶ月後、アルゼは再びサミーを別の特許侵害で訴えました。

今度はパチスロ史上最大の販売台数を樹立した「北斗の拳」の特許侵害です。

なんと210億円の損害賠償請求です!

長引く訴訟は、業務的にも費用的にも企業に負担となります。訴訟リスクを軽減する知財戦略の検討が必要です。

※無効審判とは?

無効審判とは、特許を侵害したと訴えられた・警告された側が、「この特許はそもそも特許として無効だ!」と主張することから始まる審判のことです。

無効審判を請求する側は、”その特許が無効だと証明する資料”が必要なため、「無効資料調査」と呼ばれる調査を行い、資料を準備します。

無効審判の結果、特許が無効だと判断された場合、アルゼVSサミーのように権利侵害の判決が覆ることとなります。

今回の場合

  1. アルゼがサミーに対して、アルゼの保有するCTの特許を侵害していると訴訟を起こす
  2. 東京地裁が特許侵害を認め、サミーに対して74億円の損害賠償を命じる
  3. サミーがCTの特許は無効だ!と、無効審判を請求
  4. CTの特許が無効という判決になり、知財高裁が1審判決を取り消し
  5. 結果としてサミーが勝訴

という流れになります。

知財の訴訟は一度判決が下ったとしても、無効審判を行うことで判決が覆ることがあります。
・特許を取る際は、無効審判で棄却されないよう、抜け目なく権利化すること
・侵害訴訟や警告を受けた場合、無効審判を請求し、相手の特許を棄却し対処する
などということが、一般化しています。

こんな面白い判例も!

文言の解釈ひとつで逆転判決!「越後製菓vs佐藤食品工業 切り餅事件」

2009年、業界2位の越後製菓が、「サトウの切り餅」で知られる業界最大手の佐藤食品工業の製品が切り餅の「切り込み」の特許権(特許4111382、以下切り餅特許)を侵害したとして、製造販売差し止めと約14億円の損害賠償を求めて提訴しました。

1審の東京地裁と控訴審の知財高裁とで真逆の判決が下り、最終的に佐藤食品が特許侵害していると判断されました。

争点は「文言解釈」

越後製菓の切り餅特許は、切り餅の側面に切り込みを入れることで、餅の吹き出しを防止するとともに、美観を損ねないという効果をもたらすというものでした。

特許請求の範囲の構成要件のうち、

「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に・・・切り込み部又は溝部を設け」

の箇所の解釈が一番の争点となりました。

佐藤食品は、「切餅の底面又は上面には切り込みを設けない」と解釈し、佐藤食品の切り餅には側面の他に、”上下の面に切り込みがある”ので特許の権利範囲に含まれないという主張です。

一方越後製菓は、「載置底面又は平坦上面ではなく」とは、「側周表面」に対する修飾語であり、底面や上面の切り込みの有無は権利範囲とは関係がない、つまり側面に切り込みが入っているものは特許権を侵害すると主張しました。

双方の主張に対し、東京地裁は特許非侵害との判決を下しました。

つまり、佐藤食品の「上下の面に切り込みがある切り餅は特許の権利範囲に含まれない」という主張を認めたのです。

覆された判決

越後製菓は知財高裁に控訴しました。

知財高裁では東京地裁と真逆の判決が出ることとなりました。

つまり、佐藤食品の切り餅が、越後製菓の切り餅特許を侵害しているということです。

争点は東京地裁と同様、切り餅の切り込みについての文言解釈です。

知財高裁は「載置底面又は平坦上面ではなく」という文言と、これに続く「この小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に」との間に読点「、」がないので、これは側周表面を修飾すると理解するのが自然だという判断をしたのです。

解釈の分かれ目は「読点」の付け方

この裁判は、

読点ひとつで判決が変わった

としてとても注目されました。

仮に、読点が

  • 「載置底面又は平坦上面ではなく“、”この小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、・・・切り込み部又は溝部を設け」

とつけられていたならば、底や上面には切り込みは設けず、側面の周りにだけ切り込みを入れる、と解釈されます。

そうすると、佐藤食品の切り餅は非侵害となります。

切り餅事件は、特許請求の範囲の書き方について考えさせられる判決です。

特許請求の範囲を書くときには、製品を的確に表現できているか、また権利範囲を無駄に狭くしていないかなど、気をつけて作成する必要があります。

知財部におすすめ!知財の判例が載っている本!

技術の進展に伴い新しい判例が次々と出ています。

色々な判例に接し、実務現場において企業が当事者になった場合にどう対処すべきなのか、考えておく必要があります。

以下の本には、有名判例や新しい判例などが載っていますので、是非今後の実務のご参考に!

知財判例コレクション

特許、著作権、意匠、商標、不正競争防止法について記載された判例集です。約200件の判例が収録され、全ての事案にコメントが付けられています。学習や実務にも最適!

特許判例百選

法改正や実務の進展が著しい著作権法の分野において、最新の情報と的確でわかりやすい解説が載っています。学部生から実務家まで幅広いニーズに応える必携の書。

特許の重要判例について、104件を紛争類型別に収載しています。令和元年特許法改正にも対応し、特許法を学ぶのに役立ちます!最新は第5版。

実務家のための知的財産権判例70選

知財判例を実務家目線で解説・論評したもので、シリーズで20冊出版されています。最新は2021年度版。過去シリーズもご一緒に!

実務に効く知的財産判例精選 

特許法・著作権法を中心とした最重要判例を厳選し、実務に効くポイントを解説しています。

まとめ

今回は知財の判例についてお伝えしました。

判例は、実務を行う上で重要な資料となります。
切り餅事件の判決のように、読点一つで解釈が変わる判例もあります。

判例をたくさん知ることで、特許請求の範囲の検討を含む知財業務に大いに役に立つことでしょう。
最新の判例も上記のサイトで無料で確認できますので、業務にお役立てください!

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