知財部で働くために英語は必要?知財部経験者が解説します!

知財部で働きたい!もしくはこれから知財部で働く!という方々で

知財部で働くには英語は必要…?
どれくらいの英語力があれば、業務に活かせるのかな…?

など思われる方も多いのではないでしょうか?

知財部で働いていた著者も、以前の職場では外国出願にも対応をしておりました。

日常会話レベルの英語はできていたので、英語に特に抵抗はありませんでしたが、やはり業務で使う英語となると、状況は異なります。

著者の経験も含めて、知財部での英語の必要性や必要な英語力について詳しく解説します!

知財部で働くのに英語は必要?

英語力の必要性は、所属する企業の状況や、担当する業務によって大きく異なります。

海外で製品の製造・販売を行う企業や、海外拠点を持つ企業の知財部であれば、下記のような業務で英語力が求められます。

  • 出願業務
  • 調査業務
  • 中間処理業務
  • 外国人の発明者や代理人との打ち合わせ

これらの業務について、順に解説いたします。

英語を必要とする業務!

外国出願業務

当然ながら、外国出願する際は、特許明細書は英語で記載されます。

企業の場合は、特許事務所が特許明細書を作成することが多いと思いますので、明細書の翻訳を行なう業務は少ないと思います。

この場合は、明細書作成に必要な翻訳レベルの英語力は必要ありません

しかし、出来上がった出願明細書の内容はチェックしなければいけませんので、ある程度の英語力は必要となってきます。

発明内容がきちんと表現されているかどうか、特許請求の範囲が的確に表現されているかを確認することはとても重要だからです。

みなさんご存じのように、特許明細書は日本語でも言い回しが独特で理解するのが難しいですよね? これを英語で読むのですから最初は苦労するかもしれません。

しかし、自社製品に関する技術用語や、よく出てくる特許言い回しは自然と覚えてくると思いますので、最初は大変ですが辞書で単語を調べながらのチェック作業となるでしょう。

出願業務では、主に英語のリーディングスキルが必要とされます。

調査

出願するにあたり、先願調査は必要です。調査も英語で行う必要があります。調査を行う際は、国内の調査と同様に国際分類(IPC)やキーワードで検索をすることになるでしょう。

検索キーワードももちろん英語になりますので、発明内容をどのように英語表現するのかを調べなくてはいけません。

ひとまず自分なりに調べた英語表現で検索してみると、検索結果に似たような文献がヒットすると思いますので、その特許明細書で使われているキーワードを参考にする方法もおすすめです。

調査では出願業務と同様に、リーディングスキルが求められます。

中間対応

拒絶理由通知書などがきた場合は、意見書や手続補正書で対応することになるでしょう。

英語の拒絶引用文献の場合は翻訳して、自社出願内容との比較をしなくてはいけません。

英語の特許文献を読むことは大変ですが、単語を辞書で調べながら、内容を理解することができれば十分です。

基本的には特許事務所にて翻訳し、対応案を検討してもらうことも多いですが、企業によっては社内の知財部が対応することもあります。

著者の実体験ですが、自社製品の英語表現や特許の独特な言い回しは、何度も対応していけば自然と覚えます。

もちろん知らない単語は出てくるので辞書は必要ですが、ある程度文章の読み書きができれば徐々になれてくるでしょう。

中間対応ではリーディング及びライティングのスキルが必要です。

英語での打ち合わせ

外国人開発者(社内)との打ち合わせ

海外に拠点のある企業であれば、外国人開発者もいらっしゃると思います。 その場合、英語で発明発掘を行い、出願の準備を行わなくてはなりません。

きちんと発明の内容を理解し、さらにその内容を文書化して出願まで結びつけるのですから、かなりの英語力が必要となります。

現地代理人との打ち合わせ

外国で権利化する場合、現地代理人(現地の弁理士)と打ち合わせをするケースがあります。

正確に発明の内容を相手に伝える必要がありますので、高度な会話をする必要があります。

今まで述べてきた業務とは異なり、直接話をすることになりますので、自社技術や特許に関して英語での会話力が重要となります。

打ち合わせではスピーキング及びリスニングの能力が必要とされます。

知財部が英語力を鍛えるメリット!

現在の業務では英語力は必要ない!という知財部の方でも、英語力を鍛えることで下記のようなメリットがあります。

業務の幅が広がる!

現在は国内の案件のみを担当している場合でも、英語力があれば国内だけでなく外国出願も業務に抜擢されるかも知れません。

所属の企業が国内でのみ製造販売を行なっている場合でも、今後海外展開したいという話も出てくることもあります。

出世・キャリアアップにも繋がる!

英語力をきっかけに業務の幅を広げることで、出世やキャリアアップにも繋がります。

例えば、外国出願業務を担当すると、出願ルート(PCT・パリ条約)の違いなどもあり、国内だけの業務をやっているより、より多くの知識や経験を得ることができます。

また海外進出の際に、外国出願業務を担当し、社内全体の売上アップに貢献したとなれば、社内での評価も高まるでしょう。

やはり英語力は、もっているに越したことがありません。

転職にも有利

英語力は転職の際にも大きくプラスに働きます。

近年、企業のグローバル化が進んでいることから、英語力を備えている人材は非常に重宝されます。

また知財部で英語力を必要とする企業は、大手企業が多い傾向にあります。

大手に転職を希望する場合、英語力はプラスに働くでしょう。

また採用基準としてTOEICの点数で英語力を判断している企業は多いので、TOEICの勉強をしておくことをおすすめします!

知財部に必要な英語力は?

英語力が必要と言っても、どれくらいの英語力が必要かを示すことはなかなか難しいです。

知財部でも求められる、

  • リーディング
  • ライティング
  • スピーキング
  • リスニング
  • TOEIC

のレベルについて説明しますので、ご参考にしてください。

リーディング

特許明細書を読むためには、技術用語、特許の専門用語を知っている必要があります。もちろん全ての用語を覚えることは不可能ですので、よく出てくる用語や、自社技術に関する用語はある程度覚えておいた方が良いですね。

辞書で調べながら特許明細書を読むこともできますが、それでは時間がかかってしまいますので、ある程度の専門用語と、特許明細書の独特な言い回しなどは、すらすら読める力はつけておいた方が業務効率も上がりますよ!

ライティング

外国出願の際、一から明細書を書くことはあまりありませんので、リーディングほど高度な英語力は求められません。

企業によっては中間処理(意見書・補正書)の作成を行うケースもあるかと思うので、その際は

  • 一般的な英文法
  • 自社の技術に関する言い回し
  • 業界で使われる専門用語

などは書けるようにしておく必要があります。

「辞書を引けば、ある程度の文章は書ける」

くらいの英語力であれば、業務をこなしていくうちになれてくるかと思います。

スピーキング・リスニング

英語をスピーキング・リスニング力は、外国人技術者や外国人代理人と打ち合わせをすることがある企業であれば、ネイティブレベルの英語力が必要です。

会話の中で、聞いたことのない専門用語や言い回しが出てきてしまって、発明の内容や技術的説明が理解できなかったということはあってはいけません。

発明に関する技術用語、特許の専門用語を十分に知っている英語力を持った上で、相手の言っていることを理解するリスニング力だけではなく、技術内容について質問してさらに深く発明を掘り下げられるようなスピーキング力が必要です。

TOEICだとおおよそ何点くらい?

一般的に、ビジネス上ではTOEIC600~800点以上の英語力が必要だと考えられています。

しかし、TOEICは一般ビジネスや日常会話で必要とされる英語力であり、特許業務で使用する専門的な用語や、独特な言い回しは出てきません。

ですので、必ずしもTOEICが高得点である必要はないかもしれません。

しかし、

  • 海外に拠点のある企業で外国人発明者がいる場合
  • 現地代理人とやり取りをする必要が出てきた場合

などは、やはり英語力は必要となってきます。

お勤めの企業によって、特許の専門用語を話せるレベルの英語力は必ずしも必要ではないと思いますが、ビジネス会話ができるレベルの英語力は持っておいた方が良いですね。

知財部に限ったことではありませんが、ビジネス上求められる英語力を身に付けるために、TOEICで800点前後を目標に勉強することをおすすめします!

転職の応募条件で課される点数

公開されている求人を見ると、以下のような条件が多く見受けられます。

  • 英文メールでのメールの作成・明細書読解が可能な英語力(目安TOEIC600点~)
  • TOEIC600点以上あるいは同等の英語力
  • 海外クライアントとのやりとりが可能な方(TOEIC 700点目安)
  • 英文の契約書の作成が可能な英語力(TOEIC800点〜)

求められる業務によってTOEIC600~800点の間で募集をかけているケースが多いようです。

知財部へおすすめの勉強方法

知財部として英語を勉強するには何からやればいいのだろう?と思われる方は、ぜひ以下の勉強方法を参考にしてみて下さいね!

資格の勉強をする

TOEIC

TOEICは知財に関わらず、ビジネスの場や日常生活での会話や文章でのやりとりといった英語能力を測るためのテストです。

特許業務で使う専門用語や独自の言い回しについてはTOEICでは出てきませんが、ビジネス上、外国代理人や外国人発明者と打ち合わせする場合などで役に立つことでしょう。

TOEICについては沢山の参考書が販売されていますので、ご自身の好みで選ぶのがいいと思います!

翻訳検定

翻訳検定を受けることで、自分の翻訳力を試すことができます。

有名な翻訳の検定としてほんやく検定(日本翻訳連盟)があります。翻訳のお仕事をするなら持っておきたい資格ですね。

翻訳検定1,2級を取得すれば就職にも有利と思われますが、合格率が5%くらいで簡単に取得することはできないと思います。しかし、ほんやく検定に向けて勉強したり受験したいということは、実際の実務にとても役立ちますので、チャレンジする価値はあります。

また、特許翻訳に特化した検定として、

などがあります。

通常の技術翻訳力に加え、特許の知識も求められるため、難易度は高いと思われますが、企業において外国出願を担当されるなら、勉強しておいて損はありませんね!

セミナーを受講する

特許翻訳力向上セミナー(公益社団法人日本技術英語協会)

特許翻訳者、技術翻訳者、それを目指す方を対象としたセミナーとなり、難易度は高いと思いますが、各回テーマが設定されています。

英語表現で気になるところ、勉強してみたいテーマがあれば受講してみるのもおすすめです。

また、特許に特化したセミナーだけではなく、技術英検のセミナーもありますので、ご自身に合ったセミナーを見つけて下さいね。

ただし、会員と非会員とで受講料が異なりますので、詳しくは公式ホームページをご確認ください。

本で勉強する

外国出願のための特許翻訳英文作成教本(丸善出版)

日本語の特許明細書を、英文特許明細書に翻訳するためのテクニックが記載されています。

特許明細書の言い回しは独特で、翻訳するのは難しいと思います。

権利範囲を分かりやすく英語で表現するためにどのように書くのかを学ぶことで、翻訳業務を行う場合だけではなく、外国出願における明細書チェックや調査などの実務を行う際にとても役に立つと思います。

まとめ

知財部において、英語力はあるに越したことはありません!

TOEIC高得点でなくても、ビジネス英語が多少できると、社内での昇格や海外勤務、転職時にも有利となります。

しかし、英語を必ずしも必要としない

  • 国内出願しか行わない
  • 国内業務部門と国外業務部門とが分かれている
  • 外国人発明者がいない
  • 海外拠点がない

など企業などもありますので、

英語に自信がなくても、まずは英語力が必要でない職場で特許業務を行いつつ、英語の勉強をするという方法で習得していく方法もおすすめです。

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