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商標と著作権との違い

商標と著作権、どちらも聞いたことがある人は多いでしょう。

ネット上のコンテンツを利用したり、書き込んだりする際に、これらに注意するようにという話もよく耳にします。

知的財産の権利であることはなんとなくわかっても、その違いや、どちらで保護されるものなのか、わからない点もあるのではないでしょうか。

そこで商標と著作権の違いについて、整理して解説します。

執筆:金原正道 弁理士

 商標と著作権の制度の違い

 商標

商標登録は、商標を保護するために、特許庁に対して出願をし、ネーミングやロゴなどの登録をする制度です。

商標法では、

  • 「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」(商標法第1条)

とされています。

つまり、商標登録の制度は、ネーミングやロゴなどの事業に使用する識別標識を保護し、取引の信用秩序を維持するための、産業政策によるものです。

手続の管轄は、経済産業省の外郭官庁である特許庁となります。

著作権

著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものをいい、創作した時点で著作権が発生し、登録手続きをする必要がありません。

著作権法では、

  • 「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」(著作権法第1条)

とされています。

つまり、著作権の制度は、文芸、音楽、美術、映像などの著作物を保護し、文化の発展とその成果の公正な利用を維持するための、文化政策によるものです。

なお、著作者の権利を明確にしたり、ライセンス契約や権利の譲渡等をするなどの便宜上、創作年月日の登録や、第一発行年月日の登録、実名の登録、権利についての登録をすることができます。

手続の管轄は、文部科学省の外郭官庁である文化庁となっています。

権利の期間の違い

著作権には、複製権、翻案権、頒布権などのさまざまな権利があり、さらに元の著作物を利用した二次的著作物の権利があるなど、複数の権利の束のような性格があります。

さらに著作権には、著作者の氏名表示権、公表権、同一性保持権といった人格権という側面もあります。

こうした違いを除けば、独占的に使用、利用できる権利という点では似ています。

著作権は、著作物の創作と同時に発生し、原則として、著作者の死後70年を経過するまでその権利が存続します。

一方、商標権は、登録日から10年間ですが、10年ごとに更新し、希望すれば半永久的に保有できるという特徴があります。

長く使用すればするほど、一般的には商標に付随する信用が増大するためです。

商標と著作権の保護対象の違い

もっとも注意するべき点は、商標と著作権それぞれの保護対象の違いです。

独創的なネーミングを考えた時に、うろ覚えの知識では、もしかしたら著作権で守れるのではないかと勘違いしてしまうかもしれません。

デザイナーに依頼してロゴを制作したときには、ロゴのデザインを、著作権ごと譲渡してもらうなどの契約をすることがあります。

そこでロゴのデザインには元々著作権があると安心してはいませんか?

ここで安心してしまうと、後で問題が生じるかもしれません。

著作権の保護対象の種類

著作物の種類には、たとえば下記のものがあります。

  • 論文、小説、脚本、詩歌、俳句、講演などの、言語の著作物
  • 楽曲や、楽曲を伴う歌詞などの、音楽の著作物
  • 日本舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊、パントマイムの振り付けなどの、舞踏、無言劇の著作物。
  • 絵画、版画、彫刻、漫画、書、舞台美術、美術工芸品などの、美術の著作物。
  • 建造物自体や、その設計図などの、建築物の著作物。
  • 地図、学術的な図面、図表、模型などの、地図、図形の著作物。
  • 劇場用映画、テレビ映画、ビデオソフトなどの、映画の著作物。
  • 写真の著作物
  • プログラムの著作物
  • 上記の著作物(原著作物)を翻訳、編曲、変形、翻案し創作した、二次的著作物。
  • 百科事典、辞書、新聞、雑誌、詩集などの、編集著作物。
  • データベースの著作物

このうち、商標との関係で、商標でも著作権でも保護されるものはどれでしょうか。
別の言い方をすると、著作権のある商標はどれなのか、ということについて検討してみます。

ネーミングなどの文字商標は、言語の著作物にあたるか?

著作権法で保護される著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものです。

また、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものであることも必要です。

一般にネーミングは、商品やサービスの名称であって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属さないものであるほか、思想または感情の表現ではありません。

さらに、短い言葉であるため、独創的なネーミングであっても、創作的に表現したとまでは認められないといえます。

ネーミングに著作権が認められることはほぼないといってよいでしょう。

ネーミングの公募などの募集要項で、著作権は主催者に帰属する、といったような決まりがある場合でも同じです。

後から著作権を主張されてもめることを防ぐために、念のために入れた規定だと考えられるためです。

キャッチフレーズなどの文字商標は、言語の著作物にあたるか?

企業のスローガンや、標語、商品の宣伝文句などの、いわゆるキャッチフレーズは、そもそも商標登録が認められないことが多いものです。

指定商品・指定役務の宣伝広告や、指定商品・指定役務との直接的な関連性は弱いものの企業理念・経営方針等を表示する標章のみからなる商標については、識別力のない商標(商標法第3条第1項第6号) であるとして登録されません。

商標登録が認められなかった事例としては、「パールブリッジを渡ってきました」、「さわやかさをお届けします」、「たっぷりカリフォルニア太陽の味」などがあります。

一方、「マックスはあなたの手!」は登録が認められました。

こうしたキャッチフレーズについても、大半は短い文章であり、創作性が認められず、著作権がないものがほとんどだといえます。

著作物であるかどうかが争われた裁判例としては、スピードラーニング事件というものがあります。

知財高裁は

「キャッチフレーズのような宣伝広告文言の著作物性の判断においては、個性の有無を問題にするとしても、他の表現の選択肢がそれほど多くなく、個性が表れる余地が小さい場合には、創作性が否定される場合があるというべき」

として、

「他の表現の選択肢はそれほど多くない」、「語句の選択は、ありふれたもの」だと判断しタコの事例では、著作物であることを否定しています(知財高判平成27年11月10日).

ロゴなどの図形商標は、美術の著作物、図形の著作物にあたるか?

文字に一定のデザインを施したフォントには、著作権が認められません。

フォントの使用にあたり規約が定められていることはあっても、利用者との契約に過ぎず、著作物だという根拠にはなりません。

文字をデザインしたロゴであっても、著作権はまず認められないことがほとんどです。

この点は、ネーミングの場合と同様に、文字をデザインしたロゴは、商品やサービスの名称であって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属さないものであるほか、思想または感情の表現ではありません。

独創的なデザインであっても、著作物といえるほどの創作性はほとんどの場合にはないといってよいでしょう。

裁判例としては、アサヒビールのロゴ「Asahi」の著作物性が争われた事件があります。

東京高裁では、

  • 「文字は万人共有の文化的財産ともいうべきものであり、また、本来的には情報伝達という実用的機能を有するものであるから、文字の字体を基礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは、一般的には困難」

としています。

さらに、

  • 「仮に、デザイン書体に著作物性を認め得る場合があるとしても、それは、当該書体のデザイン的要素が『美術』の著作物と同視し得るような美的創作性を感得できる場合に限られることは当然である。」

とされました(平成8年1月25日)。

美術の著作物と同視し得るほどの創作性がある場合に、著作権が認められる余地は残されています。

しかし、ネーミングやロゴなどの商標が、著作権で保護されると考えてしまうことは、たいへん危険であることがおわかりいただけるでしょう。

キャラクターの図形商標、立体商標、音商標は、美術や音楽の著作物にあたるか?

特殊な態様の商標としては、キャラクターの図形や、立体商標が美術の著作物にあたるかどうか、音商標が音楽の著作物にあたるかどうかということも、検討してみたいと思います。

図形商標の場合でも、キャラクターの絵などの場合には、著作物性が認められる可能性が高いといえます。

漫画のキャラクターなどは、もともと著作物の中に登場する絵であって、文字をデザインした図形商標にくらべ、創作性が高いものだからです。

後述するように、漫画「ポパイ」の事例では、「ポパイ」、「POPEYE」という名称には著作物性が認められなかったものの、絵柄については認められています。

三次元の立体からなる商標については、看板などの立体では著作権はないものが多いと考えられます。

しかし立体商標の場合にも、キャラクターの無為ぐるみなどには、著作物性が認められるケースも多いのではないかと思います。

音の商標については、楽曲の長さや創作性にもよりますが、著作物性が認められるケースは多いであろうと推察されます。

他人の著作物を勝手に商標登録できる?

商標法第4条第1項第7号では、「公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録することができない」と規定しています。

一例としては、その商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反するような場合や、他の法律によってその使用が禁止されている商標、国際審議に反するような商標である場合などには、公序良俗に反するとして、登録が認められません。

仮に審査を通過して登録されてしまった場合でも、登録後に無効審判を請求して権利を無効にすることができます。

「ポパイ」の特徴を顕著に表した図形を配した商標の登録は、一見して漫画の「ポパイ」そのものを直ちに認識させ、他人の著名な標章の盗用と推認し、商標法第4条第1項第7号に該当し無効であるとされた事例があります(無効昭和58-19123)。

この特許庁での無効審判では、「ポパイ」の文字自体は著作物ではないとしながらも、

「本件商標が、『ポパイ』の図形を直ちに想起させるものである以上、本件商標の使用にたいして著作権が及ぶことに変わりはない。」

として、ポパイのキャラクター図形の著作物性を認めています。

なお、商標権が他人の著作権と抵触するものである場合には、無効審判で権利を無効にする手続のほか、

「商標登録出願の日前に生じた他人の著作権若しくは著作隣接権と抵触するときは、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。」という規定もあります(商標法第29条)。

まとめ

以上、商標と著作権の違いについてみてきましたが、創作性のあるキャラクターなどを除けば、著作権法では商標は保護できないことがわかります。

著作権の相談に対応できる特許事務所もあります。

デザインしたロゴなどの、創意工夫をした商標であっても、商標登録については専門家である弁理士に相談をするのがよいでしょう。

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