文系でも弁理士は目指せる?現役弁理士が解説

文系でも弁理士は目指せる

弁理士は理系の資格である、と言われることが多いです。

確かに、弁理士の約8割は理系であり、文系の弁理士が特許業務に携わることはほとんどありません。

しかし、特許業務以外の業務については、理系・文系を問わず業務をすることが可能であり、文系でも弁理士を目指すメリットはあります。

理系だから弁理士試験に有利、というわけではない

弁理士の約8割は理系です。しかし、理系だから弁理士試験に有利というわけではありません。

弁理士試験の内容は「短答式筆記試験」「論文式筆記試験(必須科目・選択科目)」「口述試験」の3つです。

このなかで理系と文系で試験科目が異なるのは、論文式筆記試験(選択科目)のみ。残りの試験では文系理系に関わらず、知的財産権に関する法律について問われます

選択科目では、機械や数学などの理工系や、法律を選択して試験を受けることになります。

しかしこの選択科目は、大学院の卒業や、行政書士等の一定の資格によって免除されるため、選択科目の試験を受ける方は、論文式筆記試験を受験する方の2割程度です。

以上より、弁理士試験に合格する点において、理系・文系の違いによる有利・不利はありません。

参考:令和3年度弁理士試験最終合格者統計
令和3年度弁理士試験論文式筆記試験(必須科目)受験者統計

文系弁理士の仕事内容

文系弁理士が主に扱う仕事としては、

  • 意匠・商標業務
  • 外国案件
  • 契約

があります。

意匠・商標業務

文系の弁理士が行う主な業務の一つとして、意匠・商標業務があります。意匠・商標業務の主な内容としては、

  • 出願書類の作成
  • 中間処理(補正書、意見書の作成)
  • 調査(先行技術調査、実施可否調査、無効調査)
  • 鑑定

があります。

ただし、意匠業務や商標業務については、理系の弁理士が担当することもあるため、同業者との競争は特許よりも厳しいです。

そのため、同業者との差別化をどのようにするか、そのためにどのようなスキルアップが必要か、について、常に考えながら業務をする必要があります。

外国案件

外国案件に関する業務も、文系弁理士が行う仕事のひとつです。外国案件は大きく2つに分けられます。

  • 内外業務(日本のクライアントが外国で権利を取得する際に必要な手続)
  • 外内業務(外国のクライアントが日本で権利を取得する際に必要な手続)

どちらを担当するにせよ、出願手続きに要る書類や現地とのやり取りをする指示レターの翻訳、およびその翻訳文のチェックが主な業務となります。

さらに内外業務の場合、外国の特許庁から届いた様々な通知への対応も行っていきます。

なお、外国の特許庁から通知された様々な通知に対する対応については、特許業務や意匠・商標業務をしている方が担当することもあります。

契約

文系弁理士は、知的財産権に関する契約にまつわる業務を行うこともあります。

契約業務は企業戦略と関わる部分が多いことから、特許事務所で扱うことはあまりありません。契約業務の主な仕事としては、

  • 実施許諾(ライセンスの締結)
  • 共同開発契約

があります。

いずれも民法と知的財産法の知識が要求されるため、文系の弁理士、特に法学部出身の方が有利な業務となります。

文系弁理士のキャリアプランについて

文系弁理士のキャリアプランについては、同業者との差別化という観点で考えることが一般的です。

意匠・商標業務を担当している場合、まずは国内案件と外国案件からスタートすることが多いですが、その後のキャリアプランとしては、

  • 意匠、商標出願をする前段階の相談業務(コンサルティング)
  • 経営と知的財産に関するコンサルティング
  • 司法試験に合格し、知財弁護士になる

等があります。

いずれの場合も、将来性を考慮して、現在の業務にプラスアルファをしていくというスタンスになります。

将来的に独立は可能?

文系の弁理士でも独立は可能です。私の知人でも、文系弁理士で独立している方がいます。

ただし意匠・商標業務の場合、同業者との競争が特許よりも厳しいという特徴があります。

ですので独立後に生計を立てるためには、国内案件と外国案件のうち特定の分野に強みを有しているか、コンサルティング等何らかのプラスアルファが必要になります。

未経験でも転職はできるのか

文系かつ未経験の弁理士の場合、転職に際しては以下のいずれかの条件を要求されることが多いです。

  • 語学力
  • 年齢(できれば35歳以下)
  • 論理的思考力や文章表現力

未経験の方が知財業務を始める場合、一人前になるまでに2年から3年程度の時間を要することが多いため、年齢の要素はかなり大きいです。

また知財業務の場合、実務能力の伸び具合を大きく左右するスキル(例えば語学力や論理的思考力、文章表現力)も重要な要素となります。

文系弁理士として活躍するなら、どんなスキルを磨けばいい?

文系弁理士として活躍したいなら、このような能力を磨くとよいでしょう。

  • クライアントの業種における意匠・商標の類否
  • 英語読解力、および英文レター作成能力
  • 外国の意匠・商標制度
  • クライアントのビジネス形態やビジネスモデルの知識
  • 他の資格(弁護士、中小企業診断士など)

ただし、最初の3つについては、ほとんどの文系弁理士が勉強していることになりますので、文系弁理士として活躍するためには必須のスキルであると考えられます。

文系弁理士と理系弁理士の年収

文系弁理士と理系弁理士の年収については、特許事務所に勤務している場合と企業に勤務している場合とで多少異なります。

特許事務所に勤務している場合、特許を担当していない弁理士(文系はだいたいこちら)の年収は、筆者の体感でおおむね500万円~700万円です。

また、特許を担当している弁理士(ほぼ全員理系)の年収は、この年収よりも100万円程高いです。

一方で、企業に勤務している場合、文系・理系による違いはほとんどなく、企業の規定に基づくものが大半です。

文系弁理士が特許業務をするためには

特許業務の場合、技術分野として以下の分野に分けることができます。

  • 機械系
  • 電気系
  • 化学系
  • ビジネスモデル

この中で、ビジネスモデルについては、文系弁理士でも担当することがあります。

ビジネスモデル特許

ビジネスモデル特許とは、ビジネスモデルを実施する際の技術的な工夫に関する特許です。

ビジネスモデル特許の場合、機械、電気、化学のような専門性はそこまで要求されないため、文系弁理士でも担当することがあります。

ビジネスモデル特許の例としては、

  • レンタル商品を配送者を通じてレンタル店に返却するためのシステム
  • クラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理方法

などがあります。

理系の大学に通う

機械系、電気系、化学系を扱う場合、理工系の大学で学ぶ基礎知識が要求されることが出てきます。

そのため、勤務後に夜間の大学に通学して科学知識を習得し、特許業務を行なう文系弁理士もいます。

仕事と大学の両立はかなりハードであり、残業の多い職場ではこの両立は困難です。

しかし、通学していることを職場に説明し、大学の長期休み期間には積極的に残業をするなどの対応をすることで、両立も可能になります。

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