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企業の知財分析コーナー -LINE編- (vol.2) 

知財の情報は企業の分析を行う上で、非常に役にたちます。
本コーナーでは、知財部に所属する現役の弁理士が、気になる企業の知財分析を行います。

知財部にお勤めの方や経営層の方に参考になるように、知財分析の方法から、実務・経営に活かす方法までわかりやすく解説していきます!

実際に私も、特許出願業務や他社特許調査等を定常的に実施している他社の知財分析を行うことで、その会社の今後の動向等をある程度キャッチアップすることができるようになりました。

なぜ分析を行うのか

基本的に、製品やサービスを製造・販売する際において、市場の大小に関係なく、競合となる会社は存在します。魅力が高ければ高いほど、その競合会社の影響度は相対的に高くなり、その会社の商品やサービスの動向を定期的に観察しないと、自社のシェアを奪われてしまい、営業利益が激減してしまう可能性があります。

このようなリスクを回避するために、競合会社を分析し、自社の事業戦略・商品戦略を立案しましょう。

環境分析 -PEST分析-

「調査をせずに市場参入を試みるのは、目が見えないのに市場参入をしようとするようなもの」と言っているように、環境分析の重要性を説いています。

pest分析
  • 政治=Politics
  • 経済=Economy
  • 社会=Society
  • 技術の進化=Technology

これらの4つの情報から、自社の経営戦略や事業戦略を分析します。

SWOT分析がミクロ要因(自社およびステークホルダーの内部要因)を分析するフレームワークに対し、PEST分析はマクロ要因(外部要因)を分析するフレームワークです。

SWOT分析と合わせて行うことで、より精度が高く、自社の取るべき戦略を導き出すことができます。

企業の知財分析~Aホールディングス株式会社~

韓国NHNの日本法人です。スマートフォン向けメッセンジャーアプリ「LINE」の運営が主力事業です。アプリにおけるスタンプ事業、ゲーム事業、広告事業、コンテンツ配信事業が主な収益源になります。設立は2009年4月、上場は2016年7月と非常に勢いのある会社になります。

なお、2021年2月28日に、ソフトバンク株式会社とNAVER Corporationの事業主体同士の経営統合に伴い設立されました。

PEST分析による外部要因の影響を考察

Politics

影響を受けそうな政治的な世の中の動きでいうと、

  • 電気通信事業法
  • 青少年インターネット環境整備法
  • 不当景品及び不当表示防止法等
  • 個人情報保護法(2022年4月改正)

などの法的規制が挙げられます。

また、コロナ禍により、リモート環境の整備が進んでおり、オンラインを積極的に取り入れるように各企業に対して政府からの要望もあります。

Politicsにおける機会

コロナ禍におけるリモート環境の整備や国が進める中小企業のDX化はLINEとっては大きな機会です。

日本国民のほとんどが利用するLINEは、中小企業がリモート対応やビジネス活用するのにぴったりなツールです。

特に今は小規模事業者に対して数多くの補助金がでており、LINEの広告やビジネスアカウントの活用も補助の対象となる補助金もあります。

コロナ禍によって推進されているデジタル化は、LINEとっては大きな機会です。

Politicsにおける脅威

広告事業がメインであるLINEおいて、個人情報保護法の改正は脅威になるかもしれません。

特にデジタル広告の分野では、個人情報の取り扱いがどんどん厳しくなる傾向にあり、今回の法改正も、広告媒体側のデータの取り扱いが厳しくなるものでした。

ユーザーの行動データに基づき、広告効果を上げるデジタル広告では、ユーザーデータの取得なしには広告効果を持続させるのが難しく、広告出稿主の喪失にも繋がるかもしれません。

欧州のGDPRの流れもありますので、LINEの広告事業は今後も対応に迫られることとなるでしょう。

Economy

国内の月間利用者数は8,900万人であり、日本の総人口の約70%が活用しており、日本国内においては、生活インフラとして定着しております。

また、ユーザ属性も以下のような構成になっており、幅広い世代が使用しております。

参考:https://www.linebiz.com/sites/default/files/media/jp/download/LINE%20Business%20Guide_202201-06_summary.pdf

Economyにおける機会

国内人口の約7割のシェアを獲得しているため、事業の横展開が非常にしやすい状態です。

またコロナ禍の影響で電子決済やネットショッピングを活用する傾向にあるため、LINE PAYを持つLINEにとっては大きな機会と言えるでしょう。

Economyにおける脅威

コロナ禍やウクライナショックにおける株価の暴落は、LINE証券にとってはアクティブユーザーを減らす脅威ともなりえます。

気軽に始められることを売りにしているLINE証券では、株式投資に置いて入門者・ライトユーザーは多く利用していると想定されます。

株価の変動の大きいタイミングでは、株式購入や積立に消極的になってしまうユーザーは多いのではないかと推測できます。

Society

LINEというプラットフォームを利用することで、メッセージを主体としたコミュニケーションだけではなく、音楽、漫画、ゲーム、投資等の色んなサービスを楽しむことができます。

また、色々な事業を集約することで、LINEというプラットフォームを幅広い世代が利用することができ、特定の世代をターゲットにした事業を展開するよりも、世代による影響は受けにくいと思われます。

Societyにおける機会

圧倒的なユーザーを囲っている日本でのマーケットにおいては、そのプラットフォーム力が大きな機会となっています。

国内ユーザーからもLINEは圧倒的な支持率を誇っており、どの事業を展開しても一定の信頼感を担保した状態で、新規サービスを立ち上げることができます。

Societyにおける脅威

国内で最強クラスのプラットフォーマーであるLINEですが、新たなメッセージツールはどんどん参入してきます。

既存ツールでも、「若者はLINEを使わずInstagramを使用する」という風潮もでてきており、代替ツールの脅威は常に存在します。

Technology

広告をコア事業として位置づけ、機械学習・FINTECH等と新しい技術を取り入れようとしています。

また、LINEの暗号資産事業及びブロックチェーン事業を展開するLVC株式会社は、アジア最大のメタバースプラットフォーム「ZEPETO(ゼペット)」から販売されるNFTの技術に、LINE独自のブロックチェーン「LINE Blockchain」を使用しようとしております。NFT事業は各社参入しようとしており、非常に魅力的な事業だと思われます。

(参考:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2021/4021)

上記の内容を踏まえて、機会と脅威について整理していきます。

Technologyにおいては主だった脅威は見当たりませんでした。

PoliticsEconomySocietyTechnology
機会オンライン環境の整備国内インフラとしての確立プラットフォーム幅広い世代が体験AI・NFTの活用を使った広告事業の展開
脅威法規制株価暴落による、LINE証券のアクティブユーザー減少代替ツールの参入

先ほどの4つの要素を「機会」と「脅威」に分けてみました。

そして、この分析を基に、具体的なアクションを定めていきます。

例えば、Technologyであげたように、広告事業を積極的に伸ばしていこう。という事業戦略を描いたと思われます。

特許情報の分析

続いて、特許情報を使った分析をしてみましょう!

分析手法1-出願件数の分析

集計方法としては、出願人で特許の母集合を作成します。

この集合に対して、FIの数を年度毎に累積値を表示したものになります。

FIについては、以下の記事を参照ください。

(参考:  )

数が増加するほど、色んな技術での出願がされていることがわかります。

2016年に120件程度と数が増えてきていることから、事業の多角化を推進している。ということが理解できます。

このように、時間軸でFI数を図にすると、その会社がいつ、事業の数を増加したかがわかります。

また今後、FI数が伸びるようなことがあれば、何か新たな事業が始動するのかも知れない。など、企業の今後の展望などを推測することができます。

分析方法2-技術分野の分析-

出願している特許の技術分野の分析を行うと、その企業のメイン事業はなにか・企業のコアコンピタンス(強み)がどこに隠れているか、などということが推測できます。

上記の表は取得している特許における出願年と技術分野に関する件数を表示したグラフになります。

方法としては、上記分析方法1で実施した内容と同様で、出願人で特許の母集合を作成します。この母集合に対して、出願年×技術分野を選択して作成します。

このグラフからは、UIやリアルタイムでのメッセージ送受信に技術が非常に多く、これらの技術は、メッセージ機能だと理解できます。

また、2016年頃からマーケティングやSNSに関する技術の出願が増えてきていることから、LINEのフレンド登録等のSNS的な側面やマーケティング(広告がコアとなる収入源)であることから、マーケティングについても注力していることがわかります。

2020年の有価証券報告書では、売上収益が増加した主な要因は、広告に関連した売上収益の増加によるものです。との記載がされています。

また、LINE Business Guide(参考 https://www.linebiz.com/sites/default/files/media/jp/download/LINE%20Business%20Guide_202201-06.pdf)

には、広告の全体構成が記載されており、様々な場面でユーザーが閲覧したい広告を配信することができます。

このように、出願年と技術分類を図にすると、その会社がいつ、どのような技術に注力をし、今後どのような技術を注力していくかが推測できます。

分析方法3-競合との比較-

同業他社の特許の権利化状況を分析することで、自社の業界内での立ち位置や、他社の経営戦略を推測することができます。

上記は、分析方法2で近年注力していると思われるFI G06Q 30/02(マーケティング)で母集合を作成いたしました。

上記、母集合に対して、どの出願人が出願しているかを示したグラフになります。

このグラフから、ヤフー株式会社、ソニー株式会社等が注力しているのがわかります。

LINE株式会社は、ヤフー株式会社と比較すると、出願件数が圧倒的に少ないことがわかります。

各社、どのような媒体で広告を表示するか、ターゲッティング広告なのか、等と広告とひとまとめに言っても、いろんな広告方法があるため、各社が広告方法にあわせて、自社の自由度を損なわないように出願しているということが理解できます。

分析から得た情報

3つのグラフを作成して、読み取れることは上記で示した内容になります。

なお、広告をコア事業としている会社は、LINE株式会社以外にも多く、広告事業は非常に華のある業界であり、今後の市場成長率も高いということが読み取れます。

大手企業が沢山特許を取得しているので、これから広告事業に参入しようとする会社は、他社の特許に注意を要します。

LINE株式会社は、件数自体は大手と比較すると少ないかもしれませんが、現在の広告事業を運用する特許は少なからず取得していると思われます。

広告事業を立ち上げる場合、特許侵害に注意が必要!

広告というのは、今やネット社会において、どこでも見られます。それだけ身近になったものですが、やはり筆者である私も、自身がほしいものが暇な時に出ると、クリックして、その商品を閲覧したりします。

このような広告は、商品やサービスを問わず、各社がモノを販売するうえで重要な内容であるため、ノウハウがない会社が、広告事業を立ち上げている会社に委託するというのは、必ず起こりうることだと思います。

そして、そのように、需要が大きい広告業は、各社参入する見込みが今後もあることから、

権利を侵害しないかしっかりと調査しておくことが重要です。

まとめ

知財1件1件を確認することは大事ですが、図にすることで、俯瞰的な視点で他社がどのような動きをしているか、という点が把握できます。

特に収益率が高い事業や今後成長していく事業は、他社に対する参入障壁を形成する意味でも知財権の活用は大事です。

※本分析は、PATENTMAPEXZを使用しました。

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