特許出願(特許申請)の基礎マニュアル!費用~注意点総まとめ
本記事は特許を初めて出願する人向けに、特許についての基礎的な情報を一つにまとめました!
この記事を読めば、特許出願の気になるポイントは全ておさえることができます!
各項目とも細かな解説は別の記事に書いてありますが、まずはこの記事を読んで特許出願の要点をざっくり掴んでください。
また特許について詳しくは、弁理士が一から丁寧に教えてくれます。
知財タイムズはあなたの出願分野に強い特許事務所をご紹介しますので、お気軽に知財タイムズへお問い合わせください。
<この記事でわかること>
・特許出願の基礎知識
・特許出願までの一連の流れ
・特許出願にかかる費用
・海外での特許取得について
・その他はじめて特許を出す人が気になるポイント
目次
特許とは?
特許とは新たな発明に対して、独占権を与える制度のことです。
簡単に言うと、自分が発明した者を自分だけが使えるようにするということになります。
特許を持っていると、権利を侵害している者(真似している人)に
- ”うるな”(差止請求権)
- ”金払え”(損害賠償請求権)
と言える権利を持つことができます。
独占禁止法があるなかで、唯一例外として独占することを許された権利が特許なのです。
特許の要件は?
特許には要件(特許になるための条件)というものがあり、全ての発明が特許になるわけではありません。
特許は商売に使われる発明(産業利用)で、今までに無い発明(新規性)かつ簡単には思いつかない物である(進歩性)必要があります。
要件を細かく説明すると、以下の8つと言われています。
- 発明であること
- 産業上の利用可能性があること
- 公序良俗違反ではないこと
- 新規性があること
- 進歩性があること
- 先願であること
- 実施可能要件を満たすこと
- 出願人適格を満たすこと
要件だけ読むと少しわかりづらいので、詳しくは以下の記事で確認してください!
→特許になる発明は?特許の要件についてもわかりやすく解説します!
細かく覚える必要はありませんが、
”新しくて簡単に思いつかない、ビジネスで使える発明”
とざっくり把握しておきましょう。
なぜ特許は必要?
特許は必要ですか?と良く質問されますが、特許を取得すると
- ビジネスチャンスを広げる
- リスクを回避する
ことができます。
特許はビジネスを育てる・守る上で重要な権利です。
特許取得のメリット(特許を取る意味)
特許のメリットは大きく分けると以下の3つです。
- 独占できる
- 信用度が上がる
- 協業の幅が広がる
上記の3つのメリットによって、特許の保有者は様々な副次的なメリットを得ることができます。
- 競合を排除できる(独占)
- 価格競争に巻き込まれない(独占)
- 会社や商品のブランディングに繋がる(信用)
- 資金調達がしやすくなる(信用)
- 取引先の開拓につながる(信用)
- ライセンス契約を結ぶことができる(協業)
- クロスライセンスで他社の技術を使用できる(協業)
- オープンイノベーションの枠組みに技術提供者として参加できる(協業)
上記のように様々なメリットがありますが、事業の業種や状況によって特許を持つことで得られるメリットの大きさ(特許がもたらす事業への影響力)は変わってきます。
どのようなメリットがあるのかをある把握した上で、特許をどう活用するかを考えるのが重要です。
特許のメリットに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
→特許の必要性とメリット!特許は他人事ではありあません!
→特許のメリットと必要性は?弁理士が徹底解説します!
普段から特許の出願に関わっている、企業の知財部目線での解説も併せて確認しておきましょう。
→特許出願の必要性とメリットを企業知財部が解説!
複数の著者が様々な視点でメリットを解説していますが、最終的には上記の3つのメリットに基づいたものとなっています。
特許で回避できるリスク
特許取得することで以下のリスクを回避できます。
- 真似されるリスク
- 訴えられるリスク
新たな事業や商品を作り上げたのであれば、まずは特許の取得を検討し、競合に真似されることを防ぎましょう。
また特許は早いもの勝ちです!
模倣品に特許を取られて、オリジナルの自社製品が訴えられるなんてことも起こり得ます。
特許を取得しておけば、そんな心配もなくなります。
特許出願の流れ
特許申請から取得まではざっくり以下のような流れで行われます。
- (1)出願準備
- (2)出願
- (3)審査請求
- (4)審査
- (5)特許料の納付
より細かな特許出願の流れはこちらの記事で解説しています。
→特許出願流れを徹底解説!
(1)出願準備
申請前は弁理士と出願内容を固めたり、調査を行うことから始まります。
発明のブラッシュアップ
アイデアを思いたり、発明をしたら弁理士に相談するのが一般的です。
弁理士とともにどうすれば特許になるのか、強い特許が取れるのか、という所をブラッシュアップします。
発明発掘という言葉もありますが、どうすればアイデアを特許にできるかを考えるという点ではほぼ同じです。
調査
発明が固まったら、調査を行います。
特許を出願するには、先行技術調査という”既に類似の発明ないかどうか”の調査が必要です。
先行技術調査は特許事務所または特許の調査会社に依頼が可能です。
特許事務所の場合、調査費用は出願費用に含まれていることもあります。
自分で行うことも可能ではありますが、初めての特許出願ではしっかりとプロに依頼をすべきでしょう。
調査は先行技術調査以外にも、様々な種類の特許調査があります。
詳細はこちらの記事をご確認ください。
→特許調査とは?どこに依頼できるかも解説します!
(2)特許出願
調査を終え必要書類を用意したら、本人または代理人(弁理士)が特許庁へ出願を行います。出願方法は紙または電子出願どちらか選ぶことができます。
必要書類
特許出願時に必要な書類は以下の5つです。
- 特許願
- 特許請求の範囲
- 明細書
- 図面
- 要約書
作成は特許事務所にお願いするのが一般的ですが、作成方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
→特許出願の必要書類と書き方!弁理士が徹底解説します!
(3)出願審査請求
特許は特許庁へ出願しただけでは、審査が始まりません。
出願してから3年以内に出願審査請求を行う必要があります。
(4)審査
審査請求を行うと特許庁が審査を行います。
審査のポイントは上記で述べている、”特許の要件”です。
審査は平均9.3か月かかると特許庁のHPでは記されています。
早期審査制度というものがあり、利用すると平均3か月以下で審査が行われるので、
急いでいる場合は積極的に利用しましょう。
(4)特許料の納付
審査を経て特許査定となったら特許料(特許年金)を納付します。
初回は3年分を一括で納めなくてはなりません。
※3年分×(4,300円+請求項の数×300円)
拒絶されたら
拒絶理由通知が来た場合
特許料・特許年金についてはこちらをご覧ください。
→特許年金とは?具体的にかかる金額も徹底解説します!
特許庁が審査をした結果、特許にならないと判断した場合出願者へ”拒絶理由通知”を送ります。
この拒絶理由通知は「OOなので特許にならないです」と言ったように、なぜ特許にならないのかの理由が書かれています。
この時点では意見書や補正書を提出し特許にならない理由を解消することで、特許にすることができます。
また拒絶理由通知には
- 最初の拒絶理由通知
- 最後の拒絶理由通知
の2種類があります。
拒絶査定とは?
最後の拒絶理由通知に対して、意見書、補正書を提出しても特許庁が特許にならないと判断したら、”拒絶査定”が下されます。
この場合、拒絶査定不服審判を行うことで覆る可能性があります。
拒絶された時の対処法
仮に「自分で出願をして拒絶されてしまった」場合、途中から出願の代行を引き受けてくれる事務所もあります。
拒絶のされている状態を覆したい場合、弁理士に依頼するのが間違いないでしょう。
拒絶理由通知が来た段階なのか、拒絶査定になってしまったのかによっても、対応可否は事務所によって異なります。
また弁理士によっても、得意不得意があるので、しっかりと拒絶を覆した経験のある弁理士に依頼するべきです。
知財タイムズなら、途中から代行を引き受けてくれる腕利きの弁理士を紹介することも可能ですので、問い合わせの際は「拒絶後の中途受任希望」とご記入ください。
拒絶についてや、拒絶された時の対処法はこちらの記事で詳しく解説しています。
→どうすればいい?特許の拒絶理由通知と拒絶査定の対処法
特許の出願は個人で(自分で)できる?
結論から言うと、自分での特許出願はお勧めしません。
理由は大きく分けると以下の3つです。
- 時間と手間がかかる
- 取得が難しい
- 特許が取れても事業が守れない
順番に解説していきます。
時間と手間がかかる
特許の出願はシンプルに時間と手間がかかる作業です。
最も作成のハードルが高いのが特許の明細書ですが、発明が特許の要件を満たすということを証明しなくてはならないので、一朝一夕では書き方を取得することはできません。
特許の取得準備に時間を取られて本業の妨げになっては元も子もないので、特許の取得はプロに任せるのが一番でしょう。
取得が難しい
書類作成に慣れていて、インターネットで調べれば自分で特許の出願書類が作れそうという人もいるかもしれません。
しかし書類が書けるというのと特許が取れるというのが別物です。
厳正な特許庁の審査をパスしなくてはならないということを考えると、プロである弁理士に任せるのが賢明です。
特許が取れても事業が守れない
特許を取ったのに事業が守れないってどういう事?と思う人もいるかも知れません。
特許には請求の範囲というものがあります。
この請求の範囲とは、どこまでがあなたの発明が特許として独占する事が許されるかという事を意味します。
この範囲を狭く取ってしまうと、簡単に他者に特許を回避されて模倣品を作られてしまうのです。
かといって範囲は広く請求しすぎると審査が通りません。
例えば、”机から転がり落ちない三角形のペン”を開発したとします。
この発明をそのまま”三角形のペン”として特許出願してしまっては、他者はペンを四角形にしただけで簡単に同じような商品を作る事ができてしまいます。
しかし”落ちないペン”では定義が広すぎたり、具体的にどうやって落ちないペンを作っているかが明確では無いため、再現性がありません。
これでは特許として審査は通りません。
- ”発明の本質はどこにあるのか”
- ”どこを特許として抑えれば競合他社に回避されないか”
をしっかりと抑えて適正な範囲を請求しなくては、特許で事業は守れません。
特許の適正な範囲は、知財のプロである弁理士と決めるのが一番です
申請の代行を依頼する場合
特許の出願・申請の代行を依頼する場合、弁理士選びが非常に重要です。
なぜかというと、範囲が適正な強い特許を取れるかどうかは弁理士次第だからです。
弁理士を探す前に、しっかりと弁理士選びのポイントを抑えておきましょう。
弁理士の選び方
弁理士選びのポイントは大きく分けて以下の3つです。
- 特許出願に慣れているかどうか
- 自分の発明の分野が得意かどうか
- 知財戦略やビジネスの知識は豊富かどうか
特許の出願に慣れているかどうか
弁理士が申請代行する権利は特許・商標・意匠・実用新案です。
弁理士の中には商標を得意とし、メイン業務は商標出願という方もいらっしゃいます。
特許の出願を考えている場合、しっかりと特許出願に慣れている弁理士に依頼をしましょう。
自分の発明の分野が得意かどうか
弁理士には得意分野があります。
最新のAI分野が得意な弁理士もいれば、医薬・バイオに強い弁理士などタイプは様々です。
自分の発明の分野にあった弁理士に頼めば、業界知識も豊富なため打ち合わせもスムーズです。
しっかりと強い特許を取るためには、自分の発明分野に強い弁理士を探しましょう。
知財戦略やビジネスの知識は豊富かどうか
”どうやって特許を活かし事業を成長させるか”ということを考えるには、ビジネスの知識は必須です。
ビジネスの知識が豊富な弁理士は、知財戦略の部分でもしっかりと適切なアドバイスをしてくれます。
せっかく取得した特許も活かさなくては意味がありません。
取得後のアドバイスもできるような、弁理士を探しましょう。
弁理士(特許事務所)の選び方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
→必見!特許事務所の選び方!
特許申請にかかる費用
特許の出願・申請にかかる費用は大きく分けて
- 特許庁に支払う費用
- 弁理士に支払う費用
の2種類です。
具体的には、特許出願にかかる費用は約60万円が相場と言われています。
特許庁へ支払う費用 | 特許事務所へ支払う費用(平均) | |
出願時 | 14,000円 | 300,237円 |
審査請求時 | 138,000円+(請求項の数×4,000円) | – |
特許登録時 | 12,900円+(請求項の数×300円) | 118,445円 |
小計 | 164,900円~ | 418,682円 |
合計 | 581,582円 |
特許庁に支払う費用
特許庁に支払う費用以下の3種類です。
- 出願時印紙代:14,000円
- 審査請求費用:138,000円+(請求項の数×4,000円)
- 登録時特許料(3年分):12,900円+(請求項の数×300円)
審査請求を行わない場合は、出願時印紙代の14,000円のみがかかります。
また特許を3年目以降も維持する場合、特許料(特許年金)がかかります。
特許年金についてはこちらの記事をご参照ください。
→特許年金とは?具体的にかかる金額も徹底解説します!
弁理士に支払う費用
弁理士に支払う費用は
- 出願手数料
- 成功報酬
- 中間処理費用 (※発生)
特許出願する際の注意点
特許を出願するデメリット
特許は非常に重要な権利ですが、
- 費用がかかる(取得費用・維持費用)
- 発明の内容が公開されてしまう
など、取得するデメリットも少なからず存在します。
自社の状況や商材、競合の動向などに応じて特許を出願すべきか検討しましょう。
特許の公開とは
特許出願が悪影響になりかねない理由は、特許には公開制度というものがあるからです。
特許は取得できるできないに関わらず、出願すると必ず公開されます。
公開されると、うまく取得の範囲をかいくぐって、類似の発明をしてくる競合が現れるかも知れません。
公開される情報は明細書の内容なので、隠すべき技術はしっかりと隠して明細書を作ることが重要です。
公開制度に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→特許の公開とは?登録とはどう違う?
特許は国内でのみ有効!
他にも注意すべき点は、国内で出願した特許は、国内のみ有効ということです。
日本国内だけで特許を取得し、外国の企業に真似されてしまったなどということがあるかもしれません。
インターネットで情報発信行なっている企業は特に、外国への特許出願も検討しておきましょう。
海外でも特許を取得する場合
海外で特許を取得する方法は、大きく分けると
- パリルート
- PCT出願
の2種類の出願方法があります。
パリルートとは
パリルートとは簡単に説明すると、取得したい国の特許庁へ直接出願するイメージです。
日本での出願日を確保しつつ、別の国に特許を出願できる”パリ条約”の枠組み(優先権制度)を利用するためパリルートと呼ばれています。
PCT出願とは
PCT出願とは、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty:PCT)の枠組みに参加している国に一括して出願をできる方法です。
ですがPCT出願は、あくまで各国への出願を束として行うに過ぎず、特許権を全加盟国で発効させるものではありません。
ややこしいですが、特許の取得を希望する加盟国に対して、国内移行手続を行う必要があります。
詳細はこちらの記事で詳しく解説しています。
→特許の外国出願を徹底解説!PCT出願とパリルートとは?
またこちらの記事では、主要国への特許出願方法や費用について解説をしています。
→国際特許とは?主要国の特許制度について弁理士が解説します。
まとめ
今回は特許についての基礎知識を解説しました。
特許出願を検討する際は、「特許とはどんな権利なのか」「なぜ取得する必要があるのか」など特許そのものについて把握した上で「具体的な出願の方法」や、「かかる費用」など気になるポイントを抑えておきましょう。
ある程度特許について把握した後は、自分一人で考えず、弁理士に相談をすることが非常に重要です。
知財のプロである弁理士は、あなたの発明に対して最も効果的な提案をしてくれます。
冒頭でも述べましたが、特許の基本的な内容を把握して弁理士に相談することが、”良い特許”を取るための第一歩です。
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