商標登録とは?メリット・やり方・費用を弁理士が分かりやすく解説!

世の中の商品やサービスには、様々な商標が使われており、この商標が、商品を購入したり、サービスを受ける時の目印となっています。
例えば、「PRIUS」はトヨタ自動車のハイブリッド車として、「サッポロ一番」は、サンヨー食品の即席中華そばめんとしてよく知られています。
しかし、もし、これらの商標を他社が勝手に使うと、消費者は本来とは異なる商品・サービスを手にすることになり、商標の使用により蓄積された信用(商標に化体した信用)を毀損することになります。
今回は、そんな商標に化体した信用を保護するための手続である商標登録について、解説します。
商標登録とは
商標登録とは、商品やサービスに使用する商標(ネーミングやロゴなど)を特許庁に登録することです。登録には、登録を受ける商標と、登録をする商品・サービス(指定商品・役務)を定める必要があります。
また商標登録に際しては、文字商標、図形商標の他、色彩の商標や音の商標なども登録を受けることができます。
登録商標として保護できる期間
登録商標の保護期間は、登録から10年です。ただし保護期間は、更新することでさらに10年間延長することができます。この延長手続は何回でも行えるため、延長手続をする限り、半永久的に登録商標として保護できます。
先ほどの例ですと、サンヨー食品の登録商標「サッポロ一番」(登録番号:第2627503号、第2634721号)は、平成6年(1994年)に登録されていますが、更新を2回しており、2025年6月の時点でも権利は有効になっています。
商標登録するメリット
商標登録をするメリットとしては、登録した商標を、指定商品・役務において、独占的に使用できる点があります。
先ほどの例ですと、サンヨー食品は、「サッポロ一番」という商標を、即席中華そばめんにおいて独占的に使用することができます。
そして登録商標を他社が勝手に使用することはできないため、他社の勝手な使用により、商標に化体した信用を他社に毀損される(簡単に言えばブランドの毀損)ことを防ぐことができます。
また仮に登録商標を勝手に使用された場合、商標権者は、差止請求や損害賠償請求を勝手に使用した相手へ請求することができます。
もし商標登録をしないと、どうなっちゃう?
その一方で、商標登録をしないまま、商標を使用した場合には、次のリスクが生じます。
①自社の商品・役務で使用している商標を、他社が同様の商品・役務に使用することを防ぐことが困難
商標登録をしていない場合、商標権に基づく差止請求や損害賠償請求をすることはできません。
このような場合において、他社の商標の使用をする手法としては、不正競争防止法に基づく差止請求や損害賠償請求がありますが、自社の商標が有名であることが条件の一つとなっており、差止請求や損害賠償請求が認められるためのハードルは、商標権よりも高くなっています。
②他社が商標登録をすることで、自社の使用している商標が使えなくなる
自社の製品に使用している商標と同じ商標が他社に登録された場合、自社の商標の使用は、他社の有する商標権を侵害することになります。
つまり、既に使用していた商標が使えなくなるという状況になります。
このとき、他社の商標登録出願よりも先に、自社が商標を使用していたとしても、商標権の効力は及びます(自社の商標が使えなくなります)。
ただし自社の使用している商標が周知性を有する商標である場合には、先使用権を主張することにより、自社の使用が認められることもあります。
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商標として登録できるもの・登録できないもの
商標として登録できないものについては、商標法で規定されています。登録できない主なものとしては、次のものが挙げられます。
- その商品・役務の普通名称や、商品・役務の品質などを表示する商標
- 他人の氏名(周知性を有する氏名に限る)・名称等
- 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標
- 出願した商標が先願先登録の商標と同一又は類似であり、かつ、出願した商品・役務が登録された指定商品・役務と同一又は類似する
また、拒絶理由に挙げられていないものは商標として登録することができます。
ロゴや会社名を守りたい!商標登録のやり方
商標登録を受けるためには、
- 出願書類に指定商品・役務と商標を記載し
- 出願料を納付したうえで出願し
- 審査官による審査を受け合格する
必要があります。
審査官による審査で拒絶理由が見つかった場合には、拒絶理由が通知されます。このときは、出願書類を補正するか拒絶理由に反論するなどの対応が必要となります。
そして、拒絶理由が見つからなかった場合には、登録査定がなされ、登録料を納付することで、商標登録を受けることができます。
商標出願から登録までにかかる期間
商標登録から登録までにかかる時間は約6~10か月です。ただし、拒絶理由が通知された場合には、さらに2~3か月ほど時間が延びます。
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商標登録にかかる費用
商標登録にかかる費用は、以下の通りです。人によっては別途、弁理士費用も発生します。
- 出願時:3,400円+(区分数×8,600円)
- 登録料(10年):区分数×32,900円
- 更新料(10年):区分数×43,600円
区分数 | 出願料+登録料(10年) | 弁理士費用※目安 |
---|---|---|
1区分のとき | 44,900円 | 80,000~120,000円 |
2区分のとき | 86,400円 | 80,000~150,000円 |
例えば、区分を「第30類」(植物性の加工食品)と「第43類」(飲食物の提供)の2つにして出願し、商標登録を受けた場合、出願料は20,600円、登録料は65,800円となります。
また、登録料や更新料については、5年毎の分割納付をすることもできます。このときの登録料は、区分数×17,200円であり、更新料は、区分数×22,800円です。
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商標登録で大切な「区分」と「指定役務・指定商品」の話
商標登録における「区分」と「指定役務・指定商品」は、商標権の及ぶ商品・役務の範囲を決める役割を有しています。そのため、「区分」と「指定役務・指定商品」は、特許庁の発行している「類似商品・役務審査基準」で詳細に定められています。
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区分とは
区分とは、特許庁が定めた商品や役務のカテゴリ―です。区分は第1~第45類まで定められており、第1~第34類が商品、第35~第45類が役務です。
例えば第1類は肥料のような化学品についての区分、第43類はレストランやホテルなど飲食物の提供、宿泊施設の提供についての区分となっています。
指定役務とは
指定役務とは、商標権者が独占的に商標を使用することのできるサービス(役務)です。指定役務や指定商品は1つの区分の中に複数あるため、場合によっては、1つの区分で多数の指定商品・指定役務をカバーすることも可能です。
まとめ
商標登録は、商品やサービスに使用することで商標に化体した業務上の信用を保護するための手続であり、使用している商標を安定的に使い続けるための有効なツールです。
その一方で、指定商品や指定役務を適切に選択できなかった場合には、商標権で商品やサービスを有効に保護することができない、という可能性もあります。
そのため、商標登録をしたいけれども、どのような手続をすればよいか不安である場合には、弁理士に依頼をすることをおすすめします。

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特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。
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