商標権侵害は、販売前でも適用される!?「ボンボンドロップシール」販売に関する事例を通して解説します。

今年に入って、「ボンボンドロップシール」の模倣品を販売目的で所持したとして、所持していた者を、商標法違反の疑いで現行犯逮捕したとのニュースがありました。
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商標権侵害に関する事件は、ニュースでも度々報道されますが、今回の事件は、販売する前の時点で逮捕された、という点に特徴があります。
そこで、今回は、商品を販売する前であっても、商標権侵害となる行為について、ボンボンドロップシールの事例を通して解説します。また、商品が販売される前の輸入の時点で、輸入を差し止める行為についても解説します。
ボンボンドロップシールとは
ボンボンドロップシールとは、ぷっくりとした立体感と透明感を持つシールで、ファンシー文具メーカ-の株式会社クーリアが開発したシールです。
ボンボンドロップ – クーリア・オンラインストア | クーリア公式通販サイト
ボンボンドロップシールは2024年3月に販売開始され、発売から約1年半で累計1500万枚出荷されています。
取得している商標権
ボンボンドロップシールに関連する商標として、株式会社クーリアは、次の商標権を取得しています。
【商標登録第6957426号】

登録日:令和7(2025)年 8月 14日
指定商品:第14類 キーホルダー等
第16類 装飾シ-ル
また、株式会社クーリアは、BONBON DROPについて、国際出願も行っています。
登録番号:1913645

分類:14,16
国際出願については、2026年4月時点で、登録についての審査待ちとなっています。
商標権侵害による事件
2026年に入ってから、ボンボンドロップシールの商標権侵害による事件がいくつか発生しています。
偽「ボンボンドロップシール」所持疑い、男2人逮捕 購入した女児の母親が気づき – 産経ニュース
これらの事件では、いずれも、「ボンボンドロップシール」の模倣品を販売目的で所持したことが、商標権侵害とみなされています。
みなし侵害とは
商標権のみなし侵害とは、商標権を侵害するおそれの高い予備的行為を、商標権の侵害とみなす規定です(商標法37条2号~8号)。
商標法37条2号から8号は、次のように規定されています。
37条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
2 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
3 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
4 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
5 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
6 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
7 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
8 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為
💡ポイント
- 2号のポイントは、商標を付した商品を譲渡(販売)等をする目的で所持する行為、すなわち、販売前の行為が該当する点です。
- 3号、4号のポイントは、商標を付した役務供用物を、役務提供のために所持する点です。そして、3号、4号に該当する例としては、登録商標を付したお椀を、料理を提供するために所持する行為が挙げられます。
- 5号から7号のポイントは、商標の使用をさせるために、商標を表示する物を所持したり、製造・輸入したりする行為が該当する点です。5号から7号に該当する例としては、登録商標のシールを所持したり、製造・輸入したりする行為が挙げられます。
- 8号のポイントは、表示する物を製造するための専用品を製造等する行為が該当する点です。例としては、上述した登録商標のシールを製造するための専用器具を製造する行為が挙げられます。
本件では、以下の登録商標

と同一、又は類似する商標を、指定商品である装飾シールに付し、譲渡(販売)のために所持していたため、逮捕されています。
民事的措置及び刑事的措置
商標権のみなし侵害をする行為は、商標権の侵害行為と同様、民事的措置、刑事的措置の対象となります。
民事的措置では、差止請求(商標法第36条)や損害賠償請求(民法第709条)等を取ることが可能です。
また、刑事的措置では、侵害の罪により、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金となっており、両方が適用される場合もあります(商標法第78条の2)。
輸入による被害
ボンボンドロップシールの模倣品については、日本国内での製造に限らず、外国から日本に輸入されることも考えられます。商標法では、登録商標を付した商品を輸入する行為も、商標の使用に該当するため(商標法第2条3項2号)、輸入する行為も商標権の侵害となります。
第2条3項 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
2 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
税関による差し止め
このような模倣品の輸入については、商標権に基づいて、税関で差し止めることが可能です。税関で差し止めることで、輸入された模倣品の市場流通を防ぐことができます。
ボンボンドロップシールについては、上述の商標権(商標登録第6957426号)に基づいて、2026年1月に、税関での輸入差止申立が認められています。そのため、ボンボンドロップシールの商標権を侵害する商品は、輸入されても市場に流通することなく、税関で差し止められるようになっています。
税関への輸入差止申立は、差止申立書に必要事項を記載し、所定の資料を添付して、税関に提出することで可能となります(関税法第69条の13)。この輸入差止申立は、商標権者が自ら行うこともできますが、特許事務所に依頼することも可能です。
まとめ
商標法では、販売目的で所持をする行為についても、差止請求が認められているため、販売前の段階で差止請求をすることが可能です。また、商標権を有することで、税関による差止請求も可能です。そのため、商標権を侵害していると思われる模倣品を発見した場合、できれば販売前の段階で模倣品の差止を行い、模倣品の市場流通を防ぐことが重要です。
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