AIは著作者として認められないー米国の最高裁判例について解説します

2026年、AIによって生成された作品と著作権の問題について、アメリカ最高裁判所が、審理を行わないとの決定をしました。この決定により、アメリカでは、AIは著作者として認められない、という結論となりました。今回は、この訴訟の解説と、AIによって生成された作品に対する著作権の運用(2026年3月時点)について、解説します。
事案の概要
今回の事案は、AIシステム「Creativity Machine」(通称DABUS)によって創作された作品が、DABUSを著作者として著作権登録をすることができるか、という点について争われた事案です。
DABUSはアメリカの科学者であるスティーブン・セイラー氏によって開発されたAIシステムです。
DABUSによって創作された作品
DABUSによって創作された作品は、A Recent Entrance to Paradise(最近の楽園への入口)」というタイトルの画像です。
(▲コロンビア特別区地方裁判所の判決文より引用)
この作品の著作物性については、美術的な観点からは、特に問題なく認められるものであると考えられます。そのため、仮に、この作品を人間が創作をしたのであれば、著作物として登録される作品であると思われます。
著作権局への申請
2019年5月、セイラー氏は、著作者を「Creativity Machine」(DABUS)、著作権者をスティーブン・セイラーとして、著作権局に著作権登録の申請をしました。
この申請書類には、作品が2次元アートであり、機械によって自律的に生成されたことが記載されていました。また、セイラー氏は、この申請手続において、この作品には人間の著作者が存在しないことを認めました。
著作権局は、人間が作品を作成しておらず、著作権の成立要件を満たしていないため、著作権は発生していない、として、この申請を拒絶しました。
裁判所の判断
セイラー氏は、著作権局への申請拒絶を取り消すため、コロンビア特別区地方裁判所に訴訟を提起しました。
地方裁判所の判断
コロンビア特別区地方裁判所は、2023年8月に、著作権局を支持する判決をしました。
gov.uscourts.dcd.243956.24.0_2.pdf
この判決では、著作者が人間であることについては、著作権法で規定されていないものの、以下の事項を述べたうえで、著作者が人間であることを著作物の成立要件としました。
- 著作権法には、著作権保護の対象となる作品には、知的、創造的、または芸術的な労働を行う能力を有する創作者が必要である、との規定がある。
- 著作権は非人間主体を対象とするようには設計されていない。
- 従前の著作権法には、人間が著作者となることが規定されていた。現在の著作権法では規定されていないものの、この点における法解釈に変更はない。
控訴裁判所の判断
控訴裁判所も、2025年3月に、著作権局、連邦地裁を支持する判決をしました。
控訴裁判所は、以下の理由に基づき、著作者が人間であることを著作物の成立要件としました。
- 著作権は著作者に最初に帰属する(著作権法201条)。しかし、著作権は財産権であるため、財産を所有できない存在は著作者となることができない。
- 著作権の存続期間は、著作者の死後70年である(著作権法302条)。しかし、機械には生命がない。
- 著作権の譲渡には、署名が必要である(著作権法204条)。しかし、機械は署名を持たず、法律上の署名能力も持たない。
- 著作権は相続することができる(著作権法201条)。しかし、機械には相続人が存在しない。
- 公開された著作物が著作権として保護されるためには、国籍などが要求される(著作権法104条)。しかし、機械には国籍がない。
米国連邦最高裁判所の判断
最高裁は、2026年3月に、訴訟の上告を受理しないとの決定をしました。この決定により、①DABUSが著作権者になることは認められない、②DABUSによって創作された作品は著作物に該当しない、ことが確定しました。
AIで創作された作品は保護される?
しかしながら、今回の裁判で争われたポイントは著作者がAIであることであり、AIで生成された作品に著作権が認められるか否か、については何ら判断されていません。AIで創作された作品に対する著作権の保護については、2025年1月に発行されたガイドラインに示されているので、その概要を紹介します。
Copyright and Artificial Intelligence, Part 2 Copyrightability Report
1.AIを用いた作品の著作物性について
①AIが単なる補助ツールの場合、作品は著作権で保護されます。
②完全にAIが生成した場合、作品は著作権で保護されません。
①と②の中間的な場合、人間の関与の内容と程度によって、著作権による保護の有無が変わります 。
また、人間の関与の内容と程度について考慮する事項としては、以下の事項が示されています。
2.アイデアと表現について
著作権法では具体的な表現のみが保護されます。アイデアは著作権法で保護されません。そのため、AIに対する指示が単なるアイデアの提示にすぎない場合、作品は著作権法で保護されません。また、AI生成物の場合、人間がその表現の創作にどの程度関与したか、という点が、著作権法の保護対象となるか否かにおいて重要となります。
3.プロンプトについて
原則として、プロンプトのみ(AIに指示するのみ)では、入力者は著作者に該当しません。しかし、 人間が描いたイラストや小説などをAIに入力し、作品を生成した場合、プロンプトの入力者が著作者となる可能性があります。
4.AIによる生成物の編集・修正・選択
例えば、次のような活動を人間が行った場合、人間が著作者となる可能性が高くなります。
- 複数のAI画像から選択して作品を構成する
- AIで生成された文章を編集して小説化する
- AIで生成された素材を組み合わせてデザインを創作する
日本ではどのように判断される?
日本におけるAI生成物に対する著作権法の取り扱いは、米国と概ね同様になると考えられます。
日本の著作権法でも、著作者が人間であることについては規定されていません。しかし、日本の著作権も、著作者が人(若しくは法人)であることを前提とした法律であると考えられています。また、アメリカの著作権同様に、日本でも、著作権は著作者に最初に帰属すること、著作権の存続期間は原則著作者の死後70年であることが規定されており、著作権の相続も認められています。そのため、日本でも米国の著作権と同様の取り扱いになると考えられます。
まとめ
AIの性能は急激に向上しており、著作者に関する著作権法の取り扱いについても、様々な課題が生じています。現段階では、AIを著作者とすることは認められておりません。また、AIを著作者とすることを認めるためには、大幅な法改正が必要となるため、AIが著作権者になることは難しいと思われます。
その一方で、AIの使い方次第では、AIを扱う人間が著作者になることもあります。しかし、AIを扱う人間を著作者として認めるための基準については、AIの性能や使い方によって変わるため、この基準については、適宜アップデートされると思われます。
- DABUS
- 地方裁判所判断:gov.uscourts.dcd.243956.24.0_2.pdf
- 控訴裁判所判断:23-5233.pdf
- 最高裁判断:Order List (03/02/2026)
- AI著作物ガイドライン:Copyright and Artificial Intelligence, Part 2 Copyrightability Report
特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。
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