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知財ニュース 2026.2-3

生成AIを巡る知財制度の具体化フェーズ突入

2026年2月から3月にかけての知的財産分野では、AI関連技術と著作権・特許の交錯、および国際的な制度調和の進展が顕著なトレンドとなっています。

特許分野

生成AI・半導体・グリーン技術に関する出願および審査対応の強化が各国で進展しました。特にAI発明の「発明者適格性」や「進歩性判断」に関する審査運用の明確化が議論されており、日本・米国・欧州で基準のすり合わせが進む兆しが見られます。企業側でもAIを活用した研究開発の成果をどのように権利化するかが重要課題となってくるでしょう。

2025年末から2026年にかけて、米国特許商標庁(USPTO)は「AIはあくまでツールであり、発明者は自然人(人間)に限る」という伝統的な「思想(Conception)の形成」基準を改めて厳格化しました。2024年時点での緩和的な議論から一歩引き、人間による具体的な寄与の証明をより重く見る運用に戻った形です。

著作権分野

生成AIによる学習データ利用や生成物の権利帰属に関する議論が引き続き活発です。特に欧米を中心に、クリエイター団体とテック企業の対立構造が明確化し、訴訟や規制検討が進んでいます。

日本でも文化庁を中心に、実務上のガイドラインの整備が進められてきましたが、2026年2月26日には、個人クリエイターが自身の作品のAI利用可否などを登録できる「個人クリエイター等権利情報登録システム」の運用を開始しました。これにより「ガイドライン整備の必要性」という段階から、具体的な「権利意思の可視化」へと実務が前進した点は重要です。

なお欧州では、EU AI Actのスケジュールが変更されました。 2026年3月13日、EU理事会は高リスクAIシステムに関する規制の適用開始時期を2027年〜2028年まで延期することで合意しました。現実的な企業の準備期間の猶予を設けた形になります。

知財訴訟

AI・ソフトウェア・プラットフォーム関連の紛争が増加傾向にあり、特に特許権侵害の立証や損害額算定においてデータ活用が重要な争点となっています。また、グローバル企業間の訴訟は複数国で同時並行的に進むケースが増え、戦略的な訴訟運営がより重要になっています。

企業のIP戦略としては、「防御的特許」から「収益化・アライアンス重視」へのシフトが加速しています。特にスタートアップと大企業の連携、クロスライセンス、標準必須特許(SEP)を巡る交渉が活発化している点が注目されます。

背景には、SEP規制の具体化があります。 欧州を中心に進んでいたSEP(標準必須特許)の新規制案が、2026年に入り具体的な運用ガイドラインとして固まりつつあります。特にIoT機器*への普及を背景に、透明性の向上とライセンス料の妥当性を巡る司法判断が蓄積されています。

国際動向

WIPOや各国特許庁がAI・デジタル技術への対応を強化しており、制度の国際調和が中長期的なテーマとなっています。また、地政学的リスクの高まりを背景に、技術流出防止や経済安全保障と知財の関係も重要性を増しています。

日本では、 2026年より経済安全保障推進法に基づく「特許出願非公開制度」が本格運用フェーズに入っています。機微技術の海外流出防止と、企業への補償金算定の実務(特にライセンス料の逸失利益をどう評価するか)が現場の喫緊の課題となっています。

 

総じて、「AI時代の知財ルール再構築」と「グローバル競争下での戦略的IP活用」が大きな潮流となっており、今後の制度改正や判例形成に直結する重要な局面といえるでしょう。

 

*IoT機器の普及とライセンス料

IoT(モノのインターネット)とは、スマートフォンだけでなく、自動車、冷蔵庫、スマートメーターなど、身の回りのあらゆる「モノ」がインターネットに繋がる仕組みを指します。

これまで、通信技術に関する特許(SEP:標準必須特許)のやり取りは、主にIT・通信業界(スマホメーカーなど)の間だけで行われてきました。しかし、あらゆる製品がネット接続機能を持ち始めたことで、通信とは無縁だった自動車メーカーや家電メーカーも、通信技術の特許料を支払わなければならない立場になりました。

このように、知財交渉のプレイヤーが「通信のプロ」以外にも一気に広がったことで、「いくらのライセンス料が妥当か?」というルール作りが、産業界全体で急務となっています。

[参考]

 

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