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特許のメリットと必要性は?弁理士が徹底解説します!

はじめに

「特許」という言葉は聞いたことがあるけれども、どうやったら特許が取れるのかや、特許を取得することによるメリットついてはよくわからないという方が多いのではないでしょうか。

今回は、特許の専門家である弁理士が、特許ってなに?という基本的な部分から特許の重要性まで、わかりやすく解説いたします。

執筆:幸谷泰造 弁理士/弁護士

特許の意義と目的

まず、「特許」とは何でしょうかという所を解説します。
特許とは、まだ世の中に知られていない技術的なアイデア(発明)について一番最初に特許庁に出願した人が、その技術を独占的に使うことができる権利になります。

電機メーカーや医薬品メーカーなど、研究開発を行っている企業は、研究開発の成果として生まれた発明を特許として出願します。
その発明が特許になれば、その企業が独占的に使うことができるのです。

特許を取った人(以下「特許権者」といいます。)に独占権を与えることによって、他人に発明内容を真似されないようにすることが目的の一つになります。

また、特許を出願すると、その発明の内容が広く社会に公開されることになります。この発明内容は特許庁のデータベースで誰でも見ることができます。
これによって、その内容を見た他の企業が新たな発明のヒントにしたりして、さらに良い発明が生まれます。

このように特許の内容を広く公開することによって、新たな発明をどんどん生み出すサイクルを作ることも目的の一つです。

特許権者に独占権を与えることによって発明の保護を図ることと、特許の内容を広く公開することで発明の利用を図ることにより産業の発達に寄与することが、特許の主な目的となります。

特許の効果やメリット

では、特許を取るとどのような効果やメリットがあるのでしょうか?

独占権が与えられる

上記で説明したとおり、特許権者は、一定期間その発明を独占的に使うことができます。

その発明を無断で使っている人に対し、やめさせることもできますし、発明を使って得た利益を損害賠償として請求することもできます。
発明を無断で使っている人がその発明を使って製品を製造販売していた場合、製品がストップしてしまいますし、特許権者に対して自分が得た利益を支払わなければなりません。

過去の特許裁判では数億円の支払を命じられた例もあります。
このように特許は非常に強力な権利なのです。

例えば医薬品メーカーは新薬の開発に莫大な研究開発費を投じています。
その新薬を他社に真似されてしまうと、莫大な研究開発費を回収できず他社に利益を横取りされてしまうことになります。
よって、他社が発明内容を真似できないような独占権を与えてくれる特許は、大きなメリットとなるのです。

ライセンスをしてお金を得ることができる

また、特許権者は、自分たちで発明を独占するだけでなく、他人にその特許を使わせることもできます。
通常は使わせてあげる代わりに、特許を使っている人からお金をもらいます。
これをライセンスといい、ライセンスをして得たお金をライセンス料といいます。

ライセンス料は売り上げの数%であることが多いですが、売上が億単位の場合、ライセンス料が何千万円にもなったりすることも多く、特許権者に莫大な利益をもたらすこともあります。

例えば通信規格「5G」については、多くの企業が特許を取得しており、5Gを使っている企業(携帯電話会社や自動車メーカー)から特許のライセンス料を得ています。
特許権者にとってはライセンス料によって研究開発費を回収することができるのでメリットとなります。
一方、5Gを使っている企業はライセンス料を支払うことによって自ら研究開発しなくても5G技術を使うことができるという点でメリットがあります。

ライセンスに関する詳細はこちらの記事で解説しています。
特許のライセンス料はいくらなの?特許使用料の相場を解説!

小括

このように、特許を取ることによって、非常に強力な効果が発生し、特許を使っている他人の行為をやめさせたり、他人に特許を使わせたりして、ビジネスを有利に進めることができるのです。

特許のデメリット

以上のとおり特許を取ると非常に強力なメリットが得られますが、一方でデメリットもあります。

費用がかかる

まず、費用の問題があります。
特許を出願する場合、自分で発明の内容を説明した内容を書いて特許庁に出願することもできますが、説明する書類はかなり専門的であるため通常は特許事務所の弁理士に依頼します。
その際に弁理士に支払う報酬は1件あたり30~40万円程度が相場となります。
30~40万円支払えば特許が取得できるわけではなく、出願した後も特許庁とのやりとりのために弁理士に費用を払う必要があります。

また、特許が登録になった後も特許料を支払う必要があります。
特許1件を取得するために100万円単位のお金がかかることも少なくありません。

費用につきましては、中小ベンチャー企業の支援のための補助金を申請することによりある程度まかなうことができますので、補助金を活用するのも一つの手です。

費用相場に関する記事はこちら
特許出願の費用と相場を徹底解説!

補助金に関する記事はこちら
特許出願の際に使える助成金(補助金)

 

外国にも出願する必要がある

特許は国ごとに取る必要があるので、グローバルにビジネスを展開する場合、国ごとに特許を出さなければならないという問題があります。

例えば日本で特許を取得したとしても、米国で特許を取得していなければ、仮に米国で特許発明の内容を真似されたとしてもやめさせたりすることはできません。さらに、外国に出願する場合、費用が莫大になる可能性があります。

特許1件につき国ごとに100万円以上かかる場合が多いため、資金のない企業にとってかなりの負担になります。

発明の内容が公開されてしまう

特許を出願すると必ず公開されてしまうというデメリットがあります。
特許を取得しつつ、発明の内容を自分や社内だけの秘密にしておくということはできないことになっています。

特許を出願してしまうと発明の内容が公開されてしまうため、いわゆるノウハウなどの営業秘密については、特許を出願しないという選択をする企業もあります。

必ずしも特許が取れるわけではない

特許を出願して無事登録されればよいのですが、特許を出したからといって必ず特許が取れるというわけではありません。

特許を取るためにはさまざまな要件が必要であり、特許庁に審査をしてくださいという審査請求を行った後、審査官が特許の要件を満たしているかを審査したうえで、要件を満たしている場合にはじめて特許となります。

特許の要件は主に新規性と進歩性という要件があり、新規性とはその発明内容が世の中にない新しいものでなければならないという要件です。
進歩性とは、その発明内容がすでにある技術をもとに簡単に思いつかないものでなければならないという要件です。

仮に特許が取れなかった場合、特許が取れなかった発明については独占権が与えられません。
よって、その発明内容を第三者に真似されたとしても文句は言えません。
そうなると、単に自分たちの発明の内容を公開しただけになってしまい、第三者に真似されるリスクを増やしてしまうことにもなりかねません。

小括

特許には以上のようなデメリットもあるためこれらを考えたうえで特許を出願するか否かを判断することが必要となります。

特許の重要性

特許にはメリットもデメリットもありますが、デメリットを考慮したとしても、技術を売りにしている企業は、自社のコアとなる技術を中心に特許を取得することをおすすめいたします。
なぜなら、以下の点において特許は非常に重要な役割があるからです。

資金調達や上場の際のアピール

中小ベンチャー企業にとっては資金調達や株式上場が重要となってきます。

その際、自社技術の内容がいかに素晴らしいかを投資家や銀行員に説明する必要が生じますが、特許を取っていればそれだけで大きなアドバンテージとなります。

カウンター特許としての活用

事業を進めていると、特に同業他社から特許侵害の警告書が届く場合があります。その場合、自社も特許を取得していて、他社が自社の特許を侵害しているのであれば、カウンター特許として活用することもできます。
相手がパンチしてきた場合、こちらもパンチすることによって相打ちに持っていくようなイメージです。

特許をたくさん保有しているとなれば、他社もうかつに訴えてくることができなくなります。
このように特許は攻撃だけでなく、防御として使うこともできます。

まとめ

以上のように、特許を取得することによって他社の参入を防いだり、ライセンス料を得たりして事業を有利に進めることができます。

少なくとも自社のコアとなる技術については特許を取得しておかれるとよいでしょう。

特許の専門家である弁理士に相談すれば特許の取得方法や活用方法を教えてくれますので、特許を出そうか悩んでいらっしゃる方は一度弁理士にご相談されることをおすすめいたします。  

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