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特許出願(申請)の必要性とメリットを企業知財部が解説!

特許って何となく聞いたことはあるけど、詳しくは分からないという方は多いと思います。

企業にとってどのような意味があるか分からないと、投資判断もできません。

今回は特許出願の経験がない方にも分かりやすいように、企業知財部が特許の必要性とメリットを解説します。

<この記事で分かること>
・特許を取る目的
・特許のメリット、デメリット
・特許戦略の重要性
・特許出願すべき発明

 特許を取る目的とは?

企業が特許を取る目的とは何でしょうか?

特許権は技術的アイデアを保護するもので、権利の存続期間は20年です。
特許権者には特許技術を無断で使用したものに対して「差止請求権」(売るな・作るな)や「損害賠償請求権」(金払え)が認められています。

これらの権利で参入障壁を形成し、市場を独占することが企業の目的です。
つまり企業の知財活動としては、

  • 他社の特許権を侵害しない(訴訟リスクの低減)
  • 自社の開発技術を模倣させない(開発成果の利益保護)

をいかに達成するかが重要になってきます。 

その製品、販売して大丈夫ですか?

意外に「特許出願してあるから製品販売して大丈夫!」とおっしゃる方が多いのですが、それは正しくありません。

通常、1つの製品には複数の特許が使われています。数百件の特許が使われている場合もあります。

 例えば、タイヤはゴムの材料、溝の形状、ホイールの構造など複数の発明で成り立っており、それぞれ特許出願されています。
重要なのは、自社が他社の特許を侵害していないかということです。
特許調査をせずに安心していると製品販売後にトラブルとなってしまうことがあります。

特許訴訟で儲ける業者にはご注意!

パテントトロールという存在をご存じでしょうか?
自らは製造販売などの事業をせず、自社特許を侵害する企業に警告状を出して和解金を要求したり、特許侵害訴訟を提起したりする業者のことです。

そのようなトラブルを避けるためにも、少なくとも製品販売前に、望ましくは開発の初期段階で特許調査を専門家に依頼することをオススメします。

このような初期段階の特許調査をクリアランス調査とも呼びます。
クリアランス調査の詳細と依頼先についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
重要!クリアランス調査と依頼先!

開発技術はすぐに特許出願しましょう

他社からも特許が出ておらず、自社が独自に開発した技術は今すぐに特許出願しましょう。

特許は早いもの勝ちです。自社が労力をかけて開発した技術ですから、競合他社も同様の技術を開発している可能性が高いです。
他社から先に特許出願されてしまうと、その技術を自由に使用されても文句を言うことができません。

 最悪の場合、他社から差止請求や損害賠償請求を受けてしまいます。

 製品開発の初期に特許調査や特許出願を検討し、他社とのトラブルを回避しましょう。

特許のメリット

代表的な特許のメリットは以下の4つです。

  • シェアの拡大
  • 価格競争の回避
  • ライセンス収入の取得
  • 高い信用の獲得

これら4つのメリットを企業知財部の目線で解説します。

シェア拡大

他社を市場から追い出し、自社が独占的に特許技術を使用できるため、製品のシェア拡大することができます。

価格競争の回避

模倣品は開発費がかかっていませんので、低い値段設定が可能です。

しかし、特許があれば模倣品の流通を差し止めることができますので、価格競争に巻き込まれることもありません。

特許技術を自社製品の付加価値としてアピールできます。

 ライセンス収入の取得

自社が実施しない場合、他社にライセンスして実施させることで収入を得ることもできます。

また、自社が実施したい他社特許がある場合にはクロスライセンスを結び、他社の特許技術を自社製品に取り入れることもできます。

高い信用の獲得

特許は特許庁による審査で新規性や進歩性といった要件を満たすと認められた、国のお墨付きです。 

高い技術力の証明として、カタログやホームページで宣伝したり、特許権を担保に融資を受けたりできます。

特許のデメリット

特許のメリットをたくさん紹介しましたが、その代わりにデメリットもあります。

自社開発技術の公開

特許出願から1年半後にその内容が公開されます。
他社が公開内容を見て実施ができるように詳細な説明が求められます。

内容が不明確だと審査をパスしませんので、開発情報を少なからず他社に知られてしまいます。

出願から登録までの期間が長い

特許を出願して審査請求をすると特許庁による審査が始まります。
そのまま登録されることは少なく、過去に特許庁へ出願された特許と比較して今回出願した特許のどこが優れているかを審査官へ説明します。

 平均で特許出願から登録まで14か月程度かかりますので、出願後すぐに権利行使ができる訳ではありません。時間に余裕を持って特許出願をすることをオススメします。

 お金がかかる

特許取得にかかる費用は60万円です。
60万円には特許庁の審査費用や特許事務所の原稿作成料が含まれます。

特許庁へ提出する書類は、技術知識と法律知識を必要とするため自分では作成が難しく特許事務所の弁理士に依頼して作成してもらいます。

特許戦略の重要性

これまで説明した特許のメリット、デメリットを考慮し、他社よりも優位な立場でビジネスを進めるためには特許戦略が必要になります。

ここでは戦略的な特許の出願方法について、過去の経験から解説していきます。

自社の開発成果をもれなく出願しよう 

開発成果を洗い出して特許マップとして可視化しましょう。
特許の出し忘れがあると他社に特許を取られてしまい、他社にライセンス料を支払わないと製品を販売できなくなる可能性があります。

他社特許を分析して効果的に出願しよう

やみくもにアイデアを出願してもお金がかかるばかりで、ビジネスで競合他社よりも優位な立場を作ることはできません。

他社の技術動向や公開特許を分析して、他社の関心が高い技術に対して特許を取っていきます。すると、競合他社は特許を回避しながら製品開発をしなければならず、他社製品の完成を遅らせることができます。

審査請求しない特許の意義

特許出願時には有用だと思っていた技術も、数年後に検討してみると本命でなくなる場合があります。

そのような場合、審査請求せずに公開しておくことも一案です。技術を公開しておくことで同一の発明については他社に権利化させないようにできます。

特許出願すべき発明の具体例

従来製品の改良点

開発者は自分の製品に精通しているため、発明を過小評価しがちです。

例えば突起を追加した等のちょっとした形状変更であっても、新しい課題を解決したものや今までにない効果を生むものであれば特許として登録される可能性は十分にあります。 

自社と競合他社の両方の関心が高い技術

企業は常に競合他社との競争にさらされており、似た製品を同時に開発している場合も多いと思います。

自社と他社の両方の関心が高い技術で、他社に特許を取られてしまうと、開発コストが回収できなくなってしまうどころか、開発がやり直しになってしまうことになりかねません。

そのような事態を回避するためには、他社に取られる前に特許を取るという以外にありません。知財担当者が開発会議に出席するなど開発担当者と知財担当者の情報共有を密に行いましょう。

顧客へ見せようと思っている試作品

製品が出来上がると早く顧客に見せたいと考えるかもしれませんが、顧客に見せる前に特許出願を完了させておくことをオススメします。

例えば、顧客が「自分のアドバイスのおかげで発明ができた」と主張したとします。
ビジネス関係上否定することができず、自社で独自に開発した技術が共同発明として出願されてしまうという結果になるかもしれません。

共同出願人は特許発明を実施することができるため、特許のメリットが失われてしまいます。

 まとめ

今回は企業知財部の視点から特許の必要性とメリットを解説しました。

記事の中で述べたように、特許取得に関しては専門家である弁理士のサポートが必要不可欠です。

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