Menu

「地元密着型で、稼ぐ力アップのために知財面から支援を」INPIT、知財総合支援窓口

日本における知財のデータベース「J-PlatPat」を運営している独立行政法人工業所有権情報・研修館、通称INPIT(インピット)。

こちらのINPITには「知財総合支援窓口」という、知的財産で困ったとき相談に乗ってくれる駆け込み寺的存在があるとのことで、今回インタビューをさせていただきました。

INPITの知財総合支援窓口ってどんな場所?

――こんにちは、本日はよろしくお願いします!

岩谷知財活用支援センター長兼審議役(以下、岩谷):こんにちは、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT) 知財活用支援センター長兼審議役の岩谷と申します。本日はよろしくお願いします。

――早速ですが、INPITの知財総合支援窓口はどんな場所なのか、簡単に教えてください

岩谷:47都道府県それぞれに窓口を配置しておりまして、地元密着型で中小企業とベンチャー・スタートアップの知財を経営に生かすことで、中小企業などの稼ぐ力の向上に向けて知財の面から支援をいたしております。

――では具体的に、どんなことをしているのですか?

岩谷:知財総合支援窓口には大きく3つほど特徴があると考えています。

まずは地元密着型で、様々な専門家を活用しながらサポートをしている点です。

その際、知財の専門家というと弁理士を思い浮かべると思いますが、それだけではなく、弁護士や中小企業診断士、デザイナーなど、多岐に渡る専門家により、ビジネス課題を深堀した上で知的財産面から支援できる体制が揃っています。

次に私たちの支援は、様々な地元の中小企業等支援機関とも連携して行っています。

例えばよろず支援拠点、商工会議所、商工会、中小企業支援センター、自治体などと連携しております。これらの機関は、つまるところ地元での中小企業などの稼ぐ力の向上と地域活性化ということで、INPITと大きな目的が一致しております。

各機関と連携して、ビジネス面からの支援と知的財産面からの支援により、より事業成長につながるようなご支援を心掛けております。

ひとくちに連携と言ってもいろいろな方法がありますが、例えば各支援機関に来た相談のなかで、これはちょっと知財の観点からサポートした方がいいんではないか、といった案件をこちらに連絡していただく、という形が多いです。

逆に私たちの元に来た相談のなかで、販路拡大支援のような、より突っ込んだビジネス支援をしたほうがいい案件を、各支援機関に連携相談させていただいています。

最後に、「何度でも全て無料で支援します」という点も、知財総合支援窓口の大きな特徴かと思います。

――1年間で、何件くらいの相談が持ち込まれているのですか?

岩谷:2022年度ベースでの話になりますが、全国でだいたい12万3000回の相談をお受けいたしました。このうちの1割強、1万5000回くらいの相談については、各支援拠点などと連携をしながらご支援しました。

――相談内容としては、どんなものが多いのでしょう

岩谷:知的財産と聞くと多くの方は特許を思い浮かべるのではないでしょうか。

ですが実のところ、知財総合支援窓口で支援している内容はブランド・商標が半分強を占めています。特許はだいたい1/3くらいですね。なのでお客様も製造業の方が1/3程度、残りの2/3の方はサービス業や飲食業など色々な方がいらっしゃいます。

具体的な相談内容も、かなり多彩です。

例えば、結構いらっしゃるのは新規事業を展開したいという第二創業の方でしょうか。

あとは新商品・新サービスをローンチするに当たってのご相談ですね。「知財のことは多少知っています。商標を取りたいです」という方もいらっしゃれば、「知財のことはよくわかりませんが、ローンチするにあたって、知財面で注意することってありますか?」といったご相談もいただいております。

ほかには既に持っているブランドの活用方法を教えてください、といった知財活用の相談も多数いただいております。

INPITの窓口に相談に行こうかな…準備はある?

――INPITの窓口に相談に行くとき、なにか事前に準備したほうがいいことってありますか?

岩谷:特にはありません!

「私、知財のことを全然知らなくて、何を相談したらいいかも分かりません…」と相談していただければ、しっかりご対応していきます。

”独立行政法人の窓口”ということで敷居が高く見えるかもしれませんが、全くそんなことはないです!

「何が分からないかも分からない」状態からでもサポートしますので、ぜひお気軽に相談窓口へお越しください。

――「何が分からないかも検討がつかない」でもOKとおっしゃっていただけると、相談者側としてはとても相談に行きやすいですね…!

――では逆に、INPITの窓口に行っても解決が難しい、INPITの立場から見ると、来たら困っちゃう相談はありますか?

岩谷:基本的にはありませんが、公的機関ですから、出来ないことも当然あります。

例えば「私の代わりに特許出願をしてください」といった相談はお受けできません。というのも、特許出願を代行する行為は弁理士か弁護士しかできない、と法律で決まっているからです。

ですが「お受けできません」で終わりではなく、弁理士をお使いいただくメリットを説明するなど、きちんとフォローをいたします。

こんな風に、ワンストップ、とまで言うのはおこがましいかもしれませんが、知財総合支援窓口で受けられない相談であっても、より適切な相談先にうまくつないで行けますので、何でも相談していただけたらと思います!

初心者にありがちな失敗はある?

――知財初心者の相談者が多いと思いますが、共通している失敗・悩みなどはあるのでしょうか

岩谷:まずは「自社のいろんな強みが知財になり得る」点に気が付いていない方が多いことです。これは知財を知らない人だけでなく、わりと知財のことを知っている方でも陥りがちな失敗です。

知財というと「特許」のイメージが強いですが、会社の強みを棚卸しすると、特許よりも「営業秘密」として管理したり、屋号や商品名などを「商標権」を取ってブランド活用したりしたほうがいいケースも少なくありません。

この点については「知的財産」というよりも、「知的資産」と御説明すると腑に落ちる方も多いのではないでしょうか。

また権利を取ることにばかり注力して、それをビジネスでどう使うのか、活用するのかまで考えている方が少ないケースも散見されます。一般的に知財戦略と言われる部分が不十分になりがちです。

――では持ち込まれた相談に対して支援を行うとき、特に知財戦略的な面で力を入れていることがあれば、ぜひ知りたいです。

岩谷:例えば、特許を取りたいですというご相談を受けたとしましょう。

その場合、単に権利を取得するだけではなく知財を使ってどうビジネスをしていくのか、といった点も少し掘り下げて相談をすすめていきます。

このときには中小企業診断士も混じってビジネスプランを掘り、その後は弁理士とどんな権利を取ってどんな使い方をするかを相談していくことになります。

また知財の活用に関連した相談では、契約面の悩みもよくいただきます。

実際のビジネスとなると、パートナーとの契約や共同研究における契約など、知財契約をする場面は少なからずあります。しかし知財契約には注意するべきポイントがたくさんあるので、弁護士を投入してご支援をしております。

業界全体に通じる課題もある?

――相談業務を通じて、色々な課題を感じられていることかと思いますが、知財業界にはどんな課題があるとお考えですか?

岩谷:あくまで47都道府県の相談窓口を運営する人間の肌感覚、の話になりますが、大きく3つの課題を感じています。

まずは地域に知財のわかる専門家がなかなかおらず、東京に一極集中していることです。もちろん地方にも専門家はいらっしゃるのですが、さらに踏み込んで、知財と経営をセットでコンサルできるような専門人材は地方において不足しているなと思います。

次に、他機関との連携の際に生じがちな問題です。

例えば商工会議所などに来た相談で「知財」や「ブランド」というキーワードが出たらINPITにつないでいただけるのですが、逆にキーワードが出ないと、知財の課題が隠れているにも関わらず、連携がスムーズにいかないところがあります。

もちろんこれは、我々サイドも知財の相談をする中でアンテナを立てて、商工会議所やよろず相談所につなげるよう、ビジネス支援の目を養う必要はありますが、各連携機関からも知財の気づきを持って相談・連携できればなと思っているところです。

それからもう一点が、ベンチャー関連のお話です。中小企業とベンチャーでは企業の性格や特性が大きく違いますから、求められる知財戦略やスピード感も全く変わってきます。

それもあって、ベンチャー支援をできる人材が不足しているという課題も感じています。この課題はINPITだけでなく、知財業界全体でも問題視されることがありますね。

あ、あと、INPITの知名度が低いというのも大きな課題でしょうか。普段はブランド戦略のアドバイスなどをしているのに、INPIT側のブランド戦略がぜんぜんなってなかったと反省しております…。

――ありがとうございます。今いくつか挙げて頂きましたが、それぞれの問題に対するINPITの取り組みがあれば、ぜひお聞きしたいです。

岩谷:まずは地方で活躍いただける知財支援人材の育成ですね。

現在、INPITでは専門家チームによる伴走支援を行う「加速的支援」というプログラムがあるのですが、弁理士会・弁護士知財ネットと協力をしまして、そちらの専門家チームにOJTとしてご参加いただいております。まずは知財経営のコンサルテーションを現場で見ていただいてで、そういうことができる方が全国でどんどん増えていけばいいなと思っております。

また、中小企業・スタートアップの方にビジネスにおける知財活用の気づきをもっと持ってもらう、すそ野の拡大が大きな課題ですが、それには、各機関とのスムーズな連携が不可欠です。そこで、例えば商工会議所の経営指導員の方に向けて、知財の気づきを持ってもらえるような動画を何本かリリースしています。

この動画は、日本商工会議所と密に話しながら完全に「商工会議所視点」で作りました。我々が作るとどうしても知財に詳しい人間視点の動画になってしまいますので…。

ほかにも特許庁、日本弁理士会、日本商工会議所、そしてINPITの4者で「知財経営支援ネットワーク構築への共同宣言」という宣言を出しました。詳細についてはプレスリリース経済産業省HPでの発表等をぜひご覧ください。

また、INPITの知名度向上に関しては、これら取組のほか、多くの方に見ていただけるようなINPITの紹介動画や事例の配信に取り組んでいます。私自身も営業センスを身につけなければと思います。

――では、ベンチャー支援に関してはどんなことを?

岩谷:INPITでも産学連携・スタートアップに関する専門家派遣の支援などオープンイノベーション支援を行っていますが、今後、特許庁が行っている「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」という事業が、INPITに移管される予定です。

そうすると、INPITが元々行ってきたオープンイノベーション支援と組み合わせることでシナジーを発揮し、大学のアーリーシリーズからベンチャーまで、一貫した支援が行える体制が整います。

最後に

――今回はINPITの知財総合支援窓口について、詳しくありがとうございました。最後に一言、メッセージをお願いします!

岩谷:知的財産は難しいものでは全くなくて、その会社の強み、無形財産、目に見えない強みのことです。

こういった目に見えない強みを棚卸して経営に活かしていけば、稼ぐ力は向上していきます!!

INPITでは知財総合支援窓口というかたちで、地元に密着した支援を行っています。様々なジャンルの専門家に無料で相談できますし、先ほどお話ししたように、何にも分からない状態でもウェルカムです。

ぜひお気軽にご連絡ください!

目に見えない強みを知的財産として活かして、稼ぐ力の向上や地域の活性化につなげていきましょう!

――本日はどうもありがとうございました!

【INPIT(インピット) 知財総合支援窓口 概要】

名称:独立行政法人工業所有権情報・研修館 知財総合支援窓口

INPIT 本部住所:〒105-6008 東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー8階

INPIT 知財総合支援窓口の場所:全国47都道府県すべて

INPIT 知財総合支援窓口の電話番号(注1):0570-082100

INPIT 知財総合支援窓口の公式HP:https://chizai-portal.inpit.go.jp/

注1…全国47都道府県に設置された近くの窓口に自動的につなぐ、ナビダイヤル番号

特許の取得は弁理士に相談!
あなたの技術に強い弁理士をご紹介!