意匠権と実用芸術作品の著作権との相違・等
中国で意匠権の代わりに著作権で模倣品対策を行いたいと考えている権利者は少なくありません。この場合、皆さんが一番関心を持つのは、意匠権に該当する様々な製品中にどの種類の製品を著作権で保護できるか、また、意匠権の保護期間が満了したら続いて著作権での保護が認められるかなどでしょう。これについて、今まで入手した情報を皆さんにシェアしたいと存じます。
(2022年7月発行)
中国の知財に関わるニュースを日本の企業に向けて発信します。
本ニュースは、中国での知財活動を支援する「北京フェアスカイ特許法律事務所」がお届けしています。
(提供:北京フェアスカイ特許法律事務所)
目次
一、意匠権と実用芸術作品の著作権との相違
意匠権の代わりに著作権で保護できるのは、一般的に芸術性と実用性を同時に有する実用芸術作品です。この実用芸術作品は美術作品の一種であり、実務では美術作品として保護されています。以下、意匠権と実用芸術作品の著作権との相違について簡単に纏めます。
意匠権 | 実用芸術作品の著作権 | |
保護対象 | 製品の全体または部分の形状、図案又はその結合及び色彩と形状、図案の結合に対して行われ、優れた外観を備え、かつ工業への応用に適した新たな設計(特A2) | 文学、美術及び科学分野において、独創性を有し、かつ、一定の形式で表現可能な知的成果(著A3) |
取得方式 | 中国財産局の方式審査による権利付与 | 創作した後、自発的に形成 |
取得条件 | 従来設計に属さない(同じ(実質的同じ)ではない)(特A23) | 複製性、独創性、高度美学性、実用芸術分離性 |
保護期限 | 出願日からの15年(特A42) | 自然人:著作者の生涯及びその死亡後の50 年法人又は非法人組織:最初に公表された日(或いは創作が完了した日)からの50年(著A23) |
侵害認定 | 許諾せずの製造、販売の申し出、販売、輸入(特A11) | 許諾せずの複製、発行など |
ついでに、中国は1992年にベルン条約への加入によって、外国実用芸術作品に創作完了日からの25年の期限が適用されますが、実務では、実用芸術作品が普通の美術作品として扱われることがほとんどです( (2019)浙0784民初9703号、(2018)最高法民申6061号)ので、一般的に50年の期限が適用されます。
二、意匠権に該当する様々な製品中にどの種類の製品を著作権で保護できるかに関して、独創性、美学性だけ評価すべきではなく、以下の裁判例のように実用芸術分離性も満たさなければなりません。
(2018)最高法民申6061号裁判例
実用芸術作品自体は実用性及び芸術性を有している。
実用的な機能は思想範囲に属するため、著作権法によって保護されるべきではなく、応用芸術作品として保護されるべきなのはその芸術性のみであり、つまり、実用芸術作品における独創性のある芸術的形状または芸術的図案を保護すべきであり、即ち、芸術品の構造や形式を保護すべきである。
著作権法で保護される芸術作品としての応用美術作品は、作品の一般的な構成要素と美術作品の特別な構成要素の両方を満たすことに加えて、その実用性と芸術性とが互いに分離できる条件を満たす必要がある。
つまり、両者は物理的に分離でき、即ち、実用的な機能を備えた実用性と芸術的な美しさを具現化する芸術性が互いに物理的に分離して独立して存在できるだけではなく、両者は互いに認知上でも分離できる。
つまり、実用芸術作品における芸術性を変更しても、その実用的な機能の実質的な損失にならない。実用芸術作品の実用性と芸術性を分離できない場合、著作権法で保護された芸術作品にすることはできない。
(中国原文:实用艺术品本身既具有实用性,又具有艺术性。实用功能属于思想范畴不应受著作权法保护,作为实用艺术作品受到保护的仅仅在于其艺术性,即保护实用艺术作品上具有独创性的艺术造型或艺术图案,亦即该艺术品的结构或形式。作为美术作品受著作权法保护的实用艺术作品,除同时满足关于作品的一般构成要件及其美术作品的特殊构成条件外,还应满足其实用性与艺术性可以相互分离的条件:两者物理上可以相互分离,即具备实用功能的实用性与体现艺术美感的艺术性可以物理上相互拆分并单独存在;两者观念上可以相互分离,即改动实用艺术品中的艺术性,不会导致其实用功能的实质丧失。在实用艺术品的实用性与艺术性不能分离的情况下,不能成为受著作权法保护的美术作品。)
三、意匠権の保護期間が満了したら続いて著作権での再保護が認められるかに関して、明確的な法的根拠が無く、実務上、再保護不可と再保護可能との2つ考え方が分かられています。
再保護不可を支える裁判例としては、例えば以下のようになります。
(2014)浙民申字第660号
関連意匠権は年会費の未納付の理由によって2006年2月15日に終了した。
特許法によると、特許権の付与と終了は登録と公告されるため、保護期間の満了などの理由によって特許権が終了した後、当該特許はパブリックドメインのものとなり、誰でも自由に実施できる。
叶根木、明楊会社(被告)による被疑侵害食品包装の図案の使用行為は、パブリックドメインに入った意匠権の実施に属する。
叶根木、明楊会社(被告)は、特許権終了の公的な信頼性に基づいて、パブリックドメインに入った意匠権を実施する権利を持っていると信じる理由がある。
そのため、もし著作権者による起訴を恐れてパブリックドメインに入った意匠特許を実施できない場合、明らかに特許法の立法目的に反する。
(中国原文:案涉外观设计专利权已于2006年2月15日因未缴纳年费而终止。根据专利法的规定,专利权的授予和终止实行登记和公告制度。在专利权因期限届满或其他原因终止后,所涉专利便进入公有领域,任何人均可自由实施该专利。叶根木、明扬公司对被控侵权的食品包装袋图案的使用行为,属于对已经进入公有领域的外观设计专利的实施。基于专利权终止的公示公信力,叶根木、明扬公司有理由相信其有权实施已经进入公有领域的外观设计专利,如果其因担心受到著作权人的追究而无法实施已经进入公有领域的外观设计专利,显然有悖于专利法的立法宗旨。)
また、再保護可能を支える裁判例としては、例えば以下のようになります。
(2015)蘇知民終字第00037号
もし図案への意匠権付与によってその著作権が保護できなくなれば、この2つの民事権利が相互に衝突し共存できないことを意味する。これは法的根拠がなく、必然的に知的成果の使用及び普及を妨げ、著作権法の基本的な目的及び公衆の基本的な利益に反する。
……特許権の保護期間が満了したら、その権利対象がパブリックドメインに入ったが、この規則が著作物に基づいて取得された意匠に簡単に適用できない。
特許権終了の主な理由は、保護期間の満了、期限内での年会費の未納付、書面による特許権者の放棄などであり、その法律的結果が特許法によって保護できなくなることである。特許権が終了した後、権利対象はパブリックドメインに入り、一般の人々が自由に使用できるようになる。
この規則は、主に我が国の特許法における発明と実用新案に適用される。その理由としては、発明と実用新案の保護対象が産業応用のための技術案であり、一般的に文学的、芸術的、科学的作品に属しておらず、特許権以外の他の民事権利を取得できない。
したがって、特許権が終了した後、それが一般の人々が自由に使用できる公共資源になる。一方、作品に基づいて取得した意匠権の場合、権利者が特許権と著作権の両方を同時に所有し、両者が並行に存在する。意匠特許権の保護期間が満了すると、消滅するのは特許法によって保護された権利であり、著作が依然として存在して著作権法によって保護される。 」
(中国原文:如果因为该图案已被授予外观设计专利权而对其著作权不予保护,则意味着这两种民事权利相互排斥、不能并存,这既无法律依据,也必然阻碍作品这种智力成果的使用及传播,与著作权法的根本宗旨相悖,也不符合社会公众的根本利益。……专利权失效后,其权利客体进入公有领域,这一规则不能简单适用于在作品基础上获得的外观设计专利。专利权终止的主要情形是过了保护期、未及时缴纳年费和专利权人书面声明放弃专利权,其法律后果均是不再受到专利法的保护。专利权终止后,权利客体进入公有领域,公众可以自由使用,这一规则应该主要适用于我国专利法规定的发明专利和实用新型专利,因为这两种专利权的客体都是供工业应用的技术方案,一般不属于文学、艺术或科学作品,不会获得专利权之外的其他民事权利,故在其专利权终止后,成为公众可以自由使用的公共资源。而在作品基础上获得的外观设计专利,权利人同时拥有专利权和著作权,两种权利并行不悖,外观设计专利权保护期届满后,权利人丧失的仅仅是专利法保护的相关权利,而其享有的著作权依然存在,受到著作权法的保护。)
(2018)粤19民终8831号
特許権の有無と著作権の有無とは2種類の異なる法的関係に属する。蘇菲吉哈夫会社(原告)による関連作品の特許権が有効期間の満了により失効したが、その著作権が依然として存在し、著作権法によって保護される。蘇菲吉哈夫会社(原告)は、それに対して著作権を引き続き主張できる。
(中国原文:是否拥有专利权与是否拥有著作权是两个不同的法律关系,即使苏菲吉哈夫公司对于案涉作品专利权因有效期届满失效,其享有的著作权依然存在,受到著作权法的保护,苏菲吉哈夫公司仍可以对案涉美术作品主张著作权。)」
前記各裁判例によれば、最初の頃、「意匠権と著作権の何れか一つでの保護」を支持する裁判官がいますが、時間が経つにつれて、「意匠権と著作権での同時保護」を支持する裁判官が増えて、今の主流的な観点となりました。
ついでに、前記の裁判例「(2015)蘇知民終字第00037号」の見解のように、発明と実用新案の場合、その保護対象が産業応用のための技術案であり、意匠と違って、著作権での保護が難しいであることをご注意ください。
また、著作に該当しても、その他の先行類似意匠が存在すれば、権利主張できないこともご注意ください。裁判例としては、例えば以下のようになります。
(2019)浙0784民初9703号
「……被告によって提供された証拠によれば、意匠特許出願第201230565061.4号によって公開されたプラスチック製のスツールは、関連著作作品「バススツール」と実質的に類似する。且つ、当該意匠は2012年11月20日に出願し、2013年3月20日に登録され、関連著作作品の登録完成日である2018年4月17日よりも先に発表され……そのため、原告の関連作品「バススツール」の形状と外観は新規性を有していないため、排他性及び独占性を有しない。」
(……被告所提供证据证明的,申请号201230565061.4外观设计专利设计的塑料凳,与本案涉案作品“洗浴凳”构成实质性相似。且该外观设计专利于2012年11月20日申请,于2013年3月20日予以授权公告,早于涉案作品登记的创作完成日期2018年4月17日……故原告涉案作品“洗浴凳”表现出的形状、外观并不具有新颖性,由此也不具有排他性和独占性。)」
四、弊所コメント
前記のような裁判例から見れば、意匠権での保護は難しいである場合、製品の芸術性、独創性、実用芸術分離性を総合的に判断することで著作権での保護を追求することも考えられますが、発明と実用新案の場合、その保護対象が産業応用のための技術案であり、一般的に文学的、芸術的、科学的作品に属しておらず、著作権での保護が難しいと言わざるを得ません。また、意匠権の保護期間の満了、期限内での年会費の未納付、書面による特許権者の放棄などの場合、続いて著作権での保護が考えられますが、先行技術公開による新規性欠如などの場合、続いて著作権での保護が認められない可能性が高いため、この点についての事前調査を実施したほうがよいでしょう。
昨日、東京都では新たに1.6万人以上の新規感染者が確認されて、第7波に入ったとの懸念もあるなか、皆様方におかれましては、くれぐれもご自愛くださいますよう、お願い申し上げます。
中国の北京に本社を構え、アメリカ(サンフランシスコ)・日本(東京)にオフィスを展開している北京フェアスカイ特許法律事務所。
知財の係争を得意としており、中国では数多くのビックアントの知財係争をサポートしてきました。
日本の中小企業の中国進出を積極的に支援しており、日本語の堪能なスタッフがしっかりと中国での権利化をサポートします。
あなたの技術に強い弁理士をご紹介!