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Big Mac(ビッグマック)を巡る商標の戦い

(この記事は、2024年5月6日に作成したものです。)

今回は、”Big Mac”にまつわる商標を巡る戦いについてご紹介します。

大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドの定番メニューであり、事業展開されるすべての国でほぼ同じ品質で展開されることから、経済指標にまでされている”Big Mac”(ビッグマック)。

その”Big Mac”はたびたび商標関係の戦いを起こす/起こされているのはご存じでしょうか?

今回は、そんな”Big Mac”にまつわる商標についてご紹介したいと思います。

EUでのBig Mac商標を巡る戦い

アイルランドのハンバーガーチェーンにSupermac’sというブランドがあります。

同社は、欧州市場での存在感が年々高まっており、マクドナルドとしても競合として無視できない存在でした。

同社の商標”SUPERMAC’S”について、2017年にマクドナルド側からBig Macとの混同の可能性があるということから、申請に異議を唱えられました。なおこの異議は未だ継続中です。

これに対しSupermac’s側は、欧州での”Big Mac”商標(登録番号62638)に対する商標取消(日本の不使用取消審判)に動きました。

マクドナルド側は、ドイツ、フランス、イギリスのマクドナルドの代表からの3つの宣誓供述書を提出し、「Big Mac」サンドイッチに関する重要な売り上げデータを主張しました。しかしEU知的財産庁の取り消し部門は、提出された証拠が商標の真正な使用を立証するには不十分であると判断し、Big Mac商標を全面的に取り消しました。

マクドナルドはこの決定を不服として2019年に控訴し、ドイツ、フランス、イギリスでのBIG MAC商標の使用範囲を証明するために追加の証拠を提出しました。控訴審は、ビッグマックがマクドナルドのファストフードチェーンの看板商品であり、グローバルに販売されていることを示す十分な証拠があると結論づけ、BIG MAC商標を一部取り消す決定を部分的に破棄しました。

あのチェーン店がジョークメニューを!?

なお、この一連の流れに便乗する面白いニュースもあったので合わせてご紹介します。

同じく大手ハンバーガーチェーンのバーガーキングは、スウェーデンの店舗で「NOT BIG MAC’S」というジョークメニューを出して話題になりました。

バーガーキングに“ビッグマック”登場!? マクドナルドの商標権敗訴への便乗プロモーション | PR EDGE

こちらのサイトでは、Burger Kingが作ったNot Big Mac’sのプロモーションビデオも見られます。

商標が無効化された隙間を突いた面白い動きですね。

オーストラリアでのBig Mac商標を巡る戦い

オーストラリアにはHungry Jack’s(ハングリー・ジャックス)というハンバーガー・チェーンがあります。

このハングリー・ジャックスの「ビッグジャック」という商品が「ビッグマック」を商標侵害しているとして、2020年にマクドナルドは訴訟を起こしました。しかしメルボルンの連邦裁判所は商標侵害を認めないという判決を下し、マクドナルド側の敗訴という結果になりました。

ちなみにこちらの一件にも興味深いニュースがあります。

本訴訟のさなか、マクドナルドはハングリー・ジャックスの「ビッグジャックはオージービーフが25%多くて、明らかに大きい」という広告に嘘があると主張したそう。専門家が実際に調査をした結果、該当する事実は見つからなかったとのことで、ハングリー・ジャックスは誇大広告について咎められることになりました。

マクドナルドが一矢報いた形ですね。

日本での状況は?

日本では、”Big Mac”に関する商標が11件が今も登録されています。そのうち、一番古いものになりますと1971年4月12日に出願されています。

登録番号:第2188711号
出願日:1971年 4月 12日

区分:29、30

拒絶査定を乗り越えての登録だったので、苦労したのが伺えます。

このほかにもギガビックマックやグランドビックマックなどの一時期展開していたメニューに関する商標や、”ビッグマック”、”Big Mac”という表記が英語、カタカナを独立して再度登録に動く等の手厚い対応が見て取れます。なお区分は基本的に30類(ハンバーガー関連)のみです。

手厚く出願しているように見えますが、区分で見た時には、他の企業の出願が目につきます。マクドナルド以外からもBig Macが出願されており、マクドナルドが無効化に動いたケースもあります。

株式会社クラウン・クリエイティブは、マクドナルドからの異議申し立てを乗り越えて登録を維持し、以下のような事業を継続しています。マクドナルドの事業領域と異なり、アパレル関連での出願であることから併存することとなりました。

出典:同社HP

ブランドを維持し、守るために商標が重要であることは言わずもがなですが、どこまでの範囲を守るかは難しいところ。

不使用取消のような制度もあることから、事業外のすべてをカバーし続けることはできません。また、国によって裁定も変わります。

他社の動向や制度の変化を注意深く見ながら自社のブランドを守ることをしていく必要がありそうです。

皆さんもご存じのBig Macをとりまく商標の動きについてご紹介しました。
ブランドを守る動きをした結果としてどのようなことが起こるかを知るきっかけになれば幸いです。

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