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希釈化してしまった商標と必要な対策とは

(この記事は、2024年8月26日に作成したものです。)

商標を取得したからと言って、その商標の使い方や、周辺企業の模倣を放置していると、商標として/ブランドとして成り立たせることができなるかもしれません。
今回は、商標の希釈化という視点でお話してみたいと思います。

商標の希釈化とは何か

ブランドや商品名を保護するために商標出願することは多くありますが、その商標を守ることを意識していますでしょうか?

取得した商標が他者によって様々な商品やサービスに使用されたりすることを放置すると、元々の商標としての機能が弱まり、最終的には一般的な名称に変わってしまうことがあります。

このことは「商標の希釈化」と呼ばれます。

希釈化には、商標と商品・サービスとの結びつきが弱まる「希薄化」や、有名商標の良好なイメージが損なわれる「汚染」の2つの類型があります。

もし商標の希釈化によって、普通名称化してしまうと、他の業者にその商標を使用されても、法的な保護を受けることが困難になります。

また、普通名称化した商標が誤って登録されてしまった場合、国によっては登録が後から取り消されることもあります。

商標の希釈化を防ぐためには、登録後も商標を保護するための努力をし続けることが求められます。しかしながら、私たちの身の回りには、既に普通名称となってしまった商標が意外と多く存在します。

具体例としては「正露丸」「メカトロニクス」「エレベーター」「うどんすき」などがありますね。

希釈化してしまうことは悪い?

商標権を取得して守ることは重要ですが、意図的に開放することもあります。

ホームシアターの商標などは無償開放をすることで一般化されました。

参考:登録商標『ホームシアター』を無償開放 – 富士通ゼネラル JP

今までにない新しい事業などは、その認知拡大・市場拡大をするために、商標を開放して広く利用してもらうことで認知拡大を図ることがあります。

これは商標の希釈化につながる行動ですが、戦略的意図をもって行う場合、必ずしも悪いことではない、というわけです。

希釈化を防ぐには?

時には意図的に商標を無償開放することがあるとはいえ、一般的に商標は守るべきものということは変わりません。

では、どのように希釈化を防ぐことができるか、2つの類型よりご紹介します。

1. 希薄化(Blurring)の仕組みと対策

「希薄化」とは、有名な商標が異なる商品やサービスに繰り返し使用されることで、その商標が持つ独自の識別力が徐々に薄れてしまう現象を指します。

本来は、その商標を見ただけで特定の商品やサービスが連想されるべきところが、異なる商品やサービスにその商標が使われることで、消費者の認識が分散し、商標の強みが失われることになります。

対策

希薄化を防ぐためには、以下のような対策が重要です。

  • 商標の一貫性を保つ
    商標を使用する際には、常に同じ形で一貫して使用し、異なるデザインやフォーマットで使用することを避けます。これにより、消費者に対して商標が強く認識されるようにします。
  • 異業種での使用を監視する
    他社が異なる業種で同一または類似の商標を使用している場合、積極的に対応し、必要に応じて異議申し立てや訴訟を行います。
  • 商標の拡張的使用の管理
    自社が新しいカテゴリーや製品で商標を使用する場合、適切な商標保護を行い、混乱を避けるために各カテゴリーでの商標使用を統一します。

2. 汚染(Tarnishment, Pollution)の仕組みと対策

「汚染」とは、商標が本来持っている良好なイメージや評判が、他者によって使用されることで損なわれる現象を指します。

汚染が起こると、その商標に対する消費者の信頼が低下し、ブランド価値が著しく損なわれることがあります。

例えば、ファッション業界で高い評価を受けているブランドが、品質の低い製品やサービスにその商標を使用されることで、ブランドのイメージが悪化する可能性があります。

のちほど紹介しますが、高級ファッションブランドの”シャネル”という名前をラブホテルに使った一件などが該当します。

対策

汚染を防ぐための対策には、次のようなものがあります。

  • 商標の使用許諾における厳格な管理
    他社に商標の使用を許諾する場合、その使用方法や品質管理について厳しい基準を設けます。これにより、商標が低品質な製品やサービスに使用されるリスクを減らします。
  • ネガティブな使用の監視と対応
    ネガティブなイメージを引き起こす可能性のある使用が行われた場合、早急に法的対応や修正を求める措置を講じます。
  • ブランドの評判管理
    企業全体でブランドの評判を保護するためのPR戦略を確立し、常に商標がポジティブに認識されるよう努めます。

<例>神戸地判昭和 62 年 3 月 25 日判時 1239 号 314 頁
〔ラブホテルシャネル事件〕
「右に認定した事実によれば,原告は,長年にわたって培ってきた「シャネル」の表示のもつ高級なイメージを,一般に低俗なイメージを与えるいわゆるラブホテルの名称として使用されたことにより,侵害されたと認められるのみならず,他人が「シャネル」の名称を使用するときは,「シャネル」の表示が有している原告らシャネルグループの商品及び営業を喚起させる力を阻害し,その結果,同表示の宣伝的機能を減殺することになる(いわゆる希釈化)といわざるを得ない。」

平成 28 年度不正競争防止法委員会 希釈化に関する裁判例の調査及び検討

今回は、商標の希釈化という視点で、商標の使い方や他社の模倣に対する警戒の必要性を話しましたが、ブランド管理の視点でも商標の使い方の統一性は非常に重要な事項です。

もし、読者の方の中で、自社の事業のブランド管理が徹底されていない場合は、ぜひ見直してみてはいかがでしょうか?

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