「糖質0ビール」の権利と今後の予想。大注目のクロスライセンス事例! -iPTimes.-
(この記事は、2022年9月2日に作成したものです。)
こんな方に向けた記事です。
☆ビール好きな方へ
☆糖質が気になる方へ
本記事のここがポイント!!
キリンホールディングス(以下、HD)とサントリーHDが糖質ゼロビール特許についてクロスライセンス契約を結んだと発表しました。
今回はこのクロスライセンス契約について詳しくみていきましょう。
糖質0ビールとは?
糖質ゼロビールは、その名の通り、ビールなのに糖質が0!のビールです。一般的に350mlのビール缶1本の糖質は、コンビニおにぎり1/3分と同じ位だそうです。意外と少ないなと思いましたか?それとも多いと感じましたか?1日に何本も飲む場合やおつまみと一緒に飲めば、もっとたくさん摂っていることになりますね。糖質ゼロビールは、健康診断で指摘されてしまった方や、太りたくないけどビールを飲みたいという方にもありがたい商品ですよね。
私は、糖質ゼロビールといえば「キリン一番搾り糖質0」をまず思い浮かべました。こちらの商品は2020年に発売を開始して累計販売数はなんと3億本以上。さらに、アルコール度数を4%から5%に引き上げたり、飲みごたえとおいしさを追求したりして今年(2022年)7月にリニューアルしたそうです。
また、サントリーHDから販売されている「パーフェクトサントリービール」も糖質ゼロビールです。こちらも今年1月25日にリニューアルしています。糖質ゼロという課題のために増やせなかった麦芽の量を、サントリーは独自の技術で従来品よりも1.3倍に増やすことに成功し、よりビール本来の味に近づけることを実現しました。今年8月からは順次パッケージを刷新しているそうで、糖質ゼロビールの認知度を上げていきたいという狙いを感じます。
現在販売されている糖質ゼロビールは以上の2つですが、他にも発泡酒や第3のビールでは、「糖質ゼロ」「糖質オフ」さらには「プリン体0」の商品がたくさん発売されています。やはり消費者の健康志向が高まっているのですね。
クロスライセンス契約とは?
クロスライセンス契約とは、特許権の権利者どうしが、互いに相手の特許権を使用できるように締結する契約のことです。つまり今回の場合、キリンHDとサントリーHDが互いのもつ糖質ゼロビールに関する特許権を利用できるように契約を結んだということ。
今回キリンHDとサントリーHDのどの特許をクロスライセンスしたのかは公にされていませんが、J-platpatを見てみると、両社とも糖質ゼロや糖質オフ飲料についてたくさんの特許を出願していました。
例えばキリンHDが今年2月に出願した特許明細書中の、「発明の効果」の部分を見てみましょう。※発明の効果はこの特許技術により、これまで出来なかったどんなことが可能になるのかが記載されています。
これによると、キリンさんは、味の厚みを実現し従来よりも美味しい糖質ゼロビールを開発できた!ことがわかりますね。
次に、サントリーHDの特許出願を1つ。
この「発明の効果」をみれば、サントリーさんは、低糖質でありながら味の落差と飲んだ後の爽快さをバランスよくできた!ことがわかります。
わざわざ公表したのは何故か。考察とまとめ
通常、クロスライセンス契約のような企業間契約は、秘密事項なので公表されないものです。しかし今回あえてキリンとサントリーが揃って公表したのには、何か意図があると考えられます。
1つ考えられるのは、他の企業を寄せ付けないようにするということ。糖質ゼロビール業界で1位2位を争うキリンとサントリーが共闘していることを見せつけることで、他の企業はそこに参入しにくくなりますよね。
今後はキリンとサントリーが互いに刺激しあい、より美味しい糖質ゼロビールが開発されていくでしょう。他の企業はそこに割って入ることができるのか。ますます今後の動向から目を離せません。
特許事務所で6年間勤務。明細書作成や中間処理に従事。翻訳の仕事も請け負ってきました。元々はデザイン系専攻でして、図面を作成するのが一番楽しい時間です。現在はフリーで活動中。
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