あの名画「ムンクの叫び」が商標出願されていた話-iPTimes.-
(この記事は、2022年10月15日に作成したものです。)
こんな方に向けた記事です。
☆美術品に興味がある方へ
☆面白い商標出願に興味がある方へ
本記事のここがポイント!!
「エドヴァルド・ムンク」の「叫び」という名画、あの独特で印象的な絵画は一度見たら忘れることができませんよね。「ムンクの叫び」と聞けばどんな絵なのかすぐにイメージできる方も多いのではないでしょうか。
実はこの名画は商標出願されていたのです。
今回は、この「ムンクの叫び」の商標出願がどのようなものか見ていくと共に、名画と商標権との関係についても詳しく見ていきましょう。
「ムンクの叫び」とは?
「叫び」とはどんな絵なのか。ご存知ない方や、知ってるけどぼんやりとしか思い出せない方もいるかもしれません。まずはこちらをご覧ください。
これは、ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクがかいた油彩絵画です。ムンクは同じ題名と構図、異なる材料を用いてこの「叫び」を描いており、全5点の『叫び』が存在するそうです。そして5つのうち最も有名なのがこちらの油絵です。
個人的な感想ですが、他の4点は同じ構図とはいえど、見た時の印象は全く違うなと感じました。
誰が出願したの?区分は?
今回、この「叫び」の画の商標を日本で出願をしたのが誰なのか、J-platpatで検索してみると「Rosmersholm as」とありました。
なんとなく、ムンクさんの関係者じゃなさそうですね。
「叫び」の商標の商品カテゴリ(出願区分)は第32類 ビール,ミネラルウォーター及びその他のアルコールを含有しない飲料と、第33類アルコール飲料(ビールを除く)でした。
出願人をネットで検索してみるとノルウェーのお酒を提供している会社「Rosmersholm as. 」がヒットしました。HPを見ていても英語ですらなくて読めないし、ムンクの叫びに関連しそうな内容は掲載されていません。
うーん、どういうことでしょう?
そこで、日本に出願する前の段階に戻って調べてみることにしました。日本の公開公報を見ると、日本での出願の元となる「基礎出願」の欄には国・地域又は機関:NO(ノルウェー)とありました。また基礎出願番号:201212242とあります。
つまりノルウェーで最初に出願した商標を日本でも出願しいずれの国で登録を拒絶されたということのようです。またアメリカにも出願していてこちらも拒絶されていました。
ノルウェーでの出願人は「Edvard Munch Beverages AS」とあります。この出願人について検索した先のサイトには、ムンクの「叫び」がプリントされたお酒の画像が出てきました。
以下は日本で登録できないとされた理由です。
これによると、この商標には名画「叫び」が含まれており、この商標が使われた商品は、ムンクの作った商品なのかなと混同されてしまう可能性があるので登録できないとあります。
「著名な絵画等からなる商標登録出願の取扱い」について特許庁によるリリースはこちら。こちらの文書をざっくりまとめると…
著名な絵画等と関係のない者が行った商標登録出願は、公序良俗を害するおそれがあり登録できない。この判断は、その絵画等の著作権が消滅しているか否かにかかわらない。と書かれています。
まとめ
ムンクの「叫び」の商標はこのように登録を拒絶されました。もしかしたら他にも著名な絵画などを他人が出願しようとした例はあるかもしれませんね。
もっとこちらの出願を詳しく見てみたい方や他の出願も調べてみたい方はJ-platpatをチェックしてみると良いかもしれません。
特許事務所で6年間勤務。明細書作成や中間処理に従事。翻訳の仕事も請け負ってきました。元々はデザイン系専攻でして、図面を作成するのが一番楽しい時間です。現在はフリーで活動中。
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