ユニクロのセルフレジ訴訟から学ぶ特許技術の守り方 -iPTimes.-
(この記事は、2022年8月19日に作成したものです。)
こんな方に向けた記事です。
☆メーカーの開発担当者さん、あるいは知財担当者さんへ
☆ユニクロの特許訴訟の内容に興味がある方へ
本記事のここがポイント!!
ユニクロに設置されているセルフレジ。初めて使ったとき、簡単便利で驚きました!
実はこのレジ、訴訟問題になっていたんです。新しい技術を開発したときにその権利を守るために重要なことについて考えていきましょう。
どんなレジなの?
まず、ユニクロのセルフレジを使ったことのない方のために、使い方を簡単に説明します。
※実際のセルフレジと仕様は違いますが仕組みが似ている特許の図面を参照ください。
お目当ての商品が見つかったらそれを買い物カゴの中に入れて(商品いくつ入れてもOK!)セルフレジまで持っていきます。
セルフレジには大きなくぼみ(カゴ置き場)が設けられているので、そこに買い物カゴごと商品(上の特許図面のPに相当)を起きます。
モニタ(106)をタッチすると、自動で全商品のバーコード(102)を読み取ってくれて、商品の合計金額がモニタ(106)に表示されます。あとはモニタの表示に従いながら操作をして支払いをするだけ!
商品バーコードを自分でスキャナにかざしたり金額を入力したりしなくても、カゴを置くだけで購入商品の金額を合計してくれる画期的なシステムです。
訴訟の内容と経過は?
実はこの特許、ユニクロ(株式会社 ファーストリテイリング)ではなく、株式会社アスタリスクという別の会社が出願したものなのです。
アスタリスクはユニクロに対して、「この特許技術を使うならお金(ライセンス料)を支払ってくれ!」と言いましたが支払ってもらえず。特許権侵害訴訟(セルフレジの使用差止め請求)を提起しました。
一方でユニクロ側は、「特許出願前からユニクロではこのレジを使っているし、この特許は無効である!」と主張してきたのです。
特許が登録になったのは2019年1月25日、ユニクロが特許無効審判を起こしたのがその年の5月、アスタリスクが特許権侵害訴訟を起こしたのが9月。裁判は最高裁までいき双方が激しく争いました。
しかし4年近く経った2021年12月23日に突然の和解(リリース発表はこちら)。
何があったのか詳細は不明ですがユニクロはこれまで通りセルフレジを、ライセンス料を払うことなく利用することができる、アスタリスクはユニクロ以外のお店がセルフレジを使う場合、そのお店からライセンス料を取るというような内容になったようです。
ユニクロの押し切り勝ちのようにも見える結果ですが…
裁判が長引くほどユニクロのような大企業の方が金銭的にも体力的にも有利になりそうですが、ひとまずここで和解できたようですね。
そもそも何故、訴訟に発展してしまったのか?
新しい技術を開発して特許を出願してから公開されるまで普通、1年半かかります。今回の件では、アスタリスクの出願が公開される前にユニクロ側がセルフレジの使用を始めていたことが分かっています。
ではなぜ特許がユニクロ側に漏れて使われてしまっていたのか?
どうやら、アスタリスクは、特許出願直後にこのセルフレジを展示会で公開したり、ユニクロのコンペで提案したりしていたようです(もちろん、特許出願中と説明していたそうですよ)。
この事件から他人に技術を奪われない為には、特許を出願してから特許登録あるいは公開されるまでに、内容を明かさないことが大事だと分かります。
しかしビジネスにはスピード感が必要。他社との競争に勝つために少しでも早く発表したい、発注先企業にアピールし契約を取りたいというのはよくあることかと思います。
私も、メーカーの開発者さんと特許出願前に内容を詰めるお話している中で
「もうこの技術、他社さんにもちらっとお見せしちゃったんですけどね」
と言われてゾッとした経験が少なくありません。
本当にやめて…(涙)
その場合は秘密保持契約など正式文書を交わし相手側に勝手に使用されないように手を打つことも検討してみてください。あくまでも開発者さんどうしでの判断ではなく企業内に法務部や知財部があれば相談すること、あるいは弁護士や弁理士に相談することが大事です。
知財部の方々は既に行われていると思いますが、開発者さんに特許出願の大切さ、内容公開は慎重に、とアピールし続けてくださいね。絶対に発明を奪われないで!!
特許事務所で6年間勤務。明細書作成や中間処理に従事。翻訳の仕事も請け負ってきました。元々はデザイン系専攻でして、図面を作成するのが一番楽しい時間です。現在はフリーで活動中。
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