「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」の改訂案まとまる
【本記事の内容】
特許庁は「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」の改訂案を作成し、ホームページ上で公開している。本手引きは近年の裁判例の傾向や異業種間紛争の表面化を受け作成されたもので、令和3年度に実施された「標準必須特許と消尽に関する調査研究」の結果を反映した内容になっている。
改訂案における主な修正点は以下のとおり。
- SEPを巡る近時の動向と改訂に至る経緯
- 「標準必須特許のライセンスに関する誠実交渉指針」(経済産業省、2022年)への言及
- 不誠実と評価される方向に働く可能性がある行為とクレームチャートの提供との関係(クレームチャートの提供が一般的である旨の記載は維持)
- サプライチェーンにおける交渉の主体
- 国際裁判管轄
なお、本手引き改訂案の内容については、2022年6月8日までパブリックコメントを募集中だ。
【弁理士による解説】
「標準必須特許」とは、現在又はそれ以前の特許権者が標準化団体に対して「 FRAND 宣言」した特許であり、英語表記はStandard Essential Patentで「SEP」と略される。
「標準必須特許」は無線通信の分野などにおける標準規格の実施に不可欠な特許であることから、近年「標準必須特許」を巡って通信業界と自動車業界との異業種間において係争や裁判が増加している。
このような状況を受け、多くの標準化団体は、紛争を防止し「標準必須特許」の幅広い活用を促すため、「標準必須特許」のライセンスが公平・合理的・非差別的(Fair, Reasonable And Non-Discriminatory、以下「FRAND」といい、「標準必須特許」をFRAND条件でライセンスする意思があるか否かを宣言することを「FRAND宣言」という。)となるように方針を整備している。
「標準必須特許」を巡る問題は解決に向け着実に進展しているものの、ライセンサーによる「標準必須特許」の必須性の説明不足、FRAND宣言をどの時点で宣言するか・宣言タイミングの問題、未登録特許のFRAND宣言をどうするかなど、引き続き数多くの検討課題が残されている。
本手引き書は特許庁がライセンス交渉を巡る論点を客観的に整理したもので、基準やルールを設定したものではなく、法的拘束力や将来の司法判断を示したものではないが、「標準必須特許」に携わる実務家は必ず理解しておくべき内容が盛り込まれている。
●参考URL
「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」の改訂案に対する意見募集の実施
企業勤務弁理士。知財キャリア約20年。研究所勤務経験と発明者として特許出願・権利化の実績あり。
発明発掘から国内外権利化手続き、知財戦略立案など知財に関して幅広く活動してきました。
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