ミッキーマウスの著作権は2023年まで?いつ消滅するか解説します
最近、ミッキーマウスの著作権は2023年で消滅するのか、2024年から自由に使えるようになるのか、というニュースが流れてきています。
しかし著作権は各国で発生し、さらに著作権の保護期間は国ごとで異なっています。
目次
各国における著作権の保護期間
まず、アメリカにおける著作権の保護期間の終期は、次のようになっています。
- 1978年1月1日以降に創作された著作物の場合、著作者の没後70年の12月31日(年末)で消滅
- 1977年12月31日以前に創作された著作物の場合、発行日から95年の年末で消滅
一方で、日本における著作権の保護期間の終期は、次のようになっています。
(1)1969年までの著作権法
団体名義の著作権は公表から33年、個人名義の著作権は没後38年で消滅
(2)1970年施行の著作権法
- 実名の著作物の場合、著作者の没後50年の年末で消滅(映画の著作物を除く)
- 無名・変名の著作物の場合、公表後50年の年末で消滅(映画の著作物を除く)
- 団体名義の著作物や映画の著作物の場合、公表後50年の年末で消滅
(3)2004年に改正された著作権法
- 実名の著作物の場合、著作者の没後50年の年末で消滅(映画の著作物を除く)
- 無名・変名の著作物や団体名義の著作物の場合、公表後50年の年末で消滅(映画の著作物を除く)
- 映画の著作物の場合、公表後70年の年末で消滅
(4)2018年に改正された著作権法
- 実名の著作物の場合、著作者の没後70年の年末で消滅(映画の著作物を除く)
- 無名・変名の著作物の場合、公表後70年の年末で消滅(映画の著作物を除く)
- 団体名義の著作物や映画の著作物の場合、公表後70年の年末で消滅
(5)(1)から(4)において著作権が複数存続している場合、(1)から(4)を比較して、保護期間が長い方を選択する
(6)戦前の米国作品の場合、保護期間を10年5ヶ月加算(戦時加算)
ただし法改正前に保護期間が終了してパブリックドメインとなった著作物には、法改正後の著作権法は適用されず、パブリックドメインのままとなります。
またアメリカ、日本のいずれも、著作権の存続期間は創作時に開始します。
アメリカにおけるミッキーマウスの著作権
ミッキーマウスは、1928年に公開された映画「蒸気船ウィリー」でデビューしました。
そのためアメリカにおけるミッキーマウスの著作権は、1928年から95年後の2023年12月31日に消滅します。ただしミッキーマウスのデザインは時代と共に変化しているため、著作権の切れるミッキーマウスは初期のものだけです。
参考:スクリーンデビュー90周年!ミッキーマウスの変遷をフィギュアでたどる!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
著作権が消滅した後はパブリックドメインとなるので、初期のミッキーマウスは2024年1月1日から自由に使用することができます。
そのため、例えば、初期のミッキーマウスをモチーフとした映画を上映することも可能となります。
実際に、児童小説「くまのプーさん」の文章については著作権が消滅してパブリックドメインとなった後、このプーさんをモチーフとしたホラー映画が米国で公開されました。
日本におけるミッキーマウスの著作権
その一方で、日本におけるミッキーマウスの著作権の保護期間についてはいくつかの見解があり、非常にわかりにくい状況となっています。
まず日本の著作権は、法人名義(団体名義)か個人名義かで、保護期間が変わります。またミッキーマウスの場合、映画の著作物に該当するか、それとも美術の著作物に該当するかでも、保護期間が変わります。
ここでは「団体名義 or 個人名義」「映画の著作物 or 美術の著作物」という点について、細かく場合分けして分析していきます。
ミッキーマウスは共同著作物か?も問題
また、ミッキーマウスの著作権が個人名義の場合、著作権者は誰になるかという問題があります。ミッキーマウスの著作者としてウォルト・ディズニー氏がよく知られていますが、実はアブ・アイワークス氏も深く関わっています。
そこで今回は、ミッキーマウスの著作者が、ウォルト・ディズニー氏の場合、アブ・アイワークス氏の場合、両者の共同である場合について、検討します。
ミッキーマウスが「映画の著作物」の場合の著作権期限は
まずはミッキーマウスが「映画の著作物」にあたるケースを考えていきます。
団体名義の場合
ミッキーマウスが映画の著作物、かつ団体名義の場合は、(2)の公表後50年の年末と戦時加算が適用され、1989年5月に終了します。
(1)を適用し、戦時加算もする→1972年5月に終了
(2)を適用し、戦時加算もする→1989年5月に終了
※遅くとも1989年6月にはパブリックドメインになるので、(3)(4)は適用されない
個人名義の場合
ミッキーマウスが映画の著作物であり、個人名義の場合は、少々複雑です。
まず(1)の適用による著作者の没後38年と、戦時加算が適用されます。その後(2)から(4)を検討し、最も長い保護期間が適用されます。
また共同著作の場合には、保護期間は最後の著作者の死亡から起算されます。
ウォルト・ディズニー氏単独名義の場合
ウォルト・ディズニー氏は1966年に亡くなっています。最も著作権期間が長くなるのは(1)と戦時加算を適用したときなので、この場合、保護期間は2015年5月までとなります。
(1)を適用し、戦時加算もする→2015年5月に終了
(2)を適用し、戦時加算もする→1989年5月に終了
(3)を適用し、戦時加算もする→2009年5月に終了
※遅くとも2015年6月にはパブリックドメインになるので、(4)は適用されない
共同名義またはアブ・アイワークス氏単独名義の場合
アブ・アイワークス氏は1971年に亡くなっています。この場合も(1)のほうが保護期間が長くなるため、(1)と戦時加算を適用し、保護期間は2020年5月までとなります。
(1)を適用し、戦時加算もする→2020年5月に終了
(2)を適用し、戦時加算もする→1989年5月に終了
(3)を適用し、戦時加算もする→2009年5月に終了
(4)を適用し、戦時加算もする→2009年5月に終了
ミッキーマウスが「美術の著作物」の場合の著作権期限は
団体名義の場合
ミッキーマウスが美術の著作物であり団体名義の場合は、保護期間は最長となる(2)の公表後50年と戦時加算が適用され、1989年5月に終了します。
個人名義の場合
ミッキーマウスが美術の著作物かつ個人名義の場合、基本的な考えは「映画の著作物で個人名義の場合」と同じです。
つまり、まずは(1)の適用による著作者の没後38年と、戦時加算が適用されます。その後(2)から(4)を検討し、最も長い保護期間が適用されます。共同著作の場合は、最後の著作者の死亡から起算される点も同じです。
ウォルト・ディズニー氏単独名義の場合
ウォルト・ディズニー氏は、1966年に亡くなっています。そのため(1)と戦時加算を適用すると、保護期間は2015年5月までとなります。しかし(3)と戦時加算を適用すると、保護期間は2027年5月までとなります。そして(4)と戦時加算を適用すると、保護期間はさらに延びて2047年5月となります。
以上より、この場合の保護期間は2047年5月までとなります。
共同名義またはアブ・アイワークス氏単独名義の場合の場合
アブ・アイワークス氏は1971年に亡くなっています。この場合は(4)と戦時加算の適用が最も保護期間が長くなるため、保護期間は2052年5月までとなります。
結論、日本でミッキーマウスの著作権が切れる日は…?
日本でミッキーマウスの著作権が切れる日については諸説ありますが、最も長い場合には、最初のミックーマウスであっても、2052年まで著作権が存続する可能性があります。そして、最初の「蒸気船ウィリー」からデザインを変更したミッキーマウスについては、2052年以降も著作権が存続する可能性もあります。
また、ミッキーマウスが映画の著作物であるか、美術の著作物であるかは、著作権の専門家であっても意見が分かれるところであり、判断の難しいところです。
さらに、ミッキーマウスについては商標登録もされているため、パブリックドメインとなった後でも、ブランド名としての使用に該当するような使い方をした場合には、商標権の侵害となる可能性もあります。
とはいえアメリカではミッキーマウスが2024年1月からパブリックドメインになることは事実です。
今後、ミッキーマウスのパロディ映画などがアメリカから発信されるかもしれませんね。
特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。
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