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台湾の国家安全法とは?台湾では、特定の機密情報を不正に取得する行為に厳罰が科されます。

2026年4月、台湾の大手製造メーカーの半導体技術を不正に取得したとして、日本の大手製造メーカーの元従業員に懲役10年、この日本製造メーカーの子会社に約7億5000万円の罰金を命じる判決がなされました。

TSMCから半導体技術を不正取得、元従業員に懲役10年…転職先の東京エレクトロン子会社に罰金7・6億円 : 読売新聞

今回の判決では、台湾の企業における企業秘密を不正に取得した場合、不正競争防止法よりも重い刑罰が課される可能性があるということが示されています。今回は、この事件で適用された国家安全法について解説します。

事件の概要

今回の事件は、台湾の大手半導体受託製造企業であるTSMCから、半導体分野の最先端技術に関する機密事項が、TSMC元社員と、日本の大手半導体製造装置メーカーである東京エレクトロン(TEL)子会社の元社員によって、不正に持ち出された事件です。TEL子会社の元社員は、TSMCから転職し、営業担当として勤務しており、TSMCの元同僚を通じて機密情報を入手したとされています。

今回持ち出された技術は、2ナノメートル(nm)プロセス技術であり、7nm世代との比較で45%の性能向上、又は同じ性能であれば75%の消費電力削減が可能と考えられています。

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また、今回の事件の流れは、次のようになっています。

2025年8月 TEL子会社元社員1人とTSMC元社員2人を国家安全法違反などの罪で起訴
2025年12月 監督責任があったとして、TEL子会社を国家安全法違反などの罪で起訴
2026年1月 別のTSMC元社員1人とTEL子会社元社員1人を起訴。TEL子会社についても追起訴
2026年4月 被告4人に最長10年の実刑判決、1人に執行猶予が言い渡される。TEL子会社については、執行猶予3年、罰金1億5000万台湾元(約7億6000万円)の罰金が言い渡される
2026年5月 判決を受けた個人の被告のうち3人が上訴

国家安全法とは

国家安全法は、制定時には、国歌の根本的利益を脅かす行為や、政府転覆・スパイ活動などを防止することを、目的とする法律でした。しかし、近年の技術の急速な進展やグローバル化の進行に伴い、「国家核心重要技術」に関する適用が2022年に追加されました。この「国家核心重要技術」に関する適用では、ハイテク産業の競争力保護の拡充や、経済発展の強固の他、台湾の重要コア技術に関する機密事項が敵対勢力によって侵害されないようにすることが、求められています。 

国家安全法で規制される内容

国家安全法で規制される内容は、次の(1)から(3)です。(1)から(3)のいずれの場合も、刑事罰と罰金の両方が科されます。

(1)スパイ行為

外国勢力(特に中国)に国家機密や軍事情報、外交情報などを漏洩する行為が該当します。

(2)経済スパイ行為

外国の機関などのために、国家核心重要技術の不正な取得や使用、漏洩をする行為が該当します。

(3)国家核心重要技術の域外使用

国家核心重要技術の営業秘密を使用する意図をもって、営業秘密を侵害する行為が該当します。

「国家核心重要技術」の内容

国家核心重要技術では、半導体や宇宙など5分野22項目が対象となっています。

  1. 国防(6項目):軍用カーボンファイバー複合材料技術、軍用カーボン高温耐性材料技術、軍用新型敵味方識別装置技術、軍用マイクロ波・赤外線・マルチモードシーカー技術、軍用アクティブ式フェーズドアレイ偵察技術、ラムジェットエンジン技術。
  2. 宇宙(8項目):衛星コントロール技術、Xバンド画像ダウンロード技術、画像圧縮エレクトリックユニット技術、CMOS映像観測器技術、光学ペイロードシステムの設計・製造・統合技術、アクティブ式フェーズドアレイアンテナ技術、受動型リフレクターアンテナ技術、レーダー映像処理技術。
  3. 農業(3項目):品種育成および養殖技術、農業バイオチップ技術(農薬残留検査、動植物病原検査)、農業設備の運営・管理技術。
  4. 半導体(2項目):14ナノ以下の集積回路(IC)製造技術および関連するガス・化学品・設備技術、ヘテロジニアスパッケージング技術(ウエハーレベルパッケージング技術、シリコンフォトニクスパッケージング技術および関連する特殊材料および設備技術)。
  5. サイバーセキュリティー(3項目):チップセキュリティー技術、ポスト量子暗号保護技術、アクティブサイバーディフェンス技術。

引用:国家核心重要技術リストを発表、半導体や宇宙など5分野22項目が対象(台湾) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

 そのため、これらの技術を取り扱う企業では、共同開発、商取引、採用などの場面で、情報の取り扱いに注意を払う必要があります。

国家安全法の刑事罰

国家安全法の刑事罰は、スパイ行為、経済スパイ行為、国家核心重要技術の域外使用のいずれに該当するかによって異なります。

スパイ行為事案によっては、最低7年の懲役と、5000万台湾ドル~1億台湾ドル(約2億5000万~5億円)
経済スパイ行為5年から12年の懲役と、500万~1億台湾ドル(約2500万円~5億円)の罰金
国家核心重要技術の域外使用3年から10年の懲役と、500万~5000万台湾ドル(約2500万円~2.5億円)の罰金

今回の事件では国家安全法がどのように適用されたのか

今回の事件では、TSMCの2nmプロセス技術が国家核心重要技術の半導体分野に該当すること、TSMC元社員やTEL元社員の行為が、経済スパイ行為、若しくは国家核心重要技術の域外使用に該当するとして、国家安全法が適用されました。また、元社員の監督責任として、TELの子会社にも国家安全法が適用されました。

対策

国家核心重要技術を取り扱う台湾企業との共同開発や商取引などを行う場合には、機密事項の不正な取得や使用、漏洩に注意する必要があります。また、中途採用においては、競業他社からの転職の際に、機密事項が漏洩したりする可能性もあります。そのため、必要に応じて国家安全法の専門家に意見を聴き、適宜対応することが、必要になると考えられます。

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