BGM使用料に関する改正~歌手や演奏家にも影響

BGMの使用料とは
2026年6月17日、商業施設でCDやインターネット配信音源等(商業用レコード)を使用した場合に、BGMの使用料を歌手や演奏家、レコード会社が受け取ることのできる権利(レコード演奏・伝達権)を盛り込んだ著作権の改正が、参議院で可決・成立されました。
「著作権法の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決され成立しました
この制度の成立により、従来は作詞家や作曲家等の著作権者に支払われるBGMの使用料が、歌手や演奏家、レコード製作者にも支払われることになります。今回は、このレコード演奏・伝達権に関する改正点について解説します。
実演家とは
今回の改正で新たにBGM使用料を受け取る者として、歌手や演奏家等の実演家とレコード製作者が新たに加わります。
実演家は、著作権法上、俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者と規定されています(2条1項4号)。そして、実演家には、従前から、主に次の権利が認められています。
・録音権・録画権:実演の録音・録画を許諾する権利(91条)
・放送権・有線放送権:実演を放送や有線放送することを許諾する権利(92条)
・送信可能化権:インターネット配信を許諾する権利 (92条の2)
・譲渡権:実演を録音・録画したCDやDVDなどを、一定の範囲で譲渡することについての権利(95条の2)
・貸与権:商業用レコードなどをレンタルすることについての権利(95条の3)
・商業用レコードの二次使用料請求権:放送や有線放送で市販のレコードが利用された場合に、使用料を受け取る権利(95条1項)
レコード製作者とは
レコード製作者は、著作権法上、レコードに固定されている音を最初に固定した者と規定されています(2条1項6号)。そして、レコード製作者には、従前から、主に次の権利が認められています。
・複製権:レコードを複製することを許諾する権利(96条)
・送信可能化権:インターネット配信を許諾する権利(第96条の2)
・譲渡権:レコードを最初に公衆へ譲渡することを許諾する権利(97条の2)
・貸与権:商業用レコードなどをレンタルすることについての権利(97条の3第1項)
・商業用レコードの二次使用料請求権:放送や有線放送で市販のレコードが利用された場合に、使用料を受け取る権利(97条第1項)
諸外国の導入状況
諸外国では、142の国・地域で、実演家・レコード製作者のレコード演奏・伝達権が導入されています。そして、導入されている国では、店舗等が音楽CD等をBGMとして使用した場合、使用料を所定の団体に支払い、この団体から実演家・レコード製作者に使用料が分配されています。
改正の経緯
現状では、日本の商業施設において、商業用レコードを公の場で利用する場合、著作権者(作詞家・ 作曲家)には対価を支払う必要があるが、実演家やレコード製作者には対価を支払う必要のない制度となっています。
その一方で、WIPO(世界知的所有権機関)による条約では、商業用レコードが公の場で利用される場合において、実演家やレコード製作者が対価を請求することのできる権利(レコード演奏・伝達権)を導入することが求められているところ、日本はこの規定について留保をしています。
また、現状では、日本において実演家やレコード製作者のレコード演奏・伝達権について認められていないところ、国によっては、条約上の相互主義を適用することで、日本の商業用レコードを利用しても、このレコード演奏・伝達権に基づく対価を得ることができない場合があります。
そこで、このような状況を踏まえ、実演家やレコード製作者に対するレコード演奏・伝達権を創設することになりました。
改正の概要
改正の概要は、以下の通りです。
1.実演家及びレコード製作者の「レコード演奏・伝達権」の創設(95条の2、95条の3、97条の2、97条の3)
公の場で商業用レコードが利用された場合に、実演家やレコード製作者が、その二次使用料を受け取ることができる
2.レコード演奏・伝達権に係る指定団体制度の創設等(103条の2~103条の8)
① 上記1の権利について、文化庁長官が指定する団体がある場合には、その指定団体のみが権利を行使することができる。
② 指定団体は二次使用料の額等を記載した二次使用料規定の案を作成し、公示しなければならない。
③ 指定団体は、二次使用料規定の案について利用者代表から協議を求められたときは応じなければならないこととし、協議が成立しないときは、文化庁長官の裁定を求めることができる。
④ 指定団体は。③の協議の求めがなかったとき、又は協議が成立し、若しくは裁定があったときは、二次使用料規定を文化庁長官に届け出るとともに、公表しなければならない。
指定団体制度とは
指定団体制度とは、文化庁長官が指定する実演家又はレコード製作者の団体があるときは、個々の実演家やレコード製作者が店舗などから個別に使用料を徴収するのではなく、この団体が指定団体として権利を一元的に行使することができる、という制度です。
この制度は、上記の「実演家とは」及び「レコード製作者とは」で述べた商業用レコードの二次使用料請求権と同様の仕組みに基づいて、使用料を徴収する、という仕組みになっています。
二次使用料の決定までの流れ
二次使用料の決定までの流れは、文化庁長官の指定団体がある場合と、ない場合とで、次のように考えられています。
1.文化庁長官の指定団体がある場合
① 文化庁長官の指定団体になるためには、その指定団体が、国内において実演/商業用レコードの製作を業とする者の相当数を構成員とする団体であることが必要です。そして、指定団体となるためには、この指定団体が以下の条件を満たすことが求められます。
- 営利を目的としないこと
- 指定団体の構成員が任意に加入し、又は脱退することができること
- 指定団体の構成員の議決権及び選挙権が平等であること
- 権利者のためにその権利を行使する業務をみずから的確に遂行するに足りる能力を有すること
② 指定団体は、二次使用料の額等を記載した二次使用料規定の案を作成し、公示する必要があります。
③ 指定団体は、商業用レコード等の利用者代表から協議を求められたときは、応じなければなりません。協議に応じない場合には、文化庁長官による協議開始・再開命令となる場合があります。
④ この協議が成立しないときには、文化庁長官の裁定を求めることができます。
⑤ 指定団体は、1)この協議の求めがなかったとき、2)協議が成立し、若しくは3)裁定があったときは。二次使用料規定を文化庁長官に届け出るとともに、公表しなければならない。
2.文化庁長官の指定団体がない場合
このような場合については、原則として想定されていないと考えられますが、仮に、文化庁長官の指定団体がない場合には、レコード演奏・伝達権の権利者(実演家・レコード製作者)が自ら権利を行使することになります。
まとめ
実演家・レコード製作者のレコード演奏・伝達権の取り扱いについては、概ね商業用レコードの二次使用料請求権と同様になると思われます。そのため、利用者にとっては、今回の法改正による準備等は限定的なものになる可能性が高いと思われます。
また、施行日については、未だ決まっていないため、施行日が決まった段階で、改めてこの改正について理解する必要があると思われます。
特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。
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