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「吾輩は豚である」から始まる語が商標出願された話-iPTimes.-

(この記事は、2023年6月26日に作成したものです。)

こんな方に向けた記事です。
☆グルメな方へ
☆面白い商標出願に興味がある方へ

本記事のここがポイント!!

「吾輩は○○である」という文章から始まる有名な小説がありますよね。○○の部分には何が入るかわかりますか?
先日はこのタイトルのパロディ商標が出願されました。
今回はこの商標について詳しく見ていきましょう。

どんな出願?

今回出願されたのはこちらです。

商願第2023-8600号公報より

こちらの商標は2023年1月16日に出願人「東純一郎」さんにより出願されました。

この商標の商品カテゴリ(出願区分)は第29類で、指定商品は肉製品,食肉,カレー・シチュー又はスープのもとでした。

出願区分や指定商品はこの商標の出願人が、どんな商品やサービスでこのネーミング等を使いたくて出願したのかを知る手掛かりとなります。

骨が無い豚肉ってことでしょうか?
夏目漱石の「吾輩は猫である」をもじった面白いネーミングですね。つい笑ってしまいました。

こちらの語がいったい何なのか調べていると、その答えとなるSNSの投稿を見つけましたよ!

この投稿をInstagramで見る

仕出し・宴会 べにはな高鍋町(@beni.hana2020)がシェアした投稿

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仕出し・宴会 べにはな高鍋町(@beni.hana2020)がシェアした投稿

こちらは宮崎県児湯郡高鍋町で仕出し弁当などを販売している「べにはな」さんによる商品でした。出願人の東さんは、このお店の経営者なのかなと推測されます。

豚の軟骨、食べたことないけど美味しそう!

「吾輩は猫である」は商標登録されている?

では今回紹介したパロディ商標の元である、夏目漱石の「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」(引用:青空文庫)というフレーズの権利についてみていきましょう。

「吾輩は猫である…」はとても有名なフレーズですが、商標登録されているのでしょうか?

されていません。
一般的に書籍のタイトルは商標登録できないんです。

書籍のタイトルは、その書籍の内容(品質)を表すもので、登録できないのです。他にも商標の登録可否に関するルールはいくつかあり、特許庁のウェブサイトにも「出願しても登録にならない商標」として記載されています。

例えば書籍のタイトルのように商品の品質を表すため登録できない商標の例として、「シャツ」に使用する商標「特別仕立」が挙げられています。

では「吾輩は猫である」は小説だからこのフレーズは著作権で守られているんでしょうか?

たしかに小説には著作権が認められています。しかし亡くなってから長い年月が経っている夏目漱石の著作物は、著作権の保護期間が切れています。

日本では2023年現在、著作権の保護期間は死亡してから70年を経過した年の12月31日までです(著作権法第51条第2項)。

夏目漱石が亡くなったのは1916年ですので、彼の著作権はとうの昔に切れているのです(当時は保護期間が30年だったので1946年に期間切れになりました)。

なお、書籍のタイトルは「極めて短い表現」であり創作性が低いという理由で、一般的には著作権が認められていません。

では「吾輩は猫である」のタイトルや中身は、自由に使えるということ?

たしかに、商標権も著作権もない状態です。しかし著作権法第60条には著作者が亡くなった後についてこんな内容もかかれているので要注意です。

「著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。」(引用:著作権法 | e-Gov法令検索

つまり、著作権が切れていても、著者の名誉を損ねるような使い方や、(度合いによるけれど)「吾輩は猫である」の小説自体を話を変えちゃうとかはアウト!です。

ちなみに今回出願された「吾輩は豚である。骨はもうない。」の商標は、登録査定が出されていましたよ!

まとめ

著作権が切れていても、その作品に出てくる文言などはどんな使い方をしてもいいというわけではないことがわかりました。

今回紹介した商標のように、有名な小説の言葉を借りたパロディ商標は他にもありそうですよね。J-platpatで探してみるのも面白いかもしれません。

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