AIは発明者となり得るのか?割れる各国の判断!-iPTimes.-
(この記事は、2022年7月27日に作成したものです。)
こんな方に向けた記事です。
☆AIを開発に応用しようと考えている方
☆AIがした発明で特許権が取れるのか気になる方
☆AIの発明者適格について各国の判断を知りたい方
本記事のここがポイント!!
さまざまな分野でDXが進んでおり、製品開発の分野もAIが導入されています。もし、AIが発明したら、特許権は取得できるのでしょうか?日本だけでなく米国や欧州など外国の動向も調査しました!
AIも発明する時代?
皆さん、AIのビジネス利用と聞いて何を思い浮かべますか?
チャットボットやAmazonのレコメンド機能など様々ですが、対人サービスのイメージがありますよね。ただ最近は製品開発の分野にもAIが活用されており、新技術の開発にAIが貢献することもあるのです!
AI発明者としては「DABUS」(ダバス/ダブス)が一躍有名になりましたよね。
まずは、以下の国際公報(WO2020/079499A1)の発明者(Inventor)を見てください!
発明者には「DABUS」と記載があり、その後に「本発明は人工知能により自律的に生成された」との記載があります。つまり、本出願の発明者はAIのみなのです!
ちなみに、DABUSは「Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience」の略です。
AIが発明した技術とは、具体的にどんな内容なのか気になりますね!
例えば、食品容器の発明は以下のような形状となっています。筒状で中に液体などを入れるみたいです!
上記形状の容器を連結具なしで複数つなげることができ、熱伝導も良くなるようですね。
こんな発明をAIがやってしまうなんて驚きですね!
各国特許庁の判断
気になるのは発明者の審査上の取り扱いですね。AIは装置ですので特許権を持つことはできませんが、発明者としては問題ないのでしょうか?
AIが発明者として認められたら、発明のスピードが飛躍的に上がってしまうかも!?
我らが日本国特許庁(JPO)は、「AIを発明者と認めない」との方針をホームページで公開しました。公開された内容によると、「発明者は自然人に限られる」とのことです。
また、米国特許商標庁(USPTO)も同様に「発明者は自然人(individual)」という定義が米国特許法100条(f)にあるため、「AIは発明者に該当しない」という判断をしました。
欧州特許庁(EPO)も同様にAIを発明者と認めませんでした。
日本、米国、欧州が発明者と認めないのなら、もう決まりかな・・・
なんと、オーストラリアは「AIを発明者と認める」との見解を出しました!
上記結論はオーストラリア連邦裁判所(Federal Court of Australia)が出した結論ですが、オーストラリア特許庁長官は「AIを発明者と認めない」との見解でした。
その後、オーストラリア特許庁長官は上訴し、オーストラリア連邦裁判所の大法廷(Full Court)は第一審の判決を覆し、「AIを発明者と認めない」との結論に終わりました。
これらの結果を踏まえると、AIは発明者と認められないのが統一見解となりそうですね。
ただ、法律は社会の動きに応じて変わるものですので、今後もAIの発明者適格については注目したいですね!
参考URL
・発明者等の表示について(日本国特許庁)
・米国特許法100条(USPTO)
・AI cannot be named as inventor on patent applications: written decision now available(EPO)
・Commissioner to appeal court decision allowing artificial intelligence to be an inventor(IP Australia)
・Commissioner of Patents v Thaler [2022] FCAFC 62(FEDERAL COURT OF AUSTRALIA)
特許川柳・今日の一句
特許関係の仕事に従事して10年。5年間は特許事務所で500件以上の出願原稿の作成に従事。その後、自動車関連企業の知財部に転職し、500件以上の発明発掘から権利化に携わってきました。現在は、知財部の管理職として知的財産活用の全社方針策定などを行っています。
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