サステナブル経営における知的財産活動の在り方とは
2023年3月8日にKPMGがホームページで知的財産活動に関する記事を公開した。タイトルは「サステナブル経営に資する知的財産活動のポイント」で、サステナブル経営の重要性が増すなかで注目が集まる知的財産活動のポイントを全2回にわたり解説する。
2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂をきっかけに、知財・無形資産等の開示・ガバナンス強化の機運が高まっている。2022年1月には知財・無形資産の投資・活用戦略の開示およびガバナンスに関するガイドラインも公表された。各企業が知財・無形資産等の投資・活用とガバナンスを開示することで、投資家や金融機関との対話のきっかけを作り、さらなる無形資産投資の強化につなげ、企業価値の向上が促進される。
企業価値の向上に資する開示に向けた具体的な取組みにあたっては、KPMGの知財活用フレームワークに基づいて、可視化、ストーリー、知財戦略、体制・ガバナンス、ステークホルダーコミュニケーションを進めることが考えられる。フレームワークの詳細は後日Part2にて解説予定だ。
サステナビリティの推進によって生まれる「リスク」と「チャンス」
サステナビリティの推進とともに、環境負荷が大きい既存技術は代替技術へ段階的に置き換わると想定される。既存技術において競争力を有する企業にとってリスクになる一方で、新規参入者にはビジネスチャンスになる。そのため、サステナビリティ関連技術を他社に先駆けて特許化して独占し、または、オープン・クローズ戦略のもとで、自社のコントロール下に置きつつ活用することは、市場における競争優位の形成にとって重要になる。
このように経営戦略・事業戦略と関連させながら積極的な権利化方針を含む知財戦略を立てることで、他社に先行してサステナビリティ関連技術の確保が可能になり、“稼ぐ力”に直結する権利持続可能な企業活動に資する知財活動を行うことができる。
また、株式・債権市場における自社の企業価値向上を考えるうえで、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点は無視できない。無形資産の重要性が認識されるなかで、機関投資家を中心に、さまざまな角度から知財を評価する動きも見られている。
知財を投資評価軸に活用する事例も増えてきており、投資家との関係における知財の重要性が増している。
知財活用に必要な「社内の取り組み」
ステークホルダーに向けた知財・無形資産の開示は、通常は知財部門のみが単独で負うことは難しく、経営企画部門・IR部門・サステナビリティ推進部門・研究開発部門・事業部門などと連携して行うことが求められる。部門間のシームレスな連携を実現するためには、トップ層による指揮・監督が重要となる。
知財活用に向けた体制・ガバナンスが機能するためには、仕組みだけではなく社内の意識向上・風土の醸成も不可欠となる。社員意識の向上や風土の醸成には、社内研修などによる周知・浸透施策が有効である。自社の知財戦略や自社が保有する知財を丁寧に可視化し、個々の知財が事業において実際にどのように活用されているのかを、社内研修やパテントカタログなどを通じて、社内向けにも開示し浸透させることで、知財活用の土壌を作ることが考えられる。
本記事ではサステナブル経営が重要視されることにより、企業の知財活動が単に競合との関係だけでなく、ステークホルダーとの関係にも波及していることが述べられている。
これからの知財部は、経営や事業と結びつき戦略を立案し、さらには社内風土も醸成していく必要が出てくるため、本記事を参考に企業における知財部の在り方を考えたい。
参考
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2023/02/sx-intellectual-property.html
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https://tokkyo-lab.com/chizai/iptimesnews1
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特許関係の仕事に従事して10年。5年間は特許事務所で500件以上の出願原稿の作成に従事。その後、自動車関連企業の知財部に転職し、500件以上の発明発掘から権利化に携わってきました。現在は、知財部の管理職として知的財産活用の全社方針策定などを行っています。
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