標準必須特許 ライセンス交渉のポイント(8)全く同じ条件とすべきか?
2023年3月2日の日刊工業新聞で標準必須特許(SEP)に関する連載記事が公開された。
これまでの連載でSEPの特許権者は、標準化団体に対してSEPを公平、合理的、かつ非差別的な条件(FRAND条件)で他者にライセンス供与する旨を宣言することが一般的であると説明されてきた。
今回はFRAND条件のうち非差別性の側面が説明されている。ポイントとしては、同様の状況に置かれた他のライセンス交渉における条件と比べて差別的なものとならないようにすることである。
FRAND宣言しているSEPの特許権者は、その宣言に従い、非差別的なライセンス条件を提示することが求められる。全ての潜在的なライセンシーに対して同じ条件でライセンス供与すべきことを意味するものではなく、状況が異なるライセンシーに対して異なる条件でライセンス供与することは差別的ではないという意見がある。
例えば、同じ特許をライセンスする場合でも、「高信頼性、低遅延が求められる製品」と「低コスト化、小データ容量が求められる製品」とでライセンス条件に差を設けることは、差別的ではないとの主張がある。
ドイツや英国の判例では、全てのライセンシーに対して同じ条件を適用する必要はないと示されている。しかし、特許権者は、異なるライセンス条件を適用する場合には、個々のライセンス交渉の置かれた状況を踏まえて、そのライセンス条件が、同様の状況に置かれた他のライセンス交渉における条件と比べて差別的なものとならないようにすることが求められる。
近年、IoTの発展に伴い、情報通信技術は多様な業種で利用されている。
例えば、自動車にも通信技術が取り込まれていくことで、完成車メーカーだけでなく部品メーカーも標準必須特許を使わざるを得ない状況になると考えられる。そのような場合に、どのようなライセンス条件が妥当か判断するためにも、本連載を参考にしていきたい。
参考
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00665166
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特許関係の仕事に従事して10年。5年間は特許事務所で500件以上の出願原稿の作成に従事。その後、自動車関連企業の知財部に転職し、500件以上の発明発掘から権利化に携わってきました。現在は、知財部の管理職として知的財産活用の全社方針策定などを行っています。
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