審判件数から考える小林製薬の商標出願戦略-iPTimes.-
(この記事は、2023年1月6日に作成したものです。)
こんな方に向けた記事です。
☆企業の知財担当者の方
☆小林製薬の出願戦略を知りたい方
本記事のここがポイント!!
アスタミューゼ社が運営する「商標審決データベース」の請求人別審判件数ランキングによれば、小林製薬の審判件数はトップでした!
今回は小林製薬の審判件数から、同社の商標出願戦略を探っていきます。
審判件数ランキングを見てみよう!
「商標審決データベース」の請求人別審判件数ランキングは、以下の通りです。
小林製薬の審判件数は、なんと626件です。2位のロート製薬に倍以上の差をつけていました。
審判の種類を見ると2022年審決日の23件中22件が、「識別力欠如」を理由とする拒絶査定に対する拒絶査定不服審判でした。
この「識別力欠如」を理由とする拒絶査定の割合の高さから、小林製薬の出願戦略を探っていきます。
小林製薬の「いい」商標
以下の記事では、小林製薬の「いい」商標について紹介しています。
この記事において「いい」商標であるための1つの条件は、「商品の用途などを「なんとなく」想像できる」こととされています。
また直接的・ストレートすぎる名前は識別力が無く登録できないため、「いい」商標とは言えないとの言及もありました。
これについて特許庁の「商標審査基準」では、「商標が、商品又は役務の特徴等を間接的に表示する場合は、商品又は役務の特徴等を表示するものではないと判断する。」との記載があります。
つまり商品などの内容を間接的にあらわした商標は、「いい」商標と言えます。
この点、小林製薬は「瞳爽快」や「ごくやわ」など、識別力が弱そうにも思える商標を出願する傾向があります。
「瞳爽快」と「ごくやわ」の商標は、審査では識別力がないことを理由に拒絶査定となりました。しかし、その後の拒絶査定不服審判で判断をくつがえし、登録査定を勝ちとっています。
多くの出願が「識別力欠如」を理由に拒絶査定を受けるということは、識別力が有るか否かのギリギリのラインを狙って出願をしているというひとつの戦略が見えてきます。
小林製薬の審判件数はなぜ多い?
拒絶査定不服審判の請求は、1件あたり最低でも55,000円の特許庁費用がかかるため、決して安いとは言えません。
それにもかかわらず小林製薬は、なぜ多くの審判請求を試みるのでしょうか。
この点「特許行政年次報告書2022年版」によると、2021年の拒絶査定不服審判の成功率(請求成立率)は約57%、2020年は約75%、2019年は約66%と成功率の高さがうかがえます。
小林製薬は成功率の高さを踏まえ、拒絶査定不服審判を請求をして「いい」商標の登録を狙っているのかもしれません。
まとめ
今後も小林製薬の「いい」商標の出願は続くでしょう。
小林製薬の審判動向を確認するときは、「商標審決データベース」を活用してみてください。
知財業界歴10年。 都内大手特許事務所勤務を経て、現在は一部上場企業の知財職に従事。 知財がより身近に感じる社会の実現に貢献すべく、知財系Webライターとしても活動中。
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