「酒場放浪記」という語が商標出願された話-iPTimes.-
(この記事は、2023年3月26日に作成したものです。)
こんな方に向けた記事です。
☆美味しいものが好きな方へ
☆面白い商標出願に興味がある方へ
本記事のここがポイント!!
突然ですがテレビ番組の「酒場放浪記」ってご覧になったことありますか?
先日、こちらの番組タイトルが商標出願されていたんです。
今回はこの商標出願について詳しく見ていきましょう。
どんな出願?個人がTV番組の出願?
今回出願されたのはこちらです。
こちらのTwitterアカウントは、最近出願された商標を呟いて教えてくれるアカウントです。「酒場放浪記」といえば、ライターなどマルチな活躍をされている吉田類さんが、全国の酒場を吞み歩く人気番組です。
しかしこのTwitterの情報だと出願人は個人になっていますね。出願人の安原正之さんとは、いったい誰なのでしょうか。ネット検索してみてもそれらしき人物は浮かんできませんでした。そこで特許庁の検索サイトJ-platpatで商標出願番号(2023-4334)を入力して検索してみると、こちらの商標の出願人は「株式会社BS‐TBS」になっていました。
あれ?Twitterの情報が間違っているのでしょうか。
もっと詳しく知るためにこの商標の「経過情報」を見てみました。すると、「手続補正指令」がでており「手続補正書(方式)」が出願人から提出されていたことが分かりました。
手続補正書では以下の通り、出願人が変更されていました。
【変更前】
【変更後】
一見、変更前も後も出願人はBS-TBSさんだよ?と思うかもしれませんが、よくみると【識別番号】という欄の数字が変更されていることがわかりますね。
識別番号とは、手続をする者1人に対し特許庁長官が1つ付与する9桁の番号です。識別番号ごとに、住所(居所)や氏名(名称)等が登録されます。そのため、出願書類などの提出書類に識別番号を記載すれば、その番号から効率よく本人確認ができるというわけです。
初めての出願のためにまだ識別番号を付与されていない場合は、「識別番号付与請求書」を特許庁長官に提出して番号をもらう必要があります。また識別番号の付与後に住所などを変更したいときは、変更届を提出すれば出願係属中の案件すべてで変更されます。詳しくはこちらに記載されていますのでご覧ください。
さらにJ-platplatで検索を進めていくと、今回の出願人の謎は、手続補正前の識別番号がカギを握っていることが分かりました。補正前の識別番号は、実は代理人「安原正之」さんに与えられた番号だったのです。この補正前の識別番号からTwitter上(商標速報botさんのつぶやき)で「出願人」が自動作成され、あたかも安原さんが出願したかのように投稿されたものと推測されます。
なぜBS-TBSさんが誤った番号で提出したのかは分かりませんが、この出願が第3者によるものではないと分かり安心しました。
出願区分は?出願意図は?
今回出願された商標の商品カテゴリ(出願区分)は、第35類(化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供ほか),第41類(放送番組を内容とする娯楽の提供ほか)などでした。
出願区分はこの商標を出願した会社が、どんな商品やサービスでこのネーミング等を使いたくて出願したのかを知る手掛かりとなります。
BS-TBSのウエブサイトには「番組グッズ」を紹介するページがあり、そこに掲載されている情報によれば、これまでの放送内容が収録されているDVDやサウンドトラックCDが販売されているようです。しかし出願区分にみられるような化粧品などはまだ販売されていないようでしたので、新しいグッズ販売のために今回は新たに商標出願したのかなと推測されます。
またこの出願人は、同日に出願区分の同じ以下の商標も出願していました。いずれの出願も「酒場放浪記」商標と同様に出願人の識別番号を補正した形跡がありました。
いずれもBS-TBSさんの人気番組ですね。これらの番組の新しいグッズも発売されるということなのでしょうか。とても気になります。
特に「町中華で飲ろうぜ」については以前私の書いたこちらの記事でもほんの少し触れています。ぜひご覧くださいね。
まとめ
さて、今回紹介した「酒場放浪記」などの商標たちは出願されたばかりで、その登録の可否についての審査はまだ始まっていないようです。
今後、これらの出願が登録になったかどうか知りたい方はJ-platpatをこまめにチェックしてみると良いかもしれません。
特許事務所で6年間勤務。明細書作成や中間処理に従事。翻訳の仕事も請け負ってきました。元々はデザイン系専攻でして、図面を作成するのが一番楽しい時間です。現在はフリーで活動中。
あなたの技術に強い弁理士をご紹介!