ユニークで喜ばれそうな敬老の日プレゼント【身近な知財】
敬老の日のプレゼントとしては、日用品や食べ物、旅行など、いろいろあります。
なかには高齢者の方でも使いやすいように、など、様々な工夫を凝らしている商品もたくさんあります。
そんな工夫・新しさ=知財はどんなものがあるのか。今回は、そんな敬老の日のプレゼントに関する知財を紹介します。
半纏の特許
敬老の日のプレゼントとして、はんてんが販売されていました。このはんてんですが、広告に「特許取得」と書かれています。
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そこで、半纏についてJ-PlatPatで検索したところ、次の2件の特許が発見されました。いずれの特許も、特許権者は、桑野新研産業株式会社です。
- 特許第6032718号
- 特許第6410306号
特許第6032718号はどんな発明?
特許第6032718号は、発明の名称を「綿入れ袢纏およびその製造方法」とする特許です。平成28年11月に特許権の登録がなされ、現在も権利存続中です。そして、この特許は、以下のa)からc)の課題を解決する特許です。
a)背側や袖口の裏地の外面に縫い目が表れないようにしながら、中綿と裏地の一体化を充分な強度で行う
b)仕上げの手間を軽減する
c)使用に伴う中綿のずれや偏りを防止する
また、この特許では、綿入れ袢纏の製造方法の発明として、次の発明が権利化されています。
「背側の裏地(10,20)の中央の左右身頃部の継ぎ合わせ部(900)における該継ぎ合わせ部(900)同士の縫い付けと、前記継ぎ合わせ部(900)に対する中綿(6)の縫い付けを、各々を重ねた状態での同時縫製により、背側の全高にわたり連続的に行う工程を備える綿入れ袢纏の製造方法。」
そして、この特許の公報には、この特許を取得した袢纏の製造方法が、次のように示されています。
①シート状の綿を長方形状に切断して、中綿(6)を作製する。
②右身頃部の裏地(10)と左身頃部の裏地(20)を、オモテ面同士が接するように重ね合わせ、後ろ部(101、201)の裾側の先端縁が中綿(6)の折り合わせ部(60)に一部重なるように載置する。
③継ぎ合わせ部(102、202)同士の縫い付けと、継ぎ合わせ部(102、202)に対する中綿(6)の縫い付けを、各々を重ねた状態で縫い付け部(900)によって同時縫製することにより、背側の全高にわたり連続的に縫い付けを行う。
④縫い付け部(900)の位置を折り目として、左身頃部(2)を外側に開き、中綿6に合わせる。
特許第6410306号
特許第6410306号は、発明の名称を「半纏」とする特許です。平成30年10月に特許権の登録がなされ、現在も権利存続中です。
そしてこの特許は、結び紐を結んだときに、左右の前身頃部同士を合わせないスタイルと、前身頃部同士を合わせるスタイルの、両用の着用スタイルを使い分けることができる、という課題を解決する特許です。
またこの特許では、次の発明が権利化されています。
後ろ身頃部(1)、左前身頃部(2)、右前身頃部(3)、衿部(4)、および左袖部(5)、右袖部(6)を有する半纏であって、前記左前身頃部(2)の前記衿部端縁の所要箇所に設けられている第1の結び紐(20)と、前記右前身頃部(3)の前記衿部端縁の所要箇所に設けられている第2の結び紐(30)と、前記左前身頃部(2)と前記右前身頃部(3)において、少なくとも前記右前身頃部(3)に設けられているポケット(31)と、前記右前身頃部(3)に設けられている前記ポケット(31)の入口近傍に基端部を固定して設けられている第3の結び紐(33)とを備えており、該第3の結び紐(33)が、前記ポケット(31)の縫着部(310)で一緒に右前身頃に固定されている、半纏。
そしてこの半纏は、左前身頃部(2)の第1の結び紐(20)と右前身頃部(3)の第2の結び紐(30)を結び、使用しない第3の結び紐(33)をポケットに収容することで、左右の前身頃部(2,3)同士を合わせない、半纏の一般的なスタイルとして使用することができます。
また、左前身頃部(2)の第1の結び紐(20)と、右前身頃部に設けられているポケットの入口近傍にある第3の結び紐(30)を結ぶことで、右前身頃部に左前身頃部の一部を重ねるように合わせた、いわゆるダブルの上着あるいは作務衣のようなスタイルとして使用することもできます。
ケーキの意匠
お祝い事のときに必ずといっていいほど登場するものといえば、ケーキがあるでしょう。
今回は、ケーキを意匠権で保護している事例(意匠登録1644634号)を紹介します。
意匠権といえば、机やいす、工業製品などを保護するための権利としては知られていますが、ケーキなどの食物については、なじみの少ない方もいるかもしれません。
引用:J-PlatPat
このケーキの意匠は令和元年10月に登録されており、現在も権利存続中です。本件は、他のショートケーキに類似しているとの判断がなされずに登録されています。そのため、この意匠権の権利範囲は、比較的狭いと考えられます。
また、この意匠権の権利者は山豊テグス株式会社です。山豊テグス株式会社では、「白苺」と「あまおう」を使用した「プレミアム白苺」ショートケーキを「パティスリー洛甘舎」にて販売しており、このショートケーキを意匠権で保護しています。
ちなみにテグスを作っている会社がなぜケーキ屋を営んでいるかは、プレスリリースにて事情が説明されていました。
洛甘舎について
全く畑違いの「釣糸」製造業から、2015年8月に新事業部として、京都の真ん中にケーキ店をオープンしました。弊社代表取締役の母方の祖父が、京都で洋菓子の製造と販売店をしていましたが、後を継ぐ方が無くとっくに廃業していましたが、亡くなった母親の言葉を思い出し、準備期間1年を経て、「パティスリー洛甘舎」をオープンした次第です。
引用:逆転の発想が冴える、「プレミアム白苺」ショートケーキが新発売。|パティスリー洛甘舎のプレスリリース (prtimes.jp)
包丁研ぎ器の特許
次に「包丁研ぎ器」の特許を紹介します。この包丁研ぎ器も、広告に「特許取得」と書かれています。
この「庖丁研ぎ器」の特許(特許3991158号)は、平成19年8月に登録されましたが、令和3年8月に特許権は消滅しています。この特許は、次の課題を解決するための特許です。
a)対向する両砥石(1,3)の傾斜面部間(2,4)のV形状をした挿入部(9)の角度を30度前後(従来は90度)と著しく狭くすることによって、庖丁(16)の左側面を砥石(3)の傾斜面部(4)に押し付けると共に、右サイドの研磨砥石の傾斜面部(2)に庖丁(16)の右側面の刃先部分を押し付けることで、切れ味の良好な庖丁研ぎをできるようにした。
b)V形状の挿入部(9)に挿入した庖丁(16)の厚さに応じて、庖丁(16)の左右両側面部を押える2つの押え部(21,21)をスライド自在に装着し、家庭の主婦等素人の方でも極めて確実に庖丁(16)を押えつけながら往復運動をさせるだけで切れ味が良好な庖丁等刃物を研ぎ上げることができる。
新規性喪失の例外
特徴的なこととして、本特許は新規性喪失の例外の適用を受けています。
この庖丁研ぎ器の出願は平成16年1月5日ですが、平成15年7月4日の「越後ジャーナル」ですでに商品発表されていて、新規性を喪失しています。そのためこの適用を受けなければ、自ら発表した記事に基づいて、新規性や進歩性違反となり、特許を受けられなくなる可能性がありました。
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温泉の商標
温泉には、地域の名称を用いた温泉が多数あることは周知の事実でしょう。そして、このような「地域の名称」と「温泉」とを組み合わせた商標は、地域団体商標として保護されています。
下呂温泉
下呂温泉は、岐阜県下呂市にある温泉で、日本三名泉のひとつとしても有名です。そして、この下呂温泉は、地域団体商標として2件の登録を受け(商標登録第5010201号、5089421号)、さらに、通常の商標として1件の登録を受けています(商標登録第5562977号)。商標権者は、いずれも下呂温泉旅館協同組合です。
地域団体商標とは
地域団体商標とは、地域ブランドとして用いられることが多い「地域の名称」と「商品(サービス)の普通名称」との組み合わせからなる商標について、一定要件のもと、商標登録を認める制度です。
「地域の名称」と「商品(サービス)の普通名称」との組み合わせからなる商標は、通常、ブランドとしての識別性が生じないと判断されるため、全国的な周知性を有しない限り登録されません。
しかし地域団体商標として出願した場合には、地域ブランドを保護するという観点から、ある程度の周知性を有していれば登録が認めれらます。
ただし地域団体商標を出願できるのは農業協同組合、漁業協同組合等の所定の組合や、商工会議所などに制限されています。
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特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。
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