Menu

製造業の特許の取り方!製造装置を例に解説します!

製造業 特許

製造装置は自社のノウハウが詰まっているので、ぜひ特許権として押さえときたい、と思いますよね。しかし、何も考えず特許出願すると後悔するかもしれません。

今回は、権利行使やノウハウ流出を考慮した製造装置の特許の取り方について解説します。

<この記事でわかること>
・製造装置の特許とは
・ノウハウ流出に配慮したクレームの書き方
・製造装置を特許出願する意義

(執筆:知財部の小倉さん

製造装置の特許とは

製造装置は工場の中で使用される装置で、製品を作るためのものです。この製造装置の特許は、発明のカテゴリで言うと物の発明です。具体例としては、ベルトコンベア・加工ロボット・半導体製造装置などです。

製造装置の権利範囲

物の発明ですので、製造装置の使用、生産、販売等を勝手にやると権利侵害になります。もし、あなたの会社が製造装置メーカーであれば、ライバルメーカーに対して権利行使することとなるでしょう。例えば、製造装置のクレームは以下のようなものです。

【請求項1】
  フローティングゾーン法を用いたシリコン単結晶の製造装置であって、
  シリコン原料素材を加熱して得られた溶融帯域を凝固させてシリコン単結晶の成長を行う機能を有し、略円環状の下面の外縁が当該下面の内縁よりも下側に位置する形状に形成された誘導加熱コイルと、
  前記溶融帯域にドープガスを吹き付けるドープガス吹付手段と、
  前記溶融帯域における前記ドープガスの供給位置よりも下方の外周部に冷却ガスを吹き付ける冷却ガス吹付手段とを備えていることを特徴とするシリコン単結晶の製造装置

→参考:特開2019-089668

製造方法とは異なる

製造装置で製造したものも権利に含まれると誤解しがちですが、製造したものは権利範囲外です。このような誤解をしてしまうのは、製造方法の特許の権利範囲がその方法の結果物を含むからでしょう。製造方法が新規であれば、その結果物も新規であるという考え方ですね。

製造装置のクレームの書き方

ノウハウ流出に気をつける

通常、工場の中に入らなければ製造装置を目にすることができないため、競合にとっては技術課題や解決策を学ぶいい教材となります。自社の機構や製造手順などのノウハウが漏れないよう詳細を書きすぎず、技術的な概念として発明を抽出しましょう。ノウハウとして注意すべきなのは、部品のサイズ・機構・内部動作などがあります。

機構やサイズが分かる図面は注意!

構造や動きに特徴がある発明の場合、構造をそのまま載せるのは止めましょう。製造装置となると複雑な機構を採用していると思いますので、特許図面を一から作成するのは無理です。ただ、そのままの図面を載せてしまうと、競合が容易にコピーできてしまいますので、実施品を簡略化した図を作成しましょう。

製造方法のクレームも追加する

製造装置に採用されている処理手順に特許性がある場合、製造方法のクレームも独立請求項で追加すると良いでしょう。製造方法のクレームであれば、その方法で製造した物にも権利行使できます。

先ほど紹介した特許の例において、製造装置と製造方法のクレームを併記すると以下のようになります。

【請求項1】
  フローティングゾーン法を用いたシリコン単結晶の製造装置であって、
  シリコン原料素材を加熱して得られた溶融帯域を凝固させてシリコン単結晶の成長を行う機能を有し、略円環状の下面の外縁が当該下面の内縁よりも下側に位置する形状に形成された誘導加熱コイルと、
  前記溶融帯域にドープガスを吹き付けるドープガス吹付手段と、
  前記溶融帯域における前記ドープガスの供給位置よりも下方の外周部に冷却ガスを吹き付ける冷却ガス吹付手段とを備えていることを特徴とするシリコン単結晶の製造装置

【請求項6】
  フローティングゾーン法を用いたシリコン単結晶の製造方法であって、
  シリコン原料素材を加熱して得られた溶融帯域を凝固させてシリコン単結晶の成長を行う機能を有し、略円環状の下面の外縁が当該下面の内縁よりも下側に位置する形状に形成された誘導加熱コイルを用い、
  前記溶融帯域にドープガスを吹き付けるとともに、前記溶融帯域における前記ドープガスの供給位置よりも下方の外周部に冷却ガスを吹き付けて、前記外周部を冷却しつつ前記シリコン単結晶を成長させることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法

→参考:特開2019-089668

ただし、製造装置の内部処理(ソフトウェア)に関する特許は、処理結果が外部から見えるものであればクレームに追加してもよいと思いますが、外部から見えない場合にはクレームや明細書に詳しく記載しないほうがよいでしょう。ノウハウの流出するだけで権利行使の難しい権利となります。

製造装置の特許を取る意義

それでは、権利行使のしづらい製造装置を出願・権利化するメリットはあるのでしょうか?以下の3点において、製造装置の特許を取る理由があります。

他社の権利化阻止

どの特許出願もそうですが、出願から1年6か月後に公開されます。そうすると世の中の公開技術となり、同じ内容を特許出願しても登録することはできません。

製造装置などの生産技術に関わる発明はノウハウの公開となるので自社特許を出しづらい分野ですが、他社はたくさん出願してくることがあります。そのような場合には、多数の他社の登録特許を避けながら自社開発を行わなければならず、他社特許対策に追われて大変です。そこで、自社もノウハウを公開しない程度に特許を出願していくのが得策と言えます。

販売先での複製防止

製造装置を販売した後に、別の装置メーカーに同じものを安く作られると、自社としてはたまったものではありません。そこで特許取得済みであることを顧客に伝えて、複製を行わないよう牽制するためにも製造装置の特許を取ることが望ましいです。

海外子会社への導入

製造拠点としての海外子会社に製造装置を売ることがあります。さらに製造装置を使うための支援をし、支援費用を日本の親会社が海外子会社からもらうという構図です。このような場合、製造装置に特許があると支援費用にノウハウを上乗せして増額の根拠とすることもできます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?製造装置は製造方法とは似ているものの、物の特許であるために権利範囲が製造方法の特許とは異なり、権利行使できる状況も限られていました。また、出願公開によってノウハウの流出とならないか注意する必要があります。

知財タイムズで製造装置の出願経験が豊富な弁理士を見つけて、ノウハウの保護や他社特許の調査などを相談してみましょう。まずはこちらから問い合わせください。

完全無料で事務所選びをサポートします
まずはお気軽にお問合せください!

特許の取得は弁理士に相談!
あなたの技術に強い弁理士をご紹介!