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協和工業、独自の営業活動でオリジナル商品を開発!

今回は脱下請けの事例として「協和工業株式会社」(以下、協和工業)を紹介します。協和工業はOEM事業をおこなっていましたが、顧客が海外生産へシフトしたことで受注が減少しました。これを機に自社ブランドを立ち上げ、オリジナルの開発製品を知的財産で保護できる体制を整えました。

中小企業が下請けから脱出するための事業戦略や知財体制の構築方法など、協和工業の事例を通して学んでいきましょう。

<この記事で分かること>
・海外メーカーとの役割の違いからニッチ市場を開拓
・顧客ニーズを具体化し、知財権としても保護する
・知財有識者のサポートを受けて活動を加速させる

(執筆:知財部の小倉さん

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市場の変化を察知して自社ブランドを立ち上げ

協和工業の事業背景や自社ブランドの開発戦略は、財団法人 滋賀県産業支援プラザが発行する「うちでのこづち Vol.48」にも紹介されています。

OEM需要が海外にシフトしたことがきっかけで自社製品を開発

協和工業は1961に設立され、顧客ブランドの水道用バルブを製造する、いわゆる下請けの会社としてOEM事業をおこなってきました。製品を販売するのは顧客なので、協和工業は効率よく、安価で、高品質の製品をいかにして作るかということに注力してきました。

しかし、バブル崩壊後は低価格製品が海外で生産されるようになり、協和工業のOEMとしての受注が減少してきました。そこで、今までOEMとして培ってきた技術力をもとに、水道用バルブに特化せず製品開発を行うことを決め、お客様の声を聴くことから始めました。

OEM事業で培った技術と顧客ニーズを具現化することで差別化

大手メーカーの大量生産品は海外で安く作って販売するという時代の流れがありました。そこで、協和工業は自分たちが市場で生き残るために、「高品質を要求される顧客のニーズに合った商品を作っていく」という戦略をとりました。市場規模は小さいですが、ニッチ商品を開発していくことに活路を見出して自社オリジナル製品を開発しました。

具体的には、顧客が不満に感じているものや「あればいいな」と思っているもので、他に無いものを作ろうと決めました。最初は試行錯誤で、インターネットで販売できるものとしてマリン関連製品を作成したり、異業種交流会に参加して介護用具を制作するなどしました。最終的には、営業と市場調査を同時に行い、その結果をもとに研究開発をする他社と差別化されたスタイルが確立されました。

「お客様の声を、カタチに」という新たな発想を知的財産権で保護

協和工業は自社ブランド「KIC」を立ち上げてから、知的財産権を重要視し始めました。詳細な知財活動の内容については、特許庁発行の「知的財産権活用企業事例集2016」でも紹介されています。

顧客ニーズから生まれたオリジナル製品の具体例

協和工業のオリジナル製品である排気弁付の水道用地下式消火栓は、「過剰性能の急速空気弁付地下式消火栓は要らない」、「適材適所の地下式消火栓が欲しい」との声を受けて開発されました。

また、作業効率を考えて生まれた業界初のカムレバーロック式急速空気弁「カマンエア」は、レバー操作で簡単にメンテナンスできる空気弁として、「簡単に分解ができるもの」「分解しなくても作動の良否判定ができるもの」との要望に応えた製品で、今では450もの市町村と取引を行っています。

さらに、自治体などへの公共市場だけでなく、一般市場向けの製品として「家庭用マイクロバブル発生装置」を開発しました。既存の装置では動力を使って泡を発せさせているものを、動力を使わず、安価で小さな装置にしたものです。シャワーなどに取り付けるほか、美容面やペット用品、玩具など、家庭用の広い分野で利用できます。

このように協和工業では、顧客の声を可能な限り実現する製品を開発すること、すなわち「お客様の考えを形にする」を理念に、今までに無い発想の製品づくりを行っています。得意分野である水道弁栓類と消防関係、それにマイクロバブルが加わり、「水」に関連した3つの柱で事業に取り組んでいます。

自社ブランドの立ち上げを機に知的財産の重要性を意識

協和工業は自社ブランドの立ち上げを機に、顧客に対する信頼性の向上のためにも、知的財産の重要性を意識するようになったと「知的財産権活用企業事例集2016」で述べています。

まず、中小企業向けに特許庁費用の減免措置支援制度などを活用して、先行技術調査や競合他社の製品を調査しながら、権利取得・知財管理に力を入れました。例えば減免措置を活用すれば、審査請求料(約15万円)が 1/2に軽減されたり、特許料(第1年分から第10年分、約30万円)が1/2に軽減されたりします。

また、長年電機メーカーの知財担当者であった者を非常勤顧問として迎え入れることができ、特許の分割出願や意匠・商標出願など、知財全般で戦略的アドバイスを受けながら、効果的に権利化できるようになりました。

協和工業の事例から学ぶこと

自社の強みを生かした開発戦略を立て、知的財産として保護しましょう

協和工業は時代の流れを読み、大量生産品は海外メーカーに生産がシフトしていくと予測して、日本企業として顧客のニッチなニーズを満足させるという市場を取りに行く戦略を立てました。

そして、顧客に密着してニーズを察知し、顧客に受け入れられるものをオリジナル製品として提案することに成功し、成果である技術を特許で保護しています。これによって海外メーカーが模倣できないようにしています。

さらに、自社ブランド立ち上げに際して、ロゴなどを商標で保護し、製品デザインを意匠で保護するなど知財ミックス戦略をとることで、多面的な保護が可能となります。このような多面的な保護により、知的財産の穴をなくすことができます。特許を取っても、類似の商標を取られてしまうと自社製品のリリースができなくなってしまいます。

非常勤顧問など有識者にサポートを受けて知財活動を加速しましょう

知財部を今から作る場合、有識者に入ってもらうのが良いです。職務発明規定などの整備が不十分だと、従業員からの訴訟リスクを抱えてしまうことにもなりかねません。社外との差別化のために知的財産権を取得するつもりが、社内の調整に予想外の時間とお金がかかってしまいます。

協和工業は、タイミングよく元電機メーカーの知財部員を顧問に迎えることができたので、社内で相談や連携することで知財活動の基盤整備がうまく進められたのではないでしょうか。

まとめ

協和工業の場合には、運よく元電気メーカー知財部員を採用することができましたが、採用活動も相手のあることですので難しいかもしれませんね。

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