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【セカイチ知財-Vol.3-】特許はいつ取得すれば良い?

世界一分かり易い知財戦略

世の中は知財に対する迷信や誤解で満ちています。

誤解したままで知財に注ぎ込むお金は無駄金です。

「セカイチ知財」は名古屋に事務所を構えるブライテック特許事務所が、知財戦略を世界で一番分かり易く解説します。

「世界一分かり易い知財戦略(セカイチ知財)」を読んでいれば、知らない間に正しい知財戦略をイメージできるようになります。

(文責:ブライテック特許事務所所長 弁理士三林大介)

Vol.2のおさらい

第2話では、「良いネーミングであっても商品を売り出す時点では未だ商標を出願する必要は無い。

商標の出願を考えるのは、そのネーミングを付けた商品で儲けが出そうになってからで十分だ」というお話をしました。

今回は特許の場合はどうなのかという所を詳しく解説していきます。

特許の取得を考えるべきタイミング

特許の場合は少し商標と話が違います。その理由は、特許法に

「世の中で発明者以外には誰も知らないアイデアでなければ、特許にすることが出来ない(つまり、自分で売り出した後だと、他人がアイデアに気付いてしまうので特許にできない)」

と言う意味の規定があるからです。

ですから、特許も商標と同じように考えて、(特許出願する前に)そのアイデアを使った商品を発売すると特許が取れなくなってしまいます。

ここが、特許の場合の難しさです。

すなわち、特許を取る目的は、アイデアを使った商品によって生み出される儲けを守ることですが、実際に商品が儲けを生み出すよりもかなり早い段階で特許出願しておかなければならないのです。

このため大企業の場合は、アイデアが生まれたら、とにかく片っ端から特許出願しておくのが普通です。

また、この点は誤解されている向きが多いのですが、特許を1つ取っただけでは実際には儲けを守ることはできません。

儲けを守るためには、幾つもの特許を取得する必要があります。

これらの理由から、大企業には1年間に1000件単位で特許出願する会社がゴロゴロと存在するのです。

しかし、規模の小さな会社が同じことをする訳には行きません。そこで、規模の小さな会社には、次のような方法をお勧めします。

[第1段階](アイデアが生まれた段階)

先ず、アイデアが生まれたら、そのアイデアが、

  • ①現在の事業の改良に関するものなのか
  • ②現在の事業とは関係が薄いものなのか

を判断して下さい。

先ず初めにこのような判断をする理由は、何れのタイプのアイデアなのかで、考えるべきポイントが全く違ってくるからです。

判断の結果、アイデアが②のタイプであった場合は、そのアイデアに将来の事業化の可能性があるか否かについて判断します。

そして、将来の事業化の可能性が無い(あるいは低い)場合は特許出願する必要はありません。

その理由は、そのアイデアは儲けを生み出さないので、特許出願しても守る対象が存在しないからです。

これに対して、将来の事業化の可能性がある場合は、アイデアの本質部分に関して1件だけ特許出願して下さい。
1件だけしか出願しない理由は、そのアイデアはまだ儲けを生み出していないからです。

逆に、儲けを生み出していないのに出願する理由は、将来に儲けが出だした時に市場から追い出されないようにするためです。

この目的のためにはアイデアの本質部分を出願することが重要です。

この部分は「必須特許理論」と呼ばれる考え方に基づくものなのですが、「必須特許理論」については改めて説明します。

[第2段階](事業化の検討開始から開発中の段階)

事業化の検討を始めると、試作などしてみると思いますが、実際に始めてみると、始める前には気が付かなかった問題点が出てきて、それらを解決しながら検討を進めて行くのだと思います。

そして「行けそうだ」となって開発が始まると、性能向上のため、あるいは新たな問題解決のための様々なアイデアが出されるのだと思います。

検討の段階では未だ特許出願の必要はありません。
何故なら、未だ儲けの可能性も見えていないからです。

しかし「行けそうだ」となって本格的に開発が始まった段階では、儲けの可能性が見えてきている筈です。従って、この段階になると特許出願を検討する必要が生じます。

但し、やみくもに出願するのではなく、他社が御社の後追いで同じような製品を開発しようとした時に絶対に真似したくなるアイデアに絞って出願すれば十分です。

たとえば、後追いの他社も同じような問題に遭遇する筈で、その問題を解決するためにはこうする筈だというアイデアは出願する価値があります。

また、性能を大きく向上させるアイデアも、やがては他社も気付いて使いたいと思う筈なので出願する価値があります。

逆に、アイデアが独創的だという理由では出願する必要はありません。

儲けの可能性が見えてきた段階では、(未だ儲けは出ていませんが)このように少し頑張って特許出願する必要があります。

何故なら、アイデア段階で出願したアイデアの本質部分の特許だけでは、事業化した時に儲けを守れないからです。
そして、いよいよ事業する段階では、アイデアの本質部分の特許と、開発中に生まれた数個の特許によって、さな特許網が形成されているような状況が理想です。

[第3段階](事業化して儲けが出始めた段階)

第2段階では、未だ儲けが出ていないので、特許的に最小限の守りを固めました。

その後、事業を始めてみて、儲けが出ていないうちは更なる特許出願は不要です。しかし、儲けが出始めた場合は、その状況を他社が見ていることを考える必要があります。

儲けがさい間は、最小限とはいえ特許網が形成されているので、他社は参入を躊躇するでしょう。
しかし、儲けが大きくなると、何としても参入しようとするので、最小限の特許網では防ぎきれなくなってしまいます。

ですから、儲けが大きくなってきたら、特許網に特許を追加する必要が生じます。

もっとも、この段階では事業によって儲けが出ているので、その一部を使って出願すれば良いですし、出願する内容も簡単なもので構いません。

あまり考えずに、できる範囲で少しずつ特許を増やしていけば良いのです。

以上では、アイデアが②のタイプ(現在の事業とは関係が薄いもの)であった場合にお勧めしたい特許出願戦略の概要を説明しました。

この出願戦略は極めて合理的で、規模の小さな会社にとっては、おそらく最善と考えているのですが、世の中に広まっている誤った常識からすると直ちには納得し難い部分があると思います。

そこで次回の第4話では、特許に関する誤った常識について説明しようと思います。

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