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【セカイチ知財-Vol.6-】必須特許理論について(その1)

世の中は知財に対する迷信で満ちています。

誤解したままで知財に注ぎ込むお金は無駄金です。知財戦略を世界で一番分かり易く解説します。

「セカイチ知財」は名古屋に事務所を構えるブライテック特許事務所が、知財戦略を世界で一番分かり易く解説します。

「世界一分かり易い知財戦略(セカイチ知財)」を読んでいれば、知らない間に正しい知財戦略をイメージできるようになります。

(文責:ブライテック特許事務所 所長弁理士 三林大介)

ここまでのおさらい

前回までは、特許に関する誤った常識についてお話してきました。

一言でまとめると「世の中には特許を取っていれば何とかなるという風潮がありますが、それは完全な間違いです」ということです。
今回からは、特許を正しく使うための知識についてお話ししようと思います。

必須特許理論について(その1)

特許を正しく使うためには、何をおいても「必須特許理論」を知っておかなければなりません。

この必須特許理論は、弁護士の鮫島正洋先生が提唱された理論で、特許を使って商売をするためには最も重要な理論ということができます。

この必須特許理論を知るには、先ず初めに「必須特許」という概念を知る必要があります。

必須特許とは

「必須特許」とは、「ある製品を作ろうとすると、どうしても使わなくてはならない特許」のことを言います。

この説明だけではピンと来ないと思いますので、iPS細胞の例を用いて説明しましょう。
本当は、私は医学・生物が詳しいわけではないのですが、一番分かり易いと思うのでiPS細胞の例で説明します。

皆さんもご存じのように、京都大学の山中先生は、私たちの体を作っている細胞(体細胞)に対して特別な処理を加えることで、あらゆる臓器や器官になり得るiPS細胞を作り出せることを発見してノーベル賞を受賞されました。

その当時は、例えば心臓が悪い人であれば、自分の体細胞から新しい心臓を作って貰って悪い心臓と交換することで、心臓病を完治させることが可能になると大いに期待したものでした。
しかし実際には、未だにそうしたことは実現していません。聞くところによると、作成したiPS細胞の中に別の細胞(癌細胞など)が混ざってできてしまうことや、iPS細胞から目的の臓器(例えば心臓)の細胞を作ることができても、臓器(心臓など)の形にすることが難しい等の問題があるのだということです。

ですから、自分の体細胞から心臓を作って貰うという夢の実現は、これらの問題を解決して始めて可能になるわけです。つまり、iPS細胞を作り出すというノーベル賞の技術に加えて、癌細胞などが混ざってできないようにする技術や、iPS細胞から作った臓器の細胞を臓器の形にする技術も開発しなければ、夢を実現させることはできないということです。

仮に、

  • (1)iPS細胞を作る技術の特許A、
  • (2)iPS細胞に別の細胞が混ざらないようにする技術の特許B、
  • (3)iPS細胞を使って臓器を作り出せす技術の特許C

が成立したとすると、これら3つの特許(特許A、特許B、特許C)が「必須特許」となります。

何故なら、夢を実現するためには、どうしてもこれらの特許を使わなくてはならないからです。
以上では、「どうしても使わなくてはならない技術」を説明するためにiPS細胞を使って臓器を作る話をしました。製品についても、その製品を作るためにはどうしても使わなくてはならない技術が存在しています。そして、その技術が特許になっていれば、その特許は必須特許となります。

「必須特許理論」は、一言でいうと「ある製品の必須特許を持たない会社は、その製品の市場からの撤退を余儀なくされる」というものです。次回では、この「必須特許理論」について詳しく説明しようと思います。

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