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システム特許とは?

システム特許とは?

「システム特許」は、コンピュータシステムの関連技術の特許を指す言葉として使用されており、ソフトウェア特許の一分野であるといえます。

こうした分野の出願件数は、AIなどの第4次産業革命とともに、近年、増えてきています。
そこで今回は、システム特許の対象や、注意点について解説します。

執筆:金原正道 弁理士

どんなものがシステム特許になる?

「自然法則を利用した技術的思想の創作」が特許の対象となる発明です。

コンピュータソフトウェアを利用するシステムは、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている場合には、発明といえます。

「ハードウェア資源」とは、処理、操作、機能実現に用いられる物理的装置または物理的要素のことです。

物理的装置としてのコンピュータ、その構成要素であるCPU、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続された物理的装置などがハードウェア資源です。

つまり、パーソナルコンピュータや周辺機器、通信回線、サーバーなどのハードウェアを使って、具体的にソフトウェアによる情報処理が行われる発明は、特許になりうるシステムです。

ビジネスを行う方法、ゲームを行う方法又は数式を演算する方法に関連するものであっても、ビジネス用コンピュータソフトウェア、ゲーム用コンピュータソフトウェア、数式演算用コンピュータソフトウェアなど、コンピュータソフトウェアを利用する技術的思想の創作は、システム特許となるものです。

なお、2000年頃には、インターネットビジネスの手法が特許になる、独占できるとやや誤解されて話題になりました。amazon社のワン・クリック特許などがニュースでも取り上げられ、有名になりました。

しかし、あくまでも特許は技術的創作である発明に対して与えられるものです。

特許庁の審査官は、システム特許、ビジネス関連特許であっても、ビジネスを行う方法等といった内容にはとらわれず、コンピュータソフトウェアを利用するものという観点から、ソフトウェアとハードウェアが共働するシステム自体の新規性、進歩性などを審査します。

ソフトウェア特許とはどう違う?

特許法には、システム特許、ビジネス関連特許、ソフトウェア特許のような用語はありません。

ただ、プログラム等とは、電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたプログラム、その他電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものをいうとされています(特許法第2条第4項)。

「プログラムに準ずるもの」とは、コンピュータに対する直接の指令ではないが、コンピュータの処理を規定する、たとえばデータ構造(データ要素間の相互関係で表される、データの有する論理的構造)であるとされます。

ソフトウェア特許は、一般に、電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたプログラム、プログラムを記憶した情報記録媒体、電子計算機などを指していることが多いようです。

ATB特許の事例と、ビジネス関連発明の動向

従来のこうしたソフトウェア特許に対し、入出力装置や制御装置などとソフトウェアとが共働して動作する特許として、1991年という比較的に早い時期に出願された、ATB(Active Time Battle)特許といわれる、ロールプレイングゲーム関連の特許が話題になったことがあります(特許第2794230号「ビデオ・ゲーム装置、その制御方法および制御ディバイス」)。特許になるまでに7年かかりました。

このシステムは、「プレイヤ・キャラクタと敵キャラクタとを表示装置の表示画面上に表示し、入力された動作指令またはあらかじめ定められた動作指令に応じて、プレイヤ・キャラクタと敵キャラクタとに相互に動作を行わせる」ビデオ・ゲーム装置の制御方法です。

敵と味方それぞれのキャラクターに、時間を計測する手段を付与し、次の行動選択可能までの時間を表したATBゲージを使って、一定の時間が溜まったキャラクターが次の行動に移れるようにした点などが、特許として成立しました。

コンピュータと、記憶装置に備えられたゲームプログラム、コンピュータに接続された入力装置、出力装置などが共働して具体的に動作する点で、ソフトウェア特許の一例でもあり、システム特許の早い時期の成立例でもあります。

その後インターネットの普及により、従来の製造業などだけでなく、インターネット関連企業、サービス業などのあらゆる業種において、ビジネスモデル特許が話題になり、各企業が提供するサービスやシステムが数多く出願されるブームとなりました。

近年、IoTやAI等に第4次産業革命を背景に、ふたたび静かに注目を集めています。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html
ビジネス関連発明の最近の動向について(特許庁)

システム特許を取得する際に気をつけるべきポイントは?

ソフトウェアによりハードウェアを用いる情報処理が、具体的に記載されていること

ソフトウェアは、目に見えない無形のものです。

ハードウェアは目に見えますが、システムを構成するどのハードウェアに、どのようなデータが記憶されているのかは、説明しなければわかりません。

ハードウェアにどのような機能があるのか、ソフトウェアはデータをどのように処理するのか、についても同様です。

実例を挙げて説明します。


特許庁が公表している、ソフトウェア関連発明に係る審査基準にある例です。
(なお特許請求の範囲の例は、読みやすくするために改行をし、下線をつけています)
まずは請求項の事例を読んでみましょう。

[特許にならない請求項]

発電装置の発電電力を電気事業者に売却する売電と、

前記電気事業者から電力を購入する買電と、

蓄電池の蓄電電力によって電気機器の電力を賄う放電とを、

電気の売買価格に基づいて電気消費者の経済的利益を増大させるように制御する電力制御システム。

この例は、発明に該当しません。

なぜならば、電気の売買価格に基づいて電気消費者の経済的利益を増大させるように制御するとは書いてあっても、機器等(発電装置及び蓄電池)の動作については何ら特定されていないためです。

これに対し、下記のような請求項であれば発明に該当し、特許になりうるものとされています。

機器等の使用目的に応じた動作を具現化させるように制御するものとして具体的に記載されているからです。

[特許になりうる請求項]

発電装置の発電電力を商用電力系統へ送ることによる売電と、前記商用電力系統の系統電力を蓄電池及び電気機器へ送ることによる買電と、前記発電装置の発電電力を前記蓄電池へ送ることによる蓄電と、前記蓄電池の蓄電電力を前記電気機器へ送ることによる放電と、に関する電力制御を行う電力制御システムであって、

前記電気機器の負荷消費電力を前記蓄電池の蓄電電力から賄った場合に売電可能となる前記発電装置の発電電力量に売電単価を乗じた値に、買電不要となる系統電力量に買電単価を乗じた値を加算した値を、各時間帯における電力価値として算出する電力価値算出部を備えるサーバと、

前記サーバとネットワークを介して接続され、前記電力価値算出部が算出した前記電力価値が予め定められた所定値より高い時間帯において、前記売電、蓄電及び放電を行い、前記買電は行わないよう制御する電力制御部を備える電力制御装置を有する、電力制御システム。

ものすごく読みにくいですが、太字のところを読めば、おおまかに権利の内容が読み取れます。

そして、サーバ、電力制御装置のそれぞれが、どのような処理をしているかが、下線太字以外のところに書かれています。

これで、ソフトウェアによるハードウェアを用いる情報処理を、具体的に記載したことになるのです。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/document/ai_jirei/h30_software_hb_kaitei_point.pdf
コンピュータソフトウェア関連発明に係る審査基準及び審査ハンドブックの改訂のポイント(特許庁)

発明の詳細な説明と図面の記載の注意点

特許請求の範囲(各請求項)に記載した発明が、ソフトウェアによって、ハードウェアを用いる情報処理が具体的に記載されているとしても、実施できる程度に具体的ではありません。

特許請求の範囲は、発明を特定する内容を簡潔に記載するものです。

発明の詳細な説明では、さまざまな情報処理のフローチャートや動作の説明、具体的な機器の構成の実施例などを記載し、発明を特定する必要があります。

システム特許の実施とは?

特許権が成立すると、発明の実施を独占することができます。

ところで、発明の実施とはどのようなものを含むかというと、特許法では、物の発明、方法の発明、物を生産する方法の発明、の3つに分けられています(特許法第2条第3項)。

プログラムの発明は、物の発明に含まれるとされているため、プログラムの生産、使用、譲渡、レンタル、輸入、プログラムを電気通信回線を通じて提供する場合などの行為を独占することができます。

物の発明に、コンピュータ・プログラムが含まれるようにしたことで、インターネットでプログラムを提供することなどが、独占できるようになっています。

システム特許やソフトウェア特許の権利侵害があった場合に、権利行使ができるようにされています。

侵害の発見と証明が難しい?

ただし、問題は、権利侵害の発見や、権利侵害を立証するためことが、簡単ではないことです。

実際に特許権を侵害しているシステムを発見しても、それをやめさせるなど、実際に権利行使をすることが難しいケースがあるのです。

たとえば、前述した電力制御装置のシステムの事例でみてみましょう。

権利の内容は、サーバと、サーバにインストールされたソフトウェアと、電力制御装置と、電力制御装置にインストールされたソフトウェアと、ネットワークとがあるシステムです。

これら全部を模倣等の実施をしなければ、特許権侵害とはいえません。

システムの一部分だけの実施では、権利侵害に問えないケースが出てきます。

また、全部を実施している特許権侵害といえる場合でも、それぞれの部分が異なる事業者によって権利侵害されているケースや、一部分は日本国外で実施されているケースでは、権利行使は簡単ではありません。

権利の内容の一部分はユーザーが実施しているケースでは、侵害の発見は事実上困難といえるでしょう。

多様な権利請求をすることが重要

システムの特許にはプログラム、装置、システム全体、システムの一部分などの多様な権利請求の方法があります。

したがって、システム全体の権利のほかに、少し変えたものも権利に含まれるように、それらのバリエーションについても特許になるようにしたいものです。

システムの一部だけを実施する事業者に権利行使して、やめさせるには、システムの一部分の権利も必要でしょう。

模倣されたソフトウェアだけが単体で流通してしまうかもしれません。

そこで、インストールされるプログラムの権利、プログラムを記憶した情報記憶媒体の権利、ソフトウェアがハードウェアと協働して情報処理する方法、なども検討しましょう。

このように、さまざまな観点からの権利請求をすることが重要です。

システムの一部を秘密にしておくことも検討する

特許出願は、公開されるものです。

ソフトウェアの具体的な処理や、データ構造など、秘密にしておいた方が望ましい部分があるかどうかを検討し、特許出願にはあえて記載しない部分を残しておくことも検討します。

技術上の秘密は、万一不正に盗用などされた場合には、不正競争防止法によっても保護されます。

侵害されたら訴えられる?

特許権侵害に対しては、それをやめさせる差止請求権のほか、侵害をした設備の廃棄や、侵害の予防を請求する権利、損害賠償請求権などを行使することができます。

したがってもちろん、システム特許でもそのことは変わりありません。

ただし、特許権の侵害が成立するためには、特許発明の実施をしていることが条件です。

システム特許の権利侵害の発見や、権利侵害を立証するための困難さは、前述したとおりです。

侵害の立証を容易にする手段の一つとして、一定の行為を侵害とみなす、いわゆる「間接侵害」の規定があります(特許法第101条)。

下記の行為は、システム特許全体の実施ではないが、侵害とみなされるようになっています。

特許である権利を実施する一歩手前の、権利侵害に用いる用途しかないものを侵害とみなすことにより、立証をしやすくした規定です。

物の発明についての間接侵害

「業として,その物の生産にのみ用いる物の生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」

「その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通している物を除く。)であってその発明による課題の解決に不可欠なものにつき,その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為)」

方法の発明についての間接侵害

「業として,その方法の使用にのみ用いる物の生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」

「その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であってその発明による課題の解決に不可欠なものにつき,その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」

間接侵害だと認められた裁判例や、認められなかった判例などもあり、特許権侵害を立証する一つの助けにはなる規定だとしても、いずれにしても、侵害の発見や証拠の収集・管理などには困難さがつきまといます。

まとめ

以上、システム特許の解説と、特有の注意点などを見てきましたが、その権利の性格上、プログラム、装置、システム全体、システムの一部分などの多様な権利請求が重要であることがおわかりいただけたと思います。

 書類の作成にもさまざまな内容を盛り込む必要がありますし、侵害の形態を想定して権利請求する必要もあります。

一方で、ビジネス関連発明などのシステム特許には、別の利点もあります。

ビジネスのために提供されるシステムなどが、特許出願済であること、さらには特許取得済であることをアピールできる点です。

どの知財の分野、技術の分野でもそうですが、システム特許では特に、ソフトウェア、ハードウェア、ビジネス、訴訟などにも精通した特許事務所に相談することを検討しましょう。

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