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開放特許とは何か?どのようにして活用するのか?

開放特許とは

一般的に特許権は、自社の製品が他社によって模倣されることを防ぐ目的で取得される権利です。

しかし特許権の中には、権利を取得したものの、特許によって保護する製品が販売されなかったために、自社製品を保護するという目的を失った特許もあります。また、大学が取得している特許の場合、そもそも販売をしないため、保護する対象物がないということも考えられます。

ですがこのような特許権でも、他人への譲渡や実施許諾(ライセンス)によって、収益を得ることが可能です。そこで近年、他人に譲渡することや実施許諾(ライセンス)をすることを目的とした特許権を開放特許としてデータベース上で公開するということが行われています。

特許を開放するメリット

特許権者が特許を開放するメリットとしてはまず、譲渡や実施許諾によって対価を得られる、という点があります。すなわち、特許を開放することで、自社製品を有効に保護できない特許権を企業の利益につなぐことが可能になるのです。

また大企業では、特定の技術に関する特許を開放することで、新しい市場での優位性を確保する、ということも行っています。

例えばトヨタ自動車は、車両電動化技術に関する特許(約2.4万件)を、2030年末まで無償開放しています。この無償開放の目的は、燃料電池自動車の技術を他社が自由に使えるようにすることで、他社の燃料電池自動車の市場参入を促し、燃料供給のインフラ確立など大掛かりな設備投資を要する燃料電池自動車の市場を確立することにあると考えられています。

開放特許を利用するメリット

開放特許を利用するメリットは、付加価値をつけた製品を、費用的・時間的コストを抑えながら製造・販売できる点です。

すなわち、自社にない技術を開発するには相当の開発費と期間を要するところ、開放特許を利用することで、より効率的に新製品を作り出すことが可能となります。

また開放特許の利用を契機として、その後の開発を開放特許の特許権者と共同ですることができ、ビジネスチャンスを広げることも可能となります。

開放特許のデメリット

開放特許にはもちろんデメリットもあります。

まず特許権を譲渡した場合、譲渡後に自社がその特許権を含む製品を製造・販売すると、特許権の侵害となることが挙げられます。そのため、特許権の譲渡に際しては、その後自社でその特許権を含む製品を製造・販売する可能性がないことを、充分に検討する必要があります。

また実施許諾をする場合には、その契約内容によっては、自社の事業に影響を及ぼす可能性があることに注意しましょう。

実施許諾に際しては

  • 独占的な実施許諾を認めるか否か
  • 実施許諾の期間や実施する場所

について、当事者間の契約により決める必要がありますが、ここで仮に、自社に不利な契約内容で許諾してしまうと、自社の事業に悪影響を及ぼしかねません。

開放特許のデータベース【活用例・注意点】

開放特許のデータベースとしては、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)によって運営されている開放特許情報データベースがあります。

開放特許情報データベースは、インターネット上で、企業や大学等の開放特許を無料で検索利用できます。ただし、特許権の譲渡やライセンスの締結に際しては、特許権者に対して対価を支払う必要があります。

データベースによる検索

本データベースでは、キーワード検索、登録者情報検索、国際特許分類(IPC)検索、技術内容検索、特許番号などの番号検索などが可能です。

キーワード検索は、開放特許に関するキーワードを入力する検索です。例えばキーワードとして、「特許 クジラ」と入力することで、以下の開放特許がヒットしました。

また開放特許情報データベースでは、キーワード、登録者情報、国際特許分類(IPC)、技術内容、特許番号などの番号を組み合わせて検索することも可能です。この組み合わせによる検索は「詳細検索」のページでできます。

例えば詳細検索で、キーワードを「特許 クジラ」、技術分野を「化学・薬品」と入力することで、以下の開放特許がヒットしました。

開放特許の活用事例1

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)では、開放特許を活用して新製品を完成させた事例をいくつか紹介しています。

ひとつめの事例は、佐々木工機株式会社の真空吸着ツールスタンドです。

この真空吸着ツールスタンドでは、データベースに登録されていた開放特許が用いられています。この開放特許の特許権者は企業であり、ライセンス契約の締結により、開放特許を新製品に導入することが可能となっています。

開放特許の活用事例2

開放特許を利用したもう一つの事例として、三島食品株式会社のレトルト食品があります。

このレトルト食品は、食材の見た目を変えずに柔らかくすることに特徴を有しており、広島県の所有する特許権が使用されています。この特許権については、広島県とライセンス契約を締結することで、権利の適用が可能となっています。

このレトルト食品は「りらくやわらか惣菜シリーズ」として2006年から販売されており、2023年も販売されているロングセラー製品で、介護施設や病院などの施設で広く使われています。

また三島食品株式会社は、ライセンス締結を契機としてさらに新製品の開発を行い、広島県と共同で特許を取得しています。

参考:開放特許活用事例

開放特許情報データベースにおける注意点

開放特許情報データベースを利用する際、特許権の譲渡交渉やライセンス契約の締結について、INPITは関与しないということに注意する必要があります。

そのため、これらの権利交渉は当事者間で行うことになりますが、契約内容を十分に理解したうえで交渉をしないと、特許を自社の製品に十分活用することができない、という事態も起こり得ます。

また、特許権の譲渡やライセンスの締結に関する費用については、どの程度が妥当な金額であるかよくわからない、という問題もあります。そのため契約に際しては、専門家である弁護士や弁理士に契約内容のチェックなどを依頼することをお勧めします。

さらに開放特許情報データベースは、対象が特許と実用新案のみです。意匠、商標、著作権などは対象外となっている点に留意してください。

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