ロゴ商標って何?商標登録の必要性はある?
ロゴ商標は、文字商標以外の、図柄の要素を含む商標です。文字を図案化したような商標もロゴ商標の1つです。
そもそも商標ってなに?
商標とは、事業者などが、自身で取り扱う商品・サービスを他人の商品・サービスと区別するために使用するマーク(識別標識)です。ひとくちに商標といっても特徴によって多くの種類があります。
商標の種類
商標の種類について簡単に紹介します。
文字商標
文字のみからなる商標です。漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、数字等のみから構成されます。
図形商標
図柄、デザイン、幾何学的模様など、図形のみから構成される商標です。
記号商標
記号的な図柄(のれん記号など)の商標です。
立体商標
立体的形状からなる商標です。例として、ケンタッキー・フライド・チキンのカーネルサンダース人形が挙げられます。
結合商標
文字、図形、記号、立体的形状、などが2つ以上組み合わされた商標です。
その他の商標
時間の経過に伴って変化する動きの商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標、などがあります。
商標登録を受けられない商標
自己と他人の商品・サービスを区別することができない商標は、商標の機能を有さないため、登録を受けることができません。
また公益性に反するもの、例えば、国旗、公的紋章、公的機関の標章などと紛らわしいものも、登録は不可能です。
いわゆるロゴ商標とは
文字商標との違い
文字商標とは、上で触れましたとおり、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、数字等の文字のみからなる商標のことです。
これに対して、ロゴ商標は、何らかの図柄の要素を含む商標です。
文字のみから構成される場合でも、例えばその文字のフォントが特徴的であったり、文字に色彩が付されているような場合には、ロゴ商標に含まれます。
ロゴ商標で出願する意味
商標登録を受けるためには、一目見て自己と他人の商品・サービスを区別できる、といういわゆる「識別力」が必要です。
文字商標に比べて、図柄の要素が加わるロゴ商標の方が識別力が強くなり、登録できる可能性も高くなります。
文字商標の場合、例えば文字列が似ていたり、文字が有する意味が似ていたり、発音(称呼といいます)が似ていたりすると、識別力が弱くなってしまいます。実務上はいずれか1つでも似ていると、識別力がないとして登録を受けることができません。
しかし文字のみからなる文字商標では識別力が弱い場合でも、図柄の要素が加わることで、識別力は強くなります。
ここに、ロゴ商標で出願する意味があります。
ロゴ商標のメリット
上記のとおり、ロゴ商標のほうが識別力を発揮しやすく、登録審査に通過しやすくなります。
登録の可能性がより高くなる、というのがロゴ商標の最大のメリットです。
登録を受けられやすくなる、というのは、登録が拒絶される(拒絶理由通知が出される)可能性が低くなるということです。拒絶理由通知が出されなければ、反論の必要性も無くなります。このため、登録までの期間や反論のための費用も抑えることができますので、この点は特に出願人にとっては嬉しいですね。
ロゴ商標のデメリット
ロゴ商標は図柄を含めて識別力を有することになるわけですが、これはつまり、その商標のその見た目のイメージ、範囲のみが権利範囲になり得る、ということでもあります。権利範囲としてはどうしても狭くなってしまう、ということです。
例えば自分以外の他人が、見た目の形は同じだけど色が違う商標を真似して使っていた、という場合に、「色が違うから権利侵害にはならない」となってしまう危険性も0ではありません。
実際はこんな単純なものではありませんが、そのような可能性は高まってしまう、というのがロゴ商標のデメリットと言えます。
ロゴで商標出願するときの注意点
ロゴ商標で出願する場合には、以下の点に留意しましょう。
デザイナーに発注した場合の著作権
デザイナーにロゴのデザインを発注する場合もあると思います。その場合の著作権については、著作権法上、原則、原著作者(つまりデザイナー)に帰属します(著作権法第17条)。
デザイナーに発注する場合には、デザインの納品とともに著作権がデザイナーから発注者に譲渡される旨の取り決め(契約)をデザイナーとの間で事前に交わしておくことが重要で
す。
この点を怠ると、後から、意図せず権利侵害だと訴えられたり、著作物使用料などの金銭を要求されたりする場合もあり得ますので、留意ください。
フォントや素材は商用利用可能か
インターネット上でフォントや図柄の素材などを検索して、ロゴを作る場合もあると思います。そのような場合、その素材がフリー素材かどうか(著作権が開放されており自由に使用できるのかどうか)、をしっかり確認しましょう。
フリー素材である旨の記載があったとしても、実は期間の制限があり、一定の期間経過後は使用料が発生する、とされている場合もあります。
もし素材配布サイトに使用に関しての規約が掲載されていれば、細部まで目を通しましょう。不明であれば、使用を避けるか、専門家に相談するなどしましょう。
実際、世間ではフリー素材であると思い込んで使用していたが実際にはそうではなく、多額の使用料を請求された、というケースは多く発生しています。
実効性のある権利を取得するために
ここでは、ロゴ商標を出願する場合の検討ポイントについて紹介します。
実際の使用態様と比較しよう
ロゴ商標を出願するときは、商品・サービスで実際に使用している商標と合致するものを出願しましょう。実際の使用態様と異なる商標で出願した場合、可能性としては低いとしても場合によってはせっかく出願しても商標権で保護できない場合もあります。
例えば出願した商標は全体が「青色」であるが、実際に使っている商標は全体が「黄色」である、とします。商標としては両者は別物です。
たいていは大きな問題にならないのですが、商標には、使えば使うほど識別力が増していく特性があるので気を抜けません。
どういうことかといいますと、「黄色」をずっと使っていた結果、消費者はロゴが「黄色」であることで商品・サービスをよりはっきりと認識するようになります。
「青」であると、「あれ、ちがうところの商品・サービスかな?」となってしまうこともあり得るわけです。
そうしたときに、登録されている商標の色味が「青」であったとすると、もはや実際に使用している「黄」の色味のロゴ商標は、適切に保護できていないことに。
ですので、出願するロゴ商標と、実際に使用するロゴ商標とは、完全に一致することが好ましい、という意見もあります。
もちろん、実際にはそれ以外の要素もありますので、どのように出願するかは専門家に相談することをおすすめします。
識別力があるか
識別力を有するかどうか、つまり、他人の商品・サービスと明確に区別がつくかどうか、を確認しましょう。
識別力が弱いと登録が拒絶されるので、登録されるようにするために、余計な時間と費用が必要になります。
最小の時間とコストで登録を受けるためには、事前に、識別力の有無をよくよく確認しておくことが重要です。
識別力については、やはり専門家に相談することをおすすめします。
文字商標では不十分化か
文字商標での出願はだめかどうかを検討しましょう。文字商標で権利を取得できるのであれば、それに越したことはありません。一般的には、文字商標のほうが権利範囲が広くなるためです。
文字商標では識別力が弱く、登録が難しいかもしれない、となった場合にロゴ商標での出願の可能性を検討する、というのがセオリーです。
もちろん、商品・サービスへ実際に付す商標がロゴ商標一択で確定しているのであれば、そのロゴ商標で出願することで問題ありません。
まとめ
ロゴ商標は、最も目にしやすい商標で、至るところで目にしていると思います。
ロゴ商標の利点、メリット、デメリットについてしっかりと理解のうえ、上手に活用していきましょう。
エンジニア出身です。某一部上場企業にて半導体製造装置の設計開発業務に数年携わり、その後、特許業界に転職しました。
知財の実務経験は15年以上です。特許、実用新案、意匠、商標、に加えて、不正競争防止法、著作権法、など幅広く携わっています。
諸外国の実務、外国法にも長けています。
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