マジックテープって、登録商標なの?言い換えの表現はどうすべき?
(この記事は2022年2月25日に作成されたものです。)
こんな方に向けた記事です。
☆マジックテープが登録商標であることをご存知なかった方へ
☆マジックテープの言い換え表現を知りたい方へ
☆商標権侵害を避ける方法を知りたい方へ
小学生時代の放課後、外で遊ぶことしか頭になかった私、商標好き太郎は、本当にたくさんの靴をボロボロにしました。その中でも特に好んでいたのがマジックテープの靴。
あの「ビリビリッ」という音とともに接触面をはがして、足を締め付け直すことが出発の準備だったりました。
「さ、けいどろという名の戦いにいくぞ!」のような。。。
時は過ぎ、大人になった私は甥っ子の靴を買いに行きました。そして、靴売り場にて、マジックテープにRマーク(登録商標であることを示すもの)がついているというのを見てびビックリ!!
正直知らなかった。。。
よし、ここは徹底調査だ!ということで、今回のテーマはマジックテープでございます!
マジックテープは使用不可!クラレ社の登録商標!
見出しの通り、マジックテープは株式会社クラレの登録商標です。
株式会社クラレは、2022年2月現在、マジックテープの登録商標を11件ほど保有しており、一番最初の権利は、なんと1982年(昭和57年)に登録となっております。
結構古くから権利があるのだなと思いませんでしたか?
そうです。
我々の想像よりも、もっともっと前に商標登録されており、ここ10年とかのレベルではないことがよく分かりました。
(引用:商標登録第1501016号特許情報プラットフォーム|J-PlatPat)
英語表現のマジックテープはどうなる?
では、「マジックテープ」の英語表現も確認しておきましょう!
(引用:https://www.weblio.jp/content/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%ADweblio辞書)
英語表現では「velcro」と表現されるようで、こちらは筆者の知る限りでは全く横文字として使用されていない表現ですね。
知っておこう!マジックテープの言い換え表現
現時点で、マジックテープが登録商標であることは分かりましたが、では、この商品の普通名称はどうなるのでしょうか?
実は、先ほど紹介した商標登録第1501016号のページにその答えがありました。
(引用:商標登録第1501016号特許情報プラットフォーム|J-PlatPat)
正解は、
- 「面ファスナー」
と言います。
面ファスナー?正直馴染みがないです。
筆者としては、なんとなくマジックテープの方がしっくり来るんですよね。子供の頃からそう呼んでましたし。
(引用:株式会社クラレHP|https://www.kuraray.co.jp/products/magic)
ここで、権利者である株式会社クラレのHPを確認してみますと、しっかりと登録商標であることはアピールしています。これは、ただ記載をしている訳ではなく、明確に意図の元にやっているんです。
それは、「普通名称化の防止」です。
マジックテープが商品の普通名称であると誤認する人が増えれば増えるほど、普通名称化するリスクが高まります。
そして、普通名称であると認定されてしまうと、せっかく積み上げたブランド価値が無になってしまい、権利者としてこれほど悲しいことはありません。
よって、クラレ社もそれを防止するため、HPに上述のような記載をしています。
絶対避けよう。登録商標の無断使用!
当然と言えば当然なのですが、登録商標を使用することは商標権の侵害となります。それはその登録商標が普通名称っぽくなったからということは基本的には関係がありません。権利が無効とならない限りは、権利行使は可能なのです。
この権利の侵害について軽く考える方がいらっしゃるのも事実です。
確かに、言葉を勝手に使うくらい。。。と考えられるかもしれませんが、10年以下の懲役または1千万円以下の罰金が課される可能性もあるのです。
それでも、あなたは他人の登録商標を使いますか?
なぜ、一般用語のように広まってしまうのか?
一番多いパターンは、代替・競合商品がほとんどないことです。
その次に、その登録商標がその商品名として極めて有名になったためなどが続きます。
例えば、カップラーメンでいうと、カップヌードルがあり、ラ王があり、カップスターがありと、個性溢れる商品名が多数想像できますよね?
つまり
- カップラーメン→カップヌードル・ラ王・カップスター
となります。
一方、面ファスナーについては、有名どころの商品名が少ないため、消費者に面ファスナー=マジックテープであるかのように認識されてしまったということになります。まさに、商品名=登録商標の図式となってしまい、さらにこの認識の度合いが進んでしまうと普通名称と認定されてしまう場合があるのです。
このパターンに近かったのは、
登録商標の「宅急便」
です。
みなさんが商品をネットで注文し、それを自宅などに届けてもらうサービス。
あれは、「宅急便」ではなく、「宅配便」です!!
宅配便が普通名称です。
そうです。
ヤマトホールディングス株式会社の登録商標「宅急便」があまりにも有名になりすぎてしまったために、普通名称であるかのように誤認されている事実がネット上にちらほら見受けられますね。
商標調査の意義を再確認
商標登録出願をする際に、我々弁理士は商標調査というものを行います。
この商標を出願した場合に特許庁はどのような判断をするかというのを予め知っておくための調査です。
この場合、「マジックテープ付き〇〇」などの商標で依頼を受けた場合には、おそらく弁理士としてその商品名は全力で止めるでしょう。
なぜなら登録に至らないだけでなく、”権利侵害を申し立てられる可能性”があるためです。
相談者の中には、
「自分で商標調査を行ったので出願だけお願いします。」
とおっしゃる方がいらっしゃいますが、これはとても危険です。
一般の方の調査は甘い場合が多く、例えば同一の商標が出願されているか否かくらいしか調査していないパターンがあります。これでは到底正確な調査とは言えません。
これは弁理士としてのプライドがあるとか、そういったことは全く関係ありません。
基本的に我々弁理士は、みなさんの利益になるために自身の知識を引っ張り出し、様々な角度からリスクを検討します。
よって、商品名などを決定する際には、ぜひ弁理士にご相談を!
まとめ
登録商標「マジックテープ」のように、あまりにも有名になりすぎてしまった商標は普通名称化の防止も必須の対応となります。常に他人の使用状況にも目を光らせる必要があるということですね。
まずは気軽に無料相談を!