商標権と著作権は何が違う?ポイント4つ
ロゴマークやキャラクター等に関係する権利として思いつくのが、商標権と著作権です。
しかし「権利で保護される対象」「権利発生のタイミング」「権利の存続期間」「権利行使のやり方」と、ふたつの権利には大きな違いがあります。
自分のロゴやキャラクター等を正しく守るためにも、商標権と著作権の違いを知っておきましょう!
【違い1】商標権と著作権、それぞれの保護対象
商標権の保護対象は、商標自体ではなく商標に化体した業務上の信用です。このような保護対象となっている理由は、商標法が、産業の発達に寄与し需要者の利益を保護することを目的としているからです。
一方、著作権の保護対象は、著作物、実演・放送などに関する著作者の権利(公衆送信権・出版権など)、この著作者の権利に隣接する権利(著作隣接権)です。
著作権法の目的は、著作者等の権利の保護を図り、文化の発展に寄与すること。そのため、このような保護対象となっているのです。
なお「著作物」として保護される対象は著作権法で以下のように定められています。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
ちなみに著作権の保護対象としては、著作物の他に、公衆送信権、出版権、著作隣接権など、様々な対象がありますが、著作物以外については、商標法との間で権利関係が問題となることは、まずありません。
商標権の保護対象「信用」とは
商標権の保護対象は、商標自体ではなく、商標に化体した業務上の信用です。
この「商標に化体した業務上の信用」とは例えば、〇〇印の製品は品質が良い、◇◇印の業者はサービスが良い、という信用があるときに、商標である〇〇や◇◇に顧客が注目し、購買意欲を高める効果があることをいいます。
なお使用をしていない商標権には、業務上の信用が化体していないため、「使用をしていない」という理由で、商標権を取り消す審判を請求することが可能となっています。
著作権の保護対象
著作権の保護対象は、著作物、実演・放送などに関する著作者の権利(公衆送信権・出版権など)、この著作者の権利に隣接する権利(著作隣接権)です。これらの保護対象のうち、著作物に該当するものはこちらの通り。
- 小説などの言語
- 音楽
- 舞踊又は無言劇
- 絵画などの美術
- 建築
- 地図などの図形
- 映画
- 写真
- プログラムなど(筆者注:コンピューター・プログラムのこと)
ただし工業製品は、文化の発展に寄与するという法目的の著作権法よりも、産業の発展に寄与するという法目的の意匠法で保護することがよりなじむため、著作権法の保護対象とならないことが多いです。
【違い2】権利の発生するタイミング
商標権は、特許庁に対して商標登録出願を行い、特許庁の審査を経て登録されることで、発生します。一般的に商標権の登録は、商標登録出願から1年弱でなされるため、商標権の生じるタイミングは、出願から約1年後とタイムラグがあります。
しかし著作権は、著作物の創作時に発生します。文化庁への登録は必要ありません。
【違い3】権利の存続期間
商標権の存続期間は、登録から10年間です。なお商標権には更新制度があり、10年毎に更新することが可能です。そのため商標権は、更新することで、半永久的に権利を存続させることが可能です。
例えば、「OLYMPIC」の商標(登録番号第99160号)は1918年に登録され、その後の更新をすることで、現在も存続しています。
一方で著作権の存続期間は、著作者の生存年間およびその死後70年間です。
【違い4】権利行使の条件
商標権・著作権のいずれにおいても、権利行使として、差止請求や損害賠償請求をすることが可能です。
まず商標権における権利行使をする際には、2つの条件を満たすことが求められます。
- 他者の使用している商標が登録商標と同一又は類似である
- 他者の使用している商品・サービスが、登録商標に係る指定商品・役務と同一又は類似である
また損害賠償請求が認められるためには、相手方の使用に故意・過失があることが要件の一つとなっています。
しかし商標法では、
- 商標権の登録は商標公報の発行により公示されること
- 自分の行っている商品・サービスについては商標公報を見て他者の権利をチェックするのが普通であると考えられること
の2点から、商標権者が相手方の故意・過失を立証するのではなく、相手方が自らに故意・過失のないことを立証する必要があります。
もしも著作権における権利行使、特に著作物の複製について権利行使をする際には、他者の使用している物が著作物に依拠していること、すなわち「他者の使用している物は、該当する著作物を見たうえで創作したと思われるほど似ている」ということを立証する必要があります。
そして商標権と違い、損害賠償請求が認められるためには、相手方の使用について故意・過失があることを、著作権者が立証する必要があります。
権利侵害?商標権と著作権が抵触したらどうなるか
商標権と著作権では保護対象が異なりますが、保護する物によっては、商標権と著作権の両方で保護できる場合があります。
具体例としては、ロゴやキャッチフレーズを守るときに問題となるケースがあります。
このようなときには、商標権の出願日と、著作権の発生日のどちらが先かによって、対応が変わります。
ロゴ
商標権と著作権の抵触として知られているものとして、ロゴがあります。
ロゴとは、イラスト化された文字や文字列のことなどを指します。例えば、東京オリンピックのロゴとして、以下のロゴが商標登録を受けています(登録番号第5464947号)。
その一方でこのロゴは、花の色彩や配置、形状などを考慮すると、絵画の美術の著作物に該当する可能性も高いです。
このような場合において、仮にオリンピックロゴと非常に似ている著作権があり、さらに商標権の出願日が著作権の発生日よりも後である場合には、商標権を取得したとしても、使用できなくなる場合があります。
キャッチフレーズ
キャッチフレーズとは、相手に強い印象を与えるために工夫された短い言葉や、フレーズのことです。
例えばキャッチフレーズとして、以下の商標が商標登録されています。
「The Power of Dreams」(商標第4599911号)
キャッチフレーズで問題になりやすいのは、著作物に該当するか、です。というのも文字数の少なさが理由で、著作物性を認められにくい傾向があるためです。
とはいえ俳句や短歌のような短い形式のものでも著作物性が認められるケースはあり、キャッチフレーズについても同様のことが言えます。
抵触時における調整
著作権の発生日が先の場合
著作権の発生日のほうが早い場合、商標権は、たとえ登録を受けていたとしても、著作権と抵触している範囲では使用することができません(商標法第29条)。
抵触している箇所について商標権を使用したい場合には、著作権者の許諾を受ける必要があります。
商標権の発生日が先の場合
もしも商標権の出願日のほうが先の場合は、商標法、著作権法のいずれにも両者の抵触について調整するための規定はありません。
著作物の使用によって、業務上の信用が発生するということは考えられていないためです。
特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。
まずは気軽に無料相談を!