模倣品対策はどうやる?詳しく解説します
模倣品とは
模倣品について法律上の定義はありませんが、一般的には、他人のものを真似する意図を持った製品であると認識されています。そして、模倣品という言葉に、あまり良いイメージを持っていない方もいるかと思います。
しかしながら知的財産権の観点から見た場合、法律上抵触する模倣品と抵触しない模倣品があります。
今回は、どのような模倣品が法律上認められるのか、あるいは認められないのか、という点について、解説します。
法律に抵触しない模倣品
模倣品が法律に抵触するか否かという点は、この模倣品が特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権に抵触するか否か、あるいは不正競争に該当するか否かによって決まります。
したがって、この模倣品がこれらのいずれの権利も侵害せず、不正競争にも該当しない場合には、この模倣品は法律に抵触しません。
たとえば、模倣品が30年前に特許出願された技術を用いた製品である場合、既に特許権が満了しているため、この模倣品は特許権に抵触しません。
法律に抵触する模倣品
その一方で、法律に抵触する模倣品としては、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権に抵触する模倣品や、不正競争に該当する模倣品があります。これらに該当する模倣品を実施した場合、この実施は差止請求や損害賠償請求の対象となります。
ただし、これらの法律に抵触するか否かについては、専門的な知識が要求されるため、模倣品を実施している会社が抵触の有無を判断することは困難です。
そうは言っても、どんなときは法律に抵触するのか?次で解説していきます。
知的財産権に基づく権利行使
知的財産権に基づく権利行使には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権に基づく権利行使や、不正競争に基づく権利行使があります。
いずれの権利行使も、差止請求や損害賠償請求が可能であるため、これらの権利行使を受けた場合には、会社にとって不測の損害を被ることになります。
特許権の権利行使
模倣品が特許権を侵害している場合には、この侵害行為は権利行使の対象となります。特許権の侵害は原則として、「模倣品が特許権の特許請求の範囲に記載されている事項を満たしている場合」に成立します。
【例】
特許請求の範囲の記載「横断面が任意のn角形(nは3以上の整数)であることを特徴とする鉛筆」で
特許権者の販売商品「横断面が6角形であり、表面が茶色の鉛筆」のとき
NG:「横断面が6角形であり、表面が茶色の鉛筆」を他者が販売する行為
NG:表面の色を変えた「横断面が6角形であり、表面が黒色の鉛筆」を他者が販売する行為
また、模倣品が、特許権の特許請求の範囲に記載された事項を満たしていない場合でも、特許権の侵害を誘発するおそれの極めて高い行為は、間接侵害であるとして、権利行使の対象となります。
例えば、テレビ受像機の完成品について特許権が存在しており、特許権者がこのテレビ受像機の完成品を販売しているとします。
このとき他者がテレビ受像機の組立に必要な一切のセットを販売し、組み立てることでこの完成品とほぼ同じテレビ受像機となる場合には、このセットを販売する行為は特許権の侵害となります。
意匠権の権利行使
模倣品が意匠権を侵害している場合には、この侵害行為は権利行使の対象となります。意匠権の侵害は原則として、「模倣品が、意匠権における意匠に係る物品と同一又は類似であり、かつ登録意匠と同一又は類似である場合」に成立します。
意匠権の侵害が争われた事例としては、タニタの体組成計がオムロンの意匠権を侵害するとして、争われた事例があります。
オムロン意匠権①(意匠登録第1425652号)
オムロン意匠権②(意匠登録第1425945号)
タニタ製品
この裁判の第1審では、オムロン意匠①とタニタ製品については類似しないとして非侵害としましたが、オムロン意匠②とタニタ製品については類似するとして侵害と判断し、タニタに1億2900万円支払う判決をしました。
そしてこの裁判は控訴され、控訴審において和解しています。
商標権の権利行使
模倣品に付された商標が商標権を侵害している場合には、この侵害行為は権利行使の対象となります。
商標権の侵害が成立するのは原則、「模倣品に付された商標が、登録商標と同一又は類似であり、かつ、模倣品が指定商品と同一又は類似である場合」です。
不正競争防止法に基づく権利行使
模倣品が、正規品と混同を生じるほど似ている場合や、正規品のいわゆるデッドコピーに該当する場合、この模倣品の販売行為は不正競争に該当するとして、権利行使の対象となることがあります。
近年では、人気アニメ『鬼滅の刃』を連想させるデザインの商品を販売したことが不正競争に該当するとして、不正競争防止法違反で逮捕された事件が発生しています。
参考:「鬼滅の刃」便乗グッズ販売会社社長、不正競争防止法違反で起訴、商標権侵害はどうなのか?
著作権の権利行使
模倣品が著作物を模倣していると裁判所が判断した場合、この模倣品の販売は著作権違反の対象となることがあります。
ただし著作権の権利行使については、そもそも著作物に該当しないとして権利行使を認めない可能性も高く、さらに、裁判所が模倣を認めることも少ないため、模倣品に対して著作権の権利行使が認められる可能性は低いといえます。
税関による水際対策
税関による水際対策としては、知的財産権に基づく差止の申し立てにより、輸入品を差し止めることが可能です。この差止は、日本国内への流通前に止めることができる点で、大きなメリットがあります。
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令和5年の実績では、税関による差止の大半は商標権に基づいています。また、差止された模倣品の約8割は中国から来た品物です。
その一方で、特許権、意匠権、著作権に基づく税関の差止も、僅かながら行われています。
税関の差止において、商標権に基づく差止が非常に多い理由は、税関の職員にとって、商標の類否は特許請求の範囲よりも理解しやすいため、差止すべき製品か否かを判断しやすい、という点が挙げられます。
参考:令和5年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細) : 財務省
特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。
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