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ソフトウェア特許の取り方を知財部の目線から解説!

従来の特許というのは、物の構造や材料など目に見えるものを権利範囲とすることが多かったと思います。最近は、IT技術の発展によりソフトウェアが製品の中心となる企業が増えてきたことで、ソフトウェアを特許で保護するニーズも高まってきました。

今回は「ソフトウェアをどのように保護するか」という全体の話から「ソフトウェア特許の取り方」までを企業知財部の目線で分かりやすく解説します。

<この記事でわかること>
・ソフトウェアの保護方法
・ソフトウェア特許取得のポイント
・有名なソフトウェア特許の事例

(執筆:知財部の小倉さん

ソフトウェア製品の模倣をどう保護する?

テレビや冷蔵庫などのハードウェア製品と異なり、パソコンや携帯のアプリケーションなどのソフトウェア製品はデジタルデータなのでコピーが簡単です。このような製品を模倣から保護するには、どのような手段があるのでしょうか?

秘密保持契約を結ぶ!

共同開発や業務委託などでソフトウェアの秘密情報を共有する相手がいる場合には、秘密保持契約(NDA, 機密保持契約とも言う)を結ぶのがよいでしょう。

この場合、契約違反した相手に損害賠償を請求することができますが、請求する側が秘密の出所などを立証する必要があります。

秘密保持契約の参考例が、経済産業省のホームページでも公開されています。実際の契約書イメージとして参考にしてください。

参考:経済産業省 営業秘密~営業秘密を守り活用する~

著作権を主張する!

ソフトウェアは著作権法でも保護されています。著作権法10条1項9号に著作物の例示としてプログラムの著作物が挙げられています。

ソフトウェアをコピーしたなど著作権を侵害した者に対しては、著作権法112条に基づき差止請求権を行使することができます。また、特許権と同様、民法709条に基づいて損害賠償請求権も行使することができます。

著作権は無審査で創作した瞬間に発生しますが、「相対的独占権」と言って偶然同じソフトウェアを創作した場合には効力が及びませんので、権利行使には注意が必要です。

特許権で守る!

特許法ではソフトウェアは物の発明に含まれることが特許法2条3項1号に規定されています。特許権を侵害した者に対しては、差止請求権(特許法100条)と損害賠償請求権(民法709条)を行使することができます。

著作権と異なり、特許権は「絶対的独占権」ですので、偶然同じソフトウェアを発明した場合であっても効力が及びます。

特許権は特許庁の審査を通過しなければなりませんので、登録するまで約2年かかりますし、費用も約60万円かかります。その分、第三者への牽制力は高いですので特許権の取得をオススメします。

ソフトウェア特許取得のポイント

近年、IoTやAIなどの分野で発明の創出が活発になったため、特許庁は平成30年に審査基準と審査ハンドブックの改訂を行いました。これによりソフトウェア関連発明の審査方針が明確になりました。

参考:特許庁 審査基準及び審査ハンドブックの改訂のポイント

審査ハンドブックによると、「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている場合、発明該当性の要件を満足する」と記載されています。

この考え方を基本として、実際の発明例を見ながら特許出願する場合に気を付けるべきポイントを見ていきましょう!

ソフトウェア発明に該当しないもの

発明例:
文書データを入力する入力手段、入力された文書データを処理する処理手段、処理された文書データを出力する出力手段を備えたコンピュータにおいて、上記処理手段によって入力された文書の要約を作成するコンピュータ。

この例はソフトウェア発明に該当しません。請求項に使用目的は記載されていますが、使用目的に応じた特有の演算又は加工を実現するための具体的手段又は具体的手順が記載されているとはいえないためです。

例えば、「対象文書を解析することで、当該文書を構成する一以上の文を抽出するとともに、各文に含まれる一以上の単語を抽出し・・・」など具体的手順を記載することが必要となります。

特許登録に必要な進歩性の考え方

特許登録されるには、発明が進歩性を有すると認められなければなりません。進歩性が肯定される要素として「出願時の技術水準から予測できない効果」があります。

例えば、特定分野に利用されているコンピュータ技術を他の分野に適用することは普通に行われていますので、進歩性を肯定する材料にはなりません。

また、コンピュータによって得られる、「速く処理できる」、「大量のデータを処理できる」、「誤りを少なくできる」、「均一な結果が得られる」などの一般な効果も進歩性を肯定する材料にはなりません。

それでは、どのような場合に進歩性が肯定されるのでしょうか?

特定分野に利用されているコンピュータ技術を他の分野に適用する場合であっても、この適用に際して所定の技術的条件を設定することで出願時には予測できない効果が発揮された場合などです。以下に、審査ハンドブックに記載の発明例と従来技術を示します。

発明例:
内燃機関の振動センサで検出した振動検出信号を入力値としたときニューラルネットワークから出力されるシリンダ内圧推定信号をシリンダ内圧とみなす内圧検出方法において、学習時及び学習後の入力値のサンプリングレートを内燃機関の回転速度に応じて変更するもの

従来技術:
学習時及び学習後のサンプリングレートを一致させるが、内燃機関の回転速度に応じて変更しないもの

上の例では、「発明例はニューラルネットワークを有効に利用でき、本願出願時の技術常識から導かれる事項でもない」という主張ができます。

また、ビジネスを行う方法に関連するソフトウエア関連発明では、商業的成功又はこれに準じる事実は、進歩性の存在を肯定するのに役立ちます。ただし、この事実が請求項に係る発明の技術的特徴に基づくものであって、販売手法や宣伝等、それ以外の原因によるものでない場合に限ります。

有名なソフトウェア特許

ソフトウェア特許は新しい分野だけに基本特許を早く取るとビジネスで優位性が確保できます。最後に代表的なソフトウェア特許を紹介します。

Amazonワンクリック特許

すでに権利は満了していますが、US5960411の関連特許として特許4937434特許4959817が日本で登録されています。

ワンクリック特許は、Amazonのオンラインショッピングに関する特許です。インターネットで購入する場合、住所、氏名、クレジットカード番号などを毎回入力する必要があります。ユーザーがそれらの情報をあらかじめ登録しておけば、画面上の専用ボタンをマウスで1度クリックするだけで商品の発注から支払い、配送までの手続きを完了できるシステムを特許登録したものです。

Amazonは自社のサービスで本特許にかかる技術を活用しており、Appleに本特許をライセンスしています。他社も欲しがる技術として、オンラインショッピングの初期には本特許による差別化ができていたのでしょう。

Amazon Go特許

新しいAmazonの特許として無人コンビニのAmazon Go特許(特許6463804)があります。サービスとしては、専用のアプリをダウンロードしたスマートフォンを持って入店することでレジに並ばずに商品を購入できるという内容です。

特許としては、ユーザが商品棚に近づいた時と商品棚から離れた時の2回のタイミングでユーザーの手を撮影し、撮影した2つの画像を比較することでユーザが手に取った商品を特定して、ユーザーの購入リストに追加するという内容です。

まだ無人コンビニというサービスが広まっていませんが、将来的に新型コロナ感染対策としてレジを無人化したくなっても同じ方法をとることができません。

まとめ

今回解説したソフトウェア特許は新しい分野ですので、特許庁も審査基準などのルール整備を進めているところです。

特許出願は早い者勝ちですので、Amazonのようにビジネスアイデアを早期に出願しておくことで、他社もライセンスを希望するような強力な特許が登録できる可能性もあります。

特許出願ラボでソフトウェア分野に強い弁理士を探して、自社のビジネスアイデアが権利化できるか相談することをオススメします。

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