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知財戦略の立て方を解説!大企業の知財戦略を徹底比較します

知財戦略

特許庁ホームページに「経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】」という資料が公開されているのをご存知でしょうか?海外企業6社を含む全23社の知財戦略がまとめられた資料です。

自社の知財戦略を立てたいが具体的な活用イメージがわかないという方もいらっしゃると思います。今回は大企業の知財戦略を通じて自社の知財戦略の立て方を解説します!

<この記事でわかること>
・経営戦略に基づく知財戦略の必要性
・知財戦略の事例(デンソー、旭化成)
・自社の知財戦略立案のポイント

(執筆:知財部の小倉さん

なぜ知財戦略が必要か?

経営戦略を達成するためのツールとして

経営者は自社の強みや弱みを分析し、他社と比較することで売り上げや利益を伸ばすよう戦略を立てます。自社の強みを技術やブランドなど知的財産で出そうとした場合、知的財産を保護していないと他社からマネされて自社の強みを失ってしまうかもしれません。

したがって、経営戦略に沿って知的財産を適切に保護することが重要です。知的財産を適切に保護する方針として知財戦略が必要になります。

知財戦略をどう立てるか

いきなり知財戦略を立てるといっても知識や経験がない場合には困ってしまいます。そこで特許庁で公開されている知財戦略の事例を見て、良い戦略を部分的にでも自社に取り入れてはいかがでしょうか?

成功事例から学ぶ大企業の知財戦略

デンソー「異業種の仲間作り」

デンソーはデジタル革新の時代を勝ち抜くためのビジネスエコシステム構築に向けて、異業種との連携や知財を武器にした仲間作りを推進しています。既存事業領域である連続領域と、異業種との連携が必要となる非連続領域との両方で自社優位なビジネスエコシステムの構築を知財の活用を通じてリードすることを狙いとしています。

連続領域では従来から培ってきた技術を中心に他社に活用可能な知的財産ポートフォリオを構築しています。一方で、非連続領域では外部技術を取り込む必要性が高いため、連続領域で築いた業界トップの地位を使って自社と手を組む魅力度を高めています。

権利活用については、2002年に「件から円へ」をキャッチコピーとして出願件数を増やすだけで満足せず権利活用で収益を上げることを重視していました。2006年からは自社の事業戦略に組み込まれた特許ポートフォリオの構築を重視し、2015年からは他社にとって価値の高い特許の取得(特許バランスの優位化)に注力しています。2018年からは異業種との仲間作りを支援する特許の外部調達に力を入れています。

組織体制にも特色があり、既存分野と新規分野で組織を分け、新規分野の組織に戦略担当やライセンス交渉や訴訟の担当を置くなどリソースを使い分けています。また、非注力分野は知財部員の関与を少なくして、開発部門の特許専任者(リエゾン)の関与を多くするなどのリソース配分も調整しています。

さらに人材育成についても、知財部員を他部門へ社内ローテーションさせて技術部門や企画部門などを一定期間経験をさせています。知財部として事業戦略に沿った知財戦略を企画しなければなりませんので、他部門の状況を知るのは大きな経験になります。

旭化成「知財情報の活用を促進」

旭化成は中期経営計画における事業高度化の柱の一つとして、「事業戦略の策定に知財情報等を積極的に活用するIPランドスケープ(IPL)」を推進しています。

同社はIPLを「経営層が事業戦略を策定する上での判断を、知財情報等を活用して支援する活動」と位置づけ、以下3つの目標を設定しています。

  • 現行事業を優位に置く
  • 新事業創出を支援する
  • M&Aを事前、事後に支援する

旭化成におけるIPLの発展としては、2000年以前から知財情報の戦略的活用を目指し、事業ごとに関連する知財情報をデータベース化した戦略データベース(SDB)を構築・普及させてきました。SDBでは他社特許情報に重要度や技術分類などのタグ情報が付与され、他社特許対策を中心に活用されています。

SDBは事業を守ることが目的の「守りの情報活用」ですが、2000年からは経営層に事業戦略を見直してもらうことが目的の「攻めの情報活用」としてIPLをスタートさせています。

2017年ごろまではアナリストのスキルやツールの精度などさまざまな壁があり、社内で注目されない時期だったようです。それでも諦めずにスキルを積み上げ、2017年に事業戦略に知財情報を活用するという動きが一気に業界ないに広がり、知財部からのIPLの必要性の訴え続けて、経営層にIPLが受け入れられたとのことです。

IPLの具体的な実施では、何度も事業部門と知財部門との間で情報交換を行い、実際の事業実態と解析結果に乖離がないかチェックしています。そして解析結果を事業戦略に反映し事業部長へ事業部のアクションプランとして報告されます。

IPLの具体例として、「特許資産価値の経年変化」、「技術動向俯瞰」が特許庁の資料で紹介されています。

特許資産価値の経年変化では、業界を牽引するトップ企業や自社を含む企業群の特許資産価値の変化を示しています。そこで特許資産価値に大きく変化がある企業は他社とは異なる何らかの戦略を取っていることが推測できます。

技術動向俯瞰は、トップ企業の戦略を明らかにする特許マップです。類似の特許がマップ上で近くにプロットされ、多く出願されている領域から順に、赤→黄→緑→青で表示されます。1つの特許マップの中に技術分野ごとに特許群のエリアが表示されます。これによりトップ企業が注力している出願分野も特定でき、具体的な戦略も推測することができます。

IPLに関する業務は従来の知財業務とは異なり、経営コンサルタントに必要とされるようなビジネスセンスデータ解析能力が求められます。旭化成ではIPLの専任組織である知財戦略室を知財部内に設置し、事業企画や研究開発経験者など多彩な人材をそろえています。

自社の知財戦略を策定しましょう!

他社が活用したくなる権利を取りましょう

自社の知財戦略を考える場合、どうしても自社技術の保護に目が向きがちになります。しかし、デンソーの事例でもあったように他社が欲しがる権利をもっていないと競争に勝つことや仲間作りができません。他社が欲しがる権利をもっていればクロスライセンスなどの選択肢を持つことができます。

したがって、他社の事業状況を分析して自社技術の特許出願であっても他社の製品を含むような権利範囲とすることが重要になります。また中間処理など出願から期間が経過している場合、最新の他社情報を入手して適宜権利範囲を補正したり分割出願したりと対策しましょう。

事業方針をチェックするために分析することを忘れずに

特許分析はツールを使いこなすスキルや特許を分類する根気が必要です。苦労して作った分析結果ですので、分析結果自体を自慢したくなると思います。しかし、忘れてはならないのは分析は手段であって、目的はあくまでも事業方針を見直すことです。事業方針の見直しを提言しなければ、経営層は興味を持ちませんので注意しましょう。

社内の仲間作りも重要

旭化成の事例では、経営層に知財部から情報を提供していたにも関わらず17年もの間、社内で注目されない時期が続きました。しかし、そこで腐ることなくIPL活動を続け、IPLが知財業界の方向性と合致したことを追い風に、社内へIPLを浸透させることに成功しています。

活動の有益性が認められるまでは、社内の反応もあまり良くないでしょうから大変苦しいと思います。しかし、経営方針に知財情報を反映させることは知財部門だけでは達成できません。スキルやノウハウを着実に積み上げ、最後は熱意で社内の関係部門を説得しましょう。

まとめ

今回は様々な企業の知財戦略を解説してきましたが、自社の知財戦略に取り入れることができそうな活動はありましたでしょうか?

どの企業も一朝一夕で知財戦略が経営に役立ったわけでなく、10年以上の年月をかけて知財部が試行錯誤したり経営層を説得したりした結果が社内で認められたものです。知財部から開発部門や企画部門など他部門への働きかけを根気よく行いましょう。

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