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標準化・規格化における知財戦略!グローバル市場での特許活用事例!

知財戦略

グローバル市場で活躍する企業にとって、標準化・規格化は避けて通れません。完成品メーカーは標準化を通じて部品コストを削減したい、部品メーカーは標準化によって製品を販売する先を広げたい等、プレーヤーの立ち位置によって様々な思惑があります。

今回は標準化・規格化の中でどのような知財戦略をとるべきか、知財部目線で解説します。

<この記事でわかること>
・標準化・規格化における知財戦略の必要性
・有名企業による知財戦略の事例
・知財戦略を実践するうえで注意すること

(執筆:知財部の小倉さん

標準化・規格化における知財戦略の必要性

知財戦略を語る前に、企業にとって標準化・規格化にどのようなメリットやデメリットがあるのか確認しましょう。メリットとデメリットを把握したうえで、企業としてのメリットを最大化できるように知財戦略を考える必要があります。

本記事では、標準化と規格化を同じ意味で使いますので、「標準化・規格化」をまとめて「標準化」と記載します。

標準化のメリット

メリットとしては、製品の互換性インターフェイスの整合性を確保するということが挙げられます。製品に使用される部品が標準化されることで、大量生産されて生産コストが減少し、部品の価格が安くなります。また、製品の品質も安定することから、ユーザーにとっても安心感につながり、市場の拡大にもつながります。

標準化のデメリット

デメリットとしては、参入障壁の低下競争の激化、標準に準拠しない製品の排除が挙げられます。標準化によって技術がオープン化されると参入障壁が低下し、他社の参入が容易となります。他社が参入してくると価格が低下し、競争が激化します。そして、製品が標準に準拠することが求められますので、自社製品が標準に準拠していない場合、製品を生産するための標準技術を導入するコストがかかってしまいます。

どんな知財戦略を立てるか

標準化された領域は製品の差別化が難しくなるため、標準化されていない領域(競争領域)で競合と差別化を図り、特許も押さえておく必要があります。標準化によって競争領域非競争領域が生まれるので、非競争領域では特許を開放し、競争領域では特許権を行使していくという「オープン&クローズ戦略」が知られています。

特許戦略を立てるために参考にできるサイトとして特許庁の特許戦略ポータルサイトがあります。このウェブページ上からたくさんの資料をダウンロードすることができますので、特許庁が公開している資料を参照しながら標準化に関連する知財戦略の事例を紹介したいと思います。

企業による知財戦略の事例紹介

特許庁から経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】(2020年発行)という資料が公開されており、その中で23社の企業の知財戦略が紹介されています。その中から、標準化に関わる知財戦略について紹介します。

1.ダイキン工業:地球温暖化の特許技術を無償開放

ダイキン工業は、空調機・フッ素化学製品の世界的メーカーとして、150か国以上で事業展開しており、空調事業は世界トップレベルを誇ります。温暖化影響の少ない冷媒への切り換えに向け、従来の冷媒に比べて地球温暖化係数が約1/3の冷媒R32を使用した空調機を開発し、180件の特許を取得しました。

R32空調機に関する特許については、先進国や新興国で無償開放することを発表しました。無償開放に踏み切ったきっかけは、ISO規格化です。冷媒R32をエアコンに用いるためには、ISO規格を変更して新しい分類を設けることが必要でした。ただ、特許はダイキン工業が持っていたので、他社は冷媒R32を使うことができず、ISO規格の変更に関して賛同が得られづらい状況でした。

特許開放することでダイキン工業だけがシェアを伸ばして独り勝ちすると、他社が別の環境負荷の高い冷媒を使用してしまい、自社のビジネスがやりにくくなります。他社も冷媒R32を採用するようにR32の仲間作りという方向に舵を切りました。

また、特許を開放するだけでなく、特許をクローズすることで差別化も図っています。ダイキン工業は省エネ技術や快適性・信頼性を高める技術などで競争力を維持しています。

2.キャノン:知財本部による標準化活動の推進

キャノンでは従来、事業部門がそれぞれ標準化担当のエンジニアを置き活動していましたが、技術の標準化活動は知財活動と関連性が深いため、知財本部内に標準化推進機能を持たせています。以前から知財本部には、標準化関連の情報収集をするグループを置いていたため、それを大きくして組織化したようです。

例えば、他本部から兼務者を迎え入れ、標準化団体に参加した経験を持つエンジニアを兼務という形で参加させています。また、権利化担当部門から標準必須特許(SEP)応用特許を権利化している担当者を兼務させたりもしています。

既に事業化された又は事業化が近い段階では、事業部が標準化活動を主導します。知財本部は主に交渉・ライセンス・訴訟の対応をします。一方、次世代技術については、知財本部が主導して標準化活動を行います。知財本部は中長期的な活動で中心の役割を果たしています。

一部、特許権と標準との対比などの業務は社外弁理士に外注して社内リソースを確保しています。標準必須特許や応用特許を権利化する業務は難しいため、特定の標準で用いられる技術用語を熟知している必要がありますので、社内リソースを用いています。また、パテントプールに参加するか否かの判断や標準化団体との交渉等も全て社内リソースを用いて行います。

3.デンソー:QRコードの国際標準化

QRコードは、「かんばん方式」で知られる自動車部品の生産管理のためにデンソーが1994年に開発しものです。記憶容量と読み取り速度を両立させた初の二次元バーコードで、それまでのバーコードと比較して約200倍の情報を盛り込めるようになりました。

QRコードは、工場内の生産効率化にとどまらず世界の自動車業界、流通や公共サービスといった幅広い産業分野へ利用が広がっています。デンソーはQRコードをISO国際標準化するために、委員会活動に人材を送り込み、自社の利益にとどまらず長期的な視点で標準化に貢献してきました。また、QRコードが漢字を効率よく表現できる特徴を持っていることから、中国など漢字文化の国からの支持も得られたようです。

知財戦略としては、誰でも自由にQRコードを作成、印刷できるようQRコードの必須特許を無償開放して普及を図りました。一方で、読み取り技術の特許は開放せず、デンソーが販売するQRコードリーダーで収益を確保する戦略としました。

QRコードが普及することでQRコードリーダーの数も増えていくため、デンソーはQRコードの認識やデコード部分を差別化領域としました。このような知財戦略に基づき、QRコードリーダーやソフトウェアを有償で販売した結果、デンソーはQRコードリーダーの国内シェアトップを獲得しています。

知財戦略を実践してみましょう

これまで、標準化に関連する特許戦略の意義や企業での戦略実行の事例を見てきました。ここでは自社で標準化の活動をやるときに事前に知っておくとよい情報を解説します。

標準化プロセスの全体像を把握しましょう

経済産業省から公開されている資料で、標準化のプロセスと知財・標準化戦略(経済産業省)というものがあります。この資料では、JISの制定プロセスや国際標準の制定プロセスが分かりやすく図解されています。また、標準化の中でとりうる知財戦略として、オープン&クローズ戦略の類型3つが事例とともに載っています。

標準必須特許(SEP)に関する問題が起きてしまったら

そして、特許庁の標準必須特許ポータルサイトの中には、標準必須特許のライセンス交渉に関する手引きが公開されています。この手引きは「標準必須特許(SEP)を巡る問題になじみのない中小企業等に対して助言をする際に、本手引きが活用される」ことを想定しています。具体的には、標準必須特許を巡る課題、ライセンス交渉の進め方、ロイヤリティの算定方法などが記載されています。

また、特許庁は判定というサービスを提供しており、標準必須特許の権利範囲に製品が含まれるかという判断も第三者として1件4万円で安価に行ってくれます。当事者同士で揉めた場合に、このような制度を利用してもよいでしょう。

まとめ

今回は、標準化に関する特許戦略について、基本的なオープン&クローズ戦略、企業での事例、特許庁で公開される有用な情報などを紹介しました。

標準化は戦略的に進めなければ、自社で開発した技術を無料で使われてしまい、事業で損をしてしまうかもしれません。知財の専門知識だけでなく、ライセンスなどの交渉術も重要であることが分かりました。

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