グーグル検索エンジンを知財部目線で解説!身近なIT特許シリーズ!
グーグル(Google)のサービスや製品は私たちの身の回りにたくさんあります。それらがどのような特許で守られているか知っていますか?
今回はグーグルの検索エンジンに関する特許事例を解説しながら、グーグルの特許戦略も知財部目線で解説します。
<この記事で分かること>
・グーグルの検索エンジンに使われている特許の内容
・アンドロイド(Android)のオープン&クローズ戦略
・グーグルから学べる知財戦略
(執筆:知財部の小倉さん)
検索エンジンとは?
検索エンジンはウィキペディアによると、「インターネットに存在する情報を検索する機能およびそのプログラム」と定義されています。検索エンジンは、グーグルやヤフーなど様々な企業が開発していますね。
グーグルのホームページを開くと、以下のような検索画面が現れます。そして検索窓にキーワードを入力して検索を実行します。
検索することを「ググる」という造語ができるくらいグーグルの検索エンジンは有名となりましたが、具体的にはどのような技術が検索エンジンに使われているのか特許を見てみましょう。
グーグル(Google)の検索エンジン特許事例
超有名!ページランク特許
グーグルの検索技術と言えば、ページランク(PageRank)が有名ですね。
ページランクとは、ウェブページの重要性を決定するためのアルゴリズムで、創業者のラリー・ペイジの名前を掛けたとも言われています。どのようにウェブページの重要性を測るかというと、学術論文と同じように被引用数が多いと重要度が高いと判断します。
例えば、多くのウェブページからリンクが張られているサイトは有益なサイトであり、質の良いサイトからリンクをもらっているサイトは質が良いという風に重要性を測ります。
それでは、特許ではどのように権利範囲を特定しているのでしょうか?
日本では「ドキュメントをスコア付けする方法」(特許第4603556)がグーグルによって登録されています。
【請求項1】
出典:J-PlatPat 特許第4603556
ネットワークを経由してクライアントと接続されるサーバを用いたシステムであって、
前記サーバは、前記クライアントによって使用可能な検索エンジンを含み、
前記検索エンジンは、
コンピュータに読込及び格納可能なデータを含む複数のドキュメントから、ドキュメントを特定し、
前記ドキュメント中で表示される広告に対応する広告ドキュメントのトラフィック量に基づき、前記広告の広告主の質に関するファクターを決定し、
前記広告主の質に関するファクターに基づいて前記ドキュメントのスコアを生成し、
前記スコアに基づいて前記ドキュメントを他のドキュメントとともにランキングすることを特徴とするドキュメントをスコア付けするシステム。
この特許は、検索されるウェブページのランキングを広告主の質(トラフィック量)に基づいて決定しています。ここでのトラフィック量というのは、アクセス数と同じような意味です。
また、特許情報の中にグーグルのSEOの考え方も隠れています。例えば、段落0095に多数のユーザーが特別なウェブページをブックマークしたり、お気に入りから頻繁にアクセスしていれば、そのウェブページが重要である指標になるということが書いてあります。
「OK、グーグル!」音声検索のインターフェース
もう一つグーグルで有名なのは、音声検索ですよね。スマートスピーカーに声で音楽をかけてもらったり、タイマーをかけてもらったりできます。
そのような技術を支えているのが「Voice interface for a search engine」(米国特許7027987)です。音声による検索クエリから検索結果を提供する方法に関する発明です。
Claims
1. A method for providing search results, comprising:
receiving a voice search query from a user;
deriving one or more recognition hypotheses from the voice search query, each recognition hypothesis being associated with a weight and including one or more terms;
constructing a weighted boolean query using the recognition hypotheses, the constructing including:
determining a length of a shortest recognition hypothesis,
pruning a length of each recognition hypothesis up to the length of the shortest recognition hypothesis,
determining a length of a longest pruned recognition hypothesis,
selecting a number of recognition hypotheses based on one or more query parameters,
determining term weights, and
forming a weighted boolean query;
providing the weighted boolean query to a search system; and
providing results of the search system.
本特許によると、ユーザーが検索クエリを話すと認識仮説を導き出し、認識仮説を使ってbooleanクエリを構成し、booleanクエリを使って検索結果を提供します。これにより、関連性の高い検索結果を提供することができます。
グーグルのオープン&クローズ戦略
オープン&クローズ戦略とは
特許戦略で最も有名な戦略の一つにオープン&クローズ戦略があります。グーグルもこのオープン&クローズ戦略を駆使して特許戦略を立ててきました。
オープン&クローズ戦略とは、一部の特許を他社に開放(オープン)することで市場拡大を図りつつ、自社の独自技術は特許で独占(クローズ)して市場の中で優位な状況を作り上げるというものです。
アンドロイド(Android)でオープン戦略
グーグルはスマートフォンなどに入っているOSとしてアンドロイドを開発しています。そしてアンドロイドのソースコードをオープンにしてOSを普及させています。
オープンソースにしたことで、Samsung製スマホのGalaxy、Sony製スマホのXperiaなどメーカーを問わず様々な製品にアンドロイドOSが利用されています。
検索エンジンでクローズ戦略
グーグルはアンドロイドを普及させるために無償でソースコードをオープンにしました。アンドロイドを搭載した製品は目論見どおり普及したのですが、このままではグーグルには何の利益も無さそうに見えますね。
ここでグーグルの戦略が発揮されます。何と先ほど紹介した特許で守られているグーグル検索エンジンをはじめとしたアプリの利用料を得ているのです。OSは無償でも、アプリは有償ということですね。
グーグルの特許戦略から学べること
自社の強みは特許で保護する
グーグルは検索技術を強みとして、情報の重要度を決める方法や音声検索など独自開発を行っていました。そして開発の成果はしっかりと特許で保護していましたね。他社との差別化技術はしっかりと特許出願しておきましょう。
オープン技術で市場を作り、自社技術へ誘導する。
そして自社の検索エンジンに誘導する入口をPCのホームページだけでなく、スマホのアプリを入口として集客することに成功し、グーグルの検索エンジンに人を集めることで広告収入を得たり、スマホアプリの利用料を得ていました。
多方面から集客するために、無料サービスを提供して、自社技術を使ってもらうチャンスを増やすという考え方はどのような企業でも参考になると思います。
まとめ
今回は身近なIT特許として、グーグルの検索エンジンに使われている特許を紹介し、さらにグーグルのオープン&クローズ戦略も解説しました。
グーグルのようにオープン&クローズ戦略をビジネスで駆使するためには、まず自社の独自技術を特許で保護することが必要です。特許戦略も含めて知財の専門家である弁理士に相談しましょう。
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特許関係の仕事に従事して10年。5年間は特許事務所で500件以上の出願原稿の作成に従事。その後、自動車関連企業の知財部に転職し、500件以上の発明発掘から権利化に携わってきました。現在は、知財部の管理職として知的財産活用の全社方針策定などを行っています。
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