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特許出願中の表示の意味とは?表示方法やメリットを解説!

「特許は登録しないと意味がない」と思っていませんか?実は、「特許出願中(申請中)」の段階でも一定の効果があります。それを知らずに特許出願数を減らしてしまうと損をしてしまいます。

今回は「特許出願中(申請中)」と表示する意味やメリットを解説しつつ、さらに表示する上で注意すべき点も企業知財部の目線で解説します。

<この記事でわかること>
・「特許出願中」と表示する意味
・「特許出願中」表示のメリット、デメリット
・弁理士に相談して表示効果を向上

(執筆:知財部の小倉さん

「特許出願中」とは?

特許出願中(申請中)という表示を見ることがありますが、どんな意味か改めて聞かれると分からないですよね。まずは基本を理解しましょう。

特許出願は完了しているが、特許登録されていない状態

「特許出願中」「特許申請中」などの表記は、特許出願は完了しているものの、登録や拒絶などの審査結果が出ていない状態を意味します。また、特許出願は審査請求を行わないと審査が開始されませんが、審査請求前の状態も含みます。

ただし、特許が登録されていなくても拒絶査定が確定したり、出願を取り下げたりして登録できなくなった場合には「特許出願中」などの表示も無くす必要があります。

特許権者は登録特許を表示する努力義務がある

特許法187条には、「特許権者は製造物やその包装に特許表示をするように努めなければならない」という内容が規定されています。具体的な表示方法は、特許法施行規則68条に規定されており、物の発明であれば、「特許」の文字と「特許番号(特許第●●●号)」を表示する必要があります。

特許表示の目的は、特許権の対象であることを明示して権利侵害を未然に防ぐことです。特許出願中の時から表示しておくことで、他社による自社技術の模倣を未然に防止しやすくなります。

特許出願中と表示するメリット、デメリット

次は実際に特許出願中の表示をした場合のメリットとデメリットを解説します。以下を参考にして自社での出願中特許の活用を促進していきましょう。

価値のある技術として顧客に売り込める

商品に「特許出願中」という記載があるとどのようなイメージを持たれるでしょうか?一般的には「特許を取得するくらい先進的な技術が使われている」など高い技術力のアピールになります。

企業など顧客に商品を売り込む際に、「本技術は特許出願中です」と付け加えることで、「この会社は特許のことも考えている」「この技術で他社と差別化しようとしているんだな」と良いイメージにつながったり、印象に残りやすくなります。

特許は出願から1年半は公開されないため、そのような時期には出願番号(特願20●●-●●●)も記載しておくことで信頼感が増します。

競合他社の模倣を牽制できる

競合他社の立場では、特許出願中の技術と同じものを開発することは将来的なリスクとなります。もし特許が登録されれば、製品の製造や販売が差し止められてしまうため、早い段階であれば回避したいと考えます。

しかし、特許が公開された出願から1年半後になると競合他社も開発が進んでいますので、「特許登録になるか分からない」と理由を付けて類似製品を開発してしまう可能性が高くなります。

つまり、特許出願中という情報をあえて早期に周知しておくことで、保守的な競合他社が自社技術を模倣したり、類似品を開発したりしないよう牽制できます。

出願している事実が公開前に知られてしまう

デメリットは、出願している事実が他社に知られてしまうことです。本来、特許は1年半後でないと他社が出願の事実を把握することはできません。「特許出願中」の表示により、自社が注力している技術分野や技術内容を他社に教えてしまうことになります。

ただ、商品の情報と一緒に記載するのであれば、技術情報も開示していると思われますので、他社に知られて困ることはないでしょう。

商品に出願中のマークを表示すべき?

結論としては「表示すべき」です。しかし、表示方法を間違うと刑事罰が科せられる可能性があります。最終的には弁理士に相談することをオススメしますが、ここでは概要を見ていきましょう。

どうやって表示すればいい?

まず、絶対にやってはならないことは「登録特許であると記載しない」ことです。あくまでも「出願中」ですので、登録された状態ではありません。

特許法188条で「何人も、特許に係る物以外に特許表示をすること、または紛らわしい表示することをしてはならない」と規定されています。

一般的には「特許出願中」「特許申請中」「特許出願済」のように表示するのが無難です。「特許技術」のように表示すると、出願中なのか登録済なのか分からず、誤って登録特許と認識されるおそれがあります。

英語で「特許出願中」はどう書く?

顧客が海外企業である場合には、英語で表示したいでしょう。英語で「特許出願中」は「PAT.P」と記載します。「Patent pending」の略で、 pending は特許庁に係属中という意味です。登録されると「PAT」という表示になります。

ここで注意すべき点は、特許は各国で取得するものですので、輸出先の国で特許出願をしていない場合には「Patent pending」の表示は削除しておきましょう。

虚偽表示は刑事罰なのでご注意を!

もし、「登録特許である」という虚偽表示をしてしまったら、3年以下の懲役または300万円以下の金を科されることが特許法198条に規定されています。

例えば、特許を取得した後に登録特許の表示をし、権利が失効した後も継続して表示をした場合に刑事罰の対象となります。

他社が出願中の自社技術をマネしてきたら?

実際に特許出願中の表示をしたにも関わらず、他社が自社技術を模倣した場合にどのような対処をすればよいのでしょうか?

まずは特許出願中であることを連絡しましょう

出願公開前である場合、他社も知らずに同じ技術を開発しているかもしれません。まずは、その技術について自社が特許出願済みであることを知らせましょう。

コンプライアンスの意識がある企業であれば、将来の特許侵害リスクを避けるため設計変更を行うなどの対応をするでしょう。

出願公開後に警告して補償金請求権の行使準備

他社による模倣が出願公開後である場合、警告状を出して補償金請求権(特許法65条)を発生させましょう。補償金請求権とは、出願公開から登録までの間に特許発明を実施した者に実施料を請求できる権利です。

補償金請求権を行使するためには、出願公開後に警告する必要があったり、特許が登録される必要があったりと法律の要件を満足しなければなりませんので、弁理士に相談しながら対応すると良いです。

審査が始まったら補正して他社の模倣品を権利に含む

上記の対応をしても他社が模倣をやめない場合、「どうせ登録されないだろう」と特許性を甘くみている可能性が高いです。

この場合には、出願中特許の権利範囲が他社製品から外れないよう拒絶理由の対応時に補正する際は注意しましょう。ここでも弁理士に相談し、面接審査などを使って確実に広い範囲で特許を登録しましょう。

【まとめ】「特許出願中」は活用できる

今まで出願中と表示するメリットや他社への対処を解説してきましたが、結論としては特許は登録前の状態でも十分に利用価値があると言えます。「特許出願中」をスムーズに活用するため、以下の点に意識して出願しましょう。

特許を1日でも早く出願する

特許は先願主義ですので、同じ内容であれば1日でも早く出願した者に特許権が与えられます。出願から1年半までは自社の特許出願が公開されていませんが、他社の特許出願も公開されていません。

ひょっとしたら他社のほうが先に出願を完了しているかもしれません。自社開発が完了したらすぐに特許出願ができるように開発当初から特許事務所や弁理士に相談しておくと良いです。

出願前にしっかりと先行技術調査をする

特許を出願したと言っても、明らかに公知技術と比べて進歩性のないものは登録されませんので、他社への牽制力もありません。

出願前に類似の特許文献がないか調査をし、公知技術と差別化した技術ポイントを出願明細書に記載しておきましょう。「登録されるかもしれない」と他社に思わせることができれば、他社もその技術を回避しますので牽制力が高くなります。

出願内容や他社対応も含め弁理士に相談する

発明の特許性を特許庁の審査官に認めさせる出願書類を作成したり、補償金請求権を発生させるために法的要件を満たしたりということは、特許事務所や弁理士でないと難しいでしょう。

いざ出願する段階になって弁理士を探していては他社よりも出願が遅くなってしまいますので、開発当初からパートナーとして信頼できる特許事務所を見つけておきましょう。

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