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【セカイチ知財-Vol.4-】特許についての誤った常識(前編)

世界一分かり易い知財戦略

世の中は知財に対する迷信や誤解で満ちています。

誤解したままで知財に注ぎ込むお金は無駄金です。

「セカイチ知財」は名古屋に事務所を構えるブライテック特許事務所が、知財戦略を世界で一番分かり易く解説します。

「世界一分かり易い知財戦略(セカイチ知財)」を読んでいれば、知らない間に正しい知財戦略をイメージできるようになります。

(文責:ブライテック特許事務所所長 弁理士三林大介)

これまでのおさらい

前回まででは、規模の小さな会社が特許や商標を出願しようとする時に、先ず初めに考えて頂きたいことについてお話してきました。

しかし、特許に関して世の中に蔓延っている誤った常識に囚われていると、なかなか腑に落ちない感じがするかも知れません。

そこで、第4話および第5話では、特許に関する世の中の誤った常識について、幾つかお話ししようと思います。

特許についての誤った常識(前編)

【特許に関する誤った常識:その1】

特許を取っておけば、特許を使うことができる。

このような誤解をしている人は実に多いですが、実際には間違いです。

特許法には、簡単に言うと、以下の2つのことが書かれています。

  • ①特許を持っている人(または会社)は、特許を使っている他人に対して「使うのをやめろ」と言うことができる。
  • ②他人に特許を使われて損害を受けた場合には、損害を賠償させることができる。

つまり、特許とは「他人に使わせないようにする権利」であって、自分で使えるようにする権利ではないのです。

このことは(商標を除く)意匠や実用新案の場合も同様です。

こう説明すると、「他人に使わせない」=「自分だけが使える」じゃないかと思うかも知れません。
しかし特許の場合には、かなりの高い確率で、

  • 「他人に使わせない」
  • 「自分だけが使える」

が同じにはならないのです。

この理由は、1つの製品(あるいは1つの技術)に対して、複数の特許が成立する場合が多いからです。
1つの製品に複数の特許が使われる場合があることは、何となく納得して貰えるのではないかと思います。

また、技術は絶えず進歩していくものであって、ある技術をベースにして改良技術が生まれ、その改良技術をベースに更に改良技術が生まれることを繰り返していきます。

従って、たとえば、ある技術の特許をA社が取って、その技術の改良技術の特許をB社が取った場合、A社は(B社の特許に引っ掛かってしまうので)改良技術を使えません。

また、B社は特許を持っているので改良技術を使えるのかというと、やっぱりB社も使えません。

何故かというと、B社の改良技術はA社の特許技術を改良したものなので、改良技術を使うと、ほぼ確実にA社の特許技術を使うことになってしまうからです。
結局、この場合は、(ライセンスなどをしない限り)改良前の古い技術をA社が使えるだけです。

このように、特許を取った場合には、他人に向かって「その特許を使うな」と言うことができるようになるだけで、その特許の技術を使えるとは限りません。
この点は、誤解している人が特に多いように感じます。

【特許に関する誤った常識:その2】

特許のことは、アイデアが生まれてから考えれば良い。

このことは世の中の常識です。

大企業でも「アイデアが生まれたら特許を出しておく」というスタイルでやっていますので、世の中の常識に沿ったやり方をしていることになります。

しかし、これで何とかやっていけるのは大企業だからであって本当は間違いです。
規模の小さな会社にとっては、この間違いはほとんど致命的です。

規模の小さな会社は、特許に関して次のような姿勢で臨むことが大切です。先ず、何度もお話ししているように、特許は儲けを守るために存在します。

ですから、特許のことを考えるのは、大きな儲けが出ている(あるいは大きな儲けが見込める)ことが前提となります。

大きな儲けが出ていれば、当然、他社もその儲けを狙ってきますから、儲けを守らなくてはなりません。

儲けを守ろうとする際に、他社に向かって「やめてくれ」と要求できる権利(特許)は極めて有効なツールになります。

自由競争を原則とする世の中では、特許以外に有効なツールは存在しないと言っても良いくらいです。
ですから、大きな儲けが出ている以上、「アイデアが無いから特許を取れない」などと言っている場合では無いのです。

たとえば、御社の事業に有力な他社が参入してきたことを想像してみて下さい。
そうなってしまったら儲けが半減しても不思議ではありません。

そう考えると、「アイデアが無いから・・・」などと言っている場合では無いことが実感して頂けると思います。
ついでに言うと、大企業は1つの事業でも巨大な儲けを出しています(出し続けなければ潰れてしまいます)。

ですから、その巨大な儲けを守るためには、どんなことでもやろうとします。

膨大な数の特許を出すのはその一環ですし、意匠まで出願しています。

世の中では「意匠や実用新案も役に立つ」などと言われることもありますが、実際にはほとんど役に立ちません。

それでも、「もしかしたら役に立つかも知れない」と思って、意匠のようなものまで出願するのです。
これが知財の現場の本当の姿です。

「アイデアが無いのに特許なんて取れるわけがないだろう」と思われるかもしれません。
しかし、腕の良い弁理士にかかれば、アイデアが無い所からアイデアを生み出して、特許を取ることも不可能ではありません。

これも世の中で誤解されているのですが、発明者から説明して貰った発明の内容を出願書類に纏めることは、弁理士の本当の仕事ではありません。

本当に腕の良い弁理士の真骨頂は、アイデアを引きずり出す所にあるのです。

大企業の場合は、アイデアが出た時点で次々と特許を出しておくことで、儲けが出た時点では多数の特許を出願済みという状況を作り出すことが可能です。

しかし、規模の小さな会社は、出ている儲け(あるいは、今にも出そうな儲け)を守るために、アイデアが無くても特許を出さなければならないのです。

ですから、規模の小さな会社こそ、腕の良い弁理士に頼む必要があると言えます。

次回の第5話でも、特許に関する誤った常識を幾つかお話ししようと思います。

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