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ソフトウェア特許とは?事例をまじえて徹底解説!

コンピュータプログラムや、プログラムによって機器を制御するシステムなどのソフトウェア特許は、これまでに数多く出願されてきました。

近年、AIやIoTなどの第4次産業革命とともに、ふたたび注目されてきています。

そこで今回は、ソフトウェア特許の対象や、注意点について解説します。

執筆:金原正道 弁理士

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ソフトウェアの特許要件は?

特許となる発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」です。
ソフトウェアも、こうした特許法で定める要件を満たす限り、特許になります。

日本の特許制度では、先に出願をした人が優先的に特許の権利を取得できるという、先願主義(特許法第39条)を採用しています。

原則として、出願日を基準として特許にするかどうかの審査が行われます。
そして特許を取得するには以下の要件を満たしていることが必要になります。

  •  1 発明であること(特許法第29条)
  •  2 新規性(特許法第29条第1項)
  •  3 進歩性(特許法第29条第2項)
  •  4 産業上の利用性(特許法第29条)
  •  5 先願であること(特許法第39条)
  •  その他(特許法第32・36・37条等)

特許になる発明は?特許の要件についてもわかりやすく解説します!

「発明」とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」とされており、計算方法、ゲーム方法などの人為的取り決めや、経済法則などはその対象から外れます。

コンピュータのプログラム言語も、人為的な取り決めであるため、特許にはなりません。

古くは、1957年(昭和32年)の東京高裁の判決で、「電柱及び広告板を数組とし、電柱につけた取付具により、一定期間移転巡回して掲示させ、広告効果を高める方法」について、自然法則を利用しないものであり、発明に該当しないとされた有名な事件があります(電柱広告方法事件)。

ただ、これを現代に、コンピュータのハードウェアと、危機を制御するソフトウェアで実現するシステムにしたら、特許になるかは別として、発明になる可能性があります。

ソフトウェア特許の沿革

ソフトウェア特許は、1970年代頃から出願されてきました。

現実にソフトウェア関連の出願が増大するに及んで、日本の特許庁においても審査の取扱いを統一する必要に迫られ、「コンピュータ・プログラムに関する発明についての審査基準」が公表されたのが1971年です。

1982年になって、「マイクロコンピュータ応用技術に関する発明についての審査運用指針」が定められ、ソフトウェア関連発明の一部が特許により保護されることが明らかになりました。

1997年の「特定技術分野における審査の運用指針」(コンピュータ・ソフトウェア関連発明)では、コンピュータ・ソフトウェア関連発明についての審査の運用指針が公表されました。

新たに、プログラム又はデータを記録した媒体が、物の発明として認められるようになりました。

基本的に、ソフトウェアは特許法により保護されるものとなりましたが、ハードウェア資源に対する制御または制御に伴う処理を行う発明であること、ハードウェア資源を用いて処理すること、などの基本原則は守られてきています。

システム特許とはどう違う?

いわゆるシステム特許は、コンピュータシステムの関連技術の特許を指す言葉として使用されており、ソフトウェア特許の一分野であるといえます。

パーソナルコンピュータや周辺機器、通信回線、サーバーなどのハードウェアを使っている点で、システム特許といわれますが、具体的にソフトウェアによる情報処理が行われる点ではソフトウェア特許に含まれます。

ビジネスモデル特許とはどう違う?

インターネット等を利用したサーバーやウェブサイト等により、ビジネス方法を実現するシステムの特許は、ビジネスモデル特許と呼ばれます。

これらは、ハードウェアや通信回線と、情報処理を行うソフトウェアやサーバーなどを組み合わせたシステムについての特許で、システム特許の一分野であるといえます。

どんな発明がソフトウェア特許になるか?

ソフトウェア特許は、電子計算機に対する指令により、ある結果を得ることができるように組み合わされたプログラムについての特許です。

プログラムそのもののほか、プログラムを記憶した情報記録媒体や電子計算機などもソフトウェア特許です。

ソフトウェア特許も、その他の特許と同様に「自然法則を利用した技術的思想の創作」である必要があります。

特許庁の審査基準によれば、コンピュータ・ソフトウェアを利用するシステムは、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている場合には、発明であり、特許の対象になるとされています。

「ハードウェア資源」とは、処理、操作、機能実現に用いられる物理的装置または物理的要素のことです。

ソフトウェア単体で、権利請求をすることはできますが、ソフトウェア自体は無形のデータであり、なんらかのハードウェアを使用して情報処理をするものであることが必要です。

コンピュータソフトウェア関連発明に係る審査基準及び審査ハンドブックの改訂のポイント(特許庁)[PDF]

たとえばこんなシステムがソフトウェア特許に

たとえば、エンジンの燃焼効率を高めるために、燃料供給量に対して空気の供給量を適正に制御するマイコン等のソフトウェアは、特許の対象になるでしょう。

さらに、エンジンの制御をソフトウェアで実現する制御方法、制御装置、制御プログラムも、特許の対象になります。

念のため、ここでいう「特許の対象になる」とは、「発明である」という意味です。新規性や進歩性など、他の要件を満たさなければ特許にはなりません。

計算方法やゲーム方法は、人為的取り決めでしかないため、発明ではないと最初に述べました。

これについても、ソフトウェアがハードウェアと具体的に共働して情報処理を行い、それまでにない技術として実現することができれば、特許の対象になります。

アルゴリズム特許について、議論になることがあります。

コンピュータ・ソフトウェアを用いた情報処理によって、なんらかの課題を達成する方法をアルゴリズムといいます。

アルゴリズムを特許にしようとした場合にも、審査基準通りに、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されるかどうかが、判断のポイントとなります。

さらに、「プログラムに準ずるもの」、たとえば、コンピュータに対する直接の指令ではないが、コンピュータの処理を規定するデータ構造(データの有する論理的構造)も、ソフトウェアと同様に扱われます。

このため、データ圧縮アルゴリズムを用いたプログラム、データ圧縮装置、データ圧縮方法、データ構造を有するデータ、についても、ソフトウェア特許の対象となります。

ソフトウェア特許の取得は難しい?

ソフトウェア特許を取得しようと考えたら、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面などを、他の分野の特許出願と同様に準備しなければなりません。

専門分野の発明者と、専門の弁理士とが作業をしますので、特別にこの分野の出願が難しいということはありません。

ただ、その時々で、日本でも米国やEUでも、積極的にソフトウェア特許の保護を認めるか、審査を厳しくするか、やや傾向が変わることがあります。

第4次産業革命に対応して、現在の特許庁は積極的には見えます。

特許取得のための注意点

ソフトウェアを特許で保護する場合には、どのように特許請求の範囲を組み立てるかで、頭を悩ますことが多いかもしれません。

ソフトウェアは目に見えない無形のものであるためです。

つまり、特許が成立しても、第三者がその権利を侵害したかどうかが、やはり目に見えにくいものであるためです。

特に、入力・内部処理・出力ソフトウェアがハードウェアの内部で処理する部分は目に見えず、ブラックボックスです。

入力するデータと、出力するデータを中心に権利範囲を画定し、権利行使がしやすい特許出願をすることが重要になるでしょう。

プログラム、プログラムを記憶した記憶媒体、プログラムが記憶され動作する処理装置など、さまざまな角度からの権利請求も必要です。

第三者が模倣できないようなソフトウェアの場合など、あえて秘密にしておくために特許出願はしないということも検討するべきでしょう。

特許出願をする場合にも、公開されることを前提として、具体的には記載しつつ、詳細な全容を公開しすぎないこともポイントです。

侵害されたら訴えることはできる?

ソフトウェア特許について、特許権が成立すれば、当然に独占排他的な権利となります。

第三者が許諾もなしに実施した場合には、差し止め請求や、損害賠償請求が可能です。

ただし、権利行使のためには、相手が侵害をしたこと、つまり特許請求の範囲に記載した内容を実施したことを立証しなければなりません。

コンピュータの内部で処理される無形のプログラムという性格上、プログラム、装置、システム全体、システムの一部分などの多様な権利請求が重要であることは、権利行使がしやすいように、あらかじめ侵害を特定し、立証しやすい記載をしておくということなのです。

ソフトウェアは特許ではなくオープン化すべきという議論も出るが? 

1990年代から2000年頃にかけて、ソフトウェアは特許で保護すべきか、著作権で保護すべきかといった議論がありました。

プログラムは著作物であり、著作権法で保護されます。

特許にはならないようなプログラムであっても、その記述には著作権があり、勝手にコピーなどはできません。

近年では、AIのアルゴリズムなどは、技術の進歩のために、特許にするべきではないという声もあります。

米国のグーグル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトなどは、機械学習に用いるソフトウェアをオープンソース化して公開しています。

しかし実際にはこれらの企業も、AI関連の技術やソフトウェアの特許出願を行い、AI特許の出願件数は、各国でも日本でも急増しています。

また、各国の特許庁では、ソフトウェアやAI技術を特許で保護することに変わりはなく、そのような議論などありません。

つまり、秘匿化するのも、特許化するのも、オープンソースかするのも、標準化するのも、各社の知財に関するビジネス戦略であることに間違いありません。

あえてオープンにして無償で提供し、あるいは業界の標準化をしようとすることも、知財戦略であり経営戦略であるということです。

まとめ 

IoT関連技術やAI等の新たな技術の台頭に伴い、ソフトウエア関連発明が多くの分野で発明され、特許出願が行われています。

従来の出願業務のほか、弁理士は、事業活動に有用な技術上の情報の保護に関する相談や、日本産業規格その他の規格の案の作成についての相談もできることとされました(平成30年改正弁理士法)。

ソフトウェア特許はもちろん、秘密情報などのデータやシステムの取り扱い、知財戦略全般について相談できる特許事務所がふさわしく、心強い味方になってくれるのではないでしょうか。

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