商標登録をするとどうなる?メリットや事例をご紹介
自社が提供する商品・サービスの商標登録を検討してみよう
商標は、あらゆる商品・サービスに使用されています。
ブランド名といった商標は、自社だけが使える状態を維持することでその価値を発揮します。
商標を他人に真似されないためには、商標登録が必要です。
本記事では、商標登録のメリット・デメリット、自分で登録する方法、手続きにかかる費用などをまとめました。
ぜひ自社ブランドの保護のために参考にしてください。
商標とは?どんな役割がある?
商標は、商品・サービスをだれが提供しているのか・品質は安定しているのか・どのような特徴があるのかを示す役割を担っている、重要な目印です。
商標のうち、出願・登録されたものが登録商標と呼ばれ、
- 提供する商品・サービスが属する区分において自社専用の商標となる
- 他人による自社の登録商標の使用をやめさせられる
といった役割を担います。
自社の商標を登録することで、商品・サービスの価値を高められます。
商標登録のメリット3つ
商標登録を行うと
- 登録商標を独占的に使用できる
- 登録商標の第三者による使用を止めさせられる
- 自社商品・サービスのブランド価値を高められる
などのメリットを得られます。
いずれもビジネスの継続において重要です。
具体的にどのようなメリットがあるのか、リスクを回避できるのかをご説明します。
1.登録商標を独占的に使用できる
商標登録を行うことで、特定の区分(商品カテゴリーのこと)における自社商品・サービスの商標を独占的に使用できます。
また、他人が自社商品・サービスに関する商標を登録し、商標が自身で使用できなくなるという心配がなくなります。
自社の商標を使用できなくなるというリスクを回避するためにも、商標登録は必要であると言えるでしょう。
2.登録商標の第三者による使用を止めさせられる
商標登録後は、与えられた独占排他権を他人に対し行使可能となります。
これにより、他人がコピー品を販売した場合などに差止請求や損害賠償請求を行えます。
権利行使をすることで、登録商標を自社しか使用していない状態を維持できるのです。
逆に権利を取得していなければ、他人の販売を差し止められず、場合によっては市場シェアを奪われ、自社商品・サービスの提供が難しくなることを覚えておきましょう。
3.自社商品・サービスのブランド価値を高められる
ブランドの価値を高めるために、商標登録は不可欠です。
自社だけがその商標を使用できる状態であれば、商品・サービスの品質向上に伴い、ブランドの価値が高まります。
例えばアパレル業界におけるハイブランドは、彼らだけがその商標を使用して製品を販売することで、ブランドの価値を保持していますよね。
逆に模倣品が存在した場合、消費者に対しブランドの価値の提供が難しくなります。
商標登録のデメリット2つ
ほかの知的財産権と同様、商標権の取得・維持・権利行使には手間・費用がかかります。
商標権を保有していれば、他人が模倣を当たり前のように止めてくれるわけではありません。他人に対し権利を行使し、自社の商標を守る必要があるのです。
具体的にかかる手間・費用について
- 登録・維持
- 独占使用(権利行使)
の2つに分けてご説明します。
1.登録・維持に手間と費用ががかる
商標登録にかかる費用は、以下の通りです。
- 出願料:3,400円+(8,600円×区分数)
- 登録料(10年分):32,900円×区分数
※価格は2022年7月時点のものです
登録を行う区分が一つのみであれば合計金額は44,900円です。
これらは手続きにかかる費用であり、弁理士に代行依頼する場合は、外注費用が別途かかります。
外注をするかは、事前の調査や手続きにかかる手間を考慮して検討しましょう。
個人での出願と代行依頼の比較時のポイントは、本記事の後半でご紹介します。
また商標権を維持するには、10年毎に更新登録料(43,600円×区分数)を支払わなければいけません。
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2.独占使用のための手間と費用がかかる
自社の商標権を保持し続けるためには、他人が模倣した際、権利行使をする必要があります。
そのために
- 他人の商標使用状況の調査
- 権利行使の方法に関する弁理士事務所への相談
などを行う手間・費用がかかります。
他人が自社商標をどう使用しているかにもよりますが、訴訟を起こした場合は、対応のために少なくとも1年は人材と費用を割かなければなりません。
商標登録後の業務が決して少なくないことに注意が必要です。
コストをかけてでも登録・維持する必要があるか判断しかねる場合は、一度特許事務所や弁理士に相談してみるとよいでしょう。
登録商標にまつわる事例
登録商標の内容の具体例や、それらの使用方法についてご説明します。
- かゆみ・虫刺され薬の「ムヒ」
- インスタントラーメンの「チキンラーメン」
- 大阪府の郷土料理である「うどんすき」
は馴染みがある商標ではないでしょうか。
これらも登録商標の一つです。
それぞれの商標にまつわる事例をご紹介しますので、自社の商標の活用方法を検討する際の参考にしてみてください。
他人の商標を使用し数千万円の賠償請求【ムヒ】
かゆみ・虫刺され薬の「ムヒ」の商標をめぐって約5,000万円の賠償請求がされています。
損害賠償請求がされたのは、中国企業が「ムヒ」の模倣品の販売により、正規品を販売する池田模範堂の商標権を侵害したためです。
下図左のパッケージが「ムヒ」の正規品で、右のパッケージが模倣品です。
出典:偽「ムヒ」許しません 池田模範堂が中国で勝訴 | 北日本新聞
こんなときに損害賠償請求を行うには、商標登録が必須です。
もし池田模範堂が商標権を取得しておらず、中国企業が中国における「ムヒ」の商標権を取得していた場合、5,000万円の賠償金を得られなかったかもしれません。
商品パッケージのデザインが商標に【チキンラーメン】
商標は、商品・サービス名といった文字であるイメージが強いかもしれません。ですが文字の他に、図形・記号・立体形状・色彩・音が商標として登録可能です。
例えばチキンラーメンのパッケージデザインが商標として登録されています。
出典:J-PlatPat
商品名に加え、デザインなどを組み合わせて複数の商標を取得することで、模倣品を排除しやすくなります。
自社の商品・サービスの商標登録を検討される際は、文字だけに限定せず広い範囲で権利を取得できないかを考慮するのがおすすめです。
真似された商標を放置してはいけない【うどんすき】
商標登録後は、年金だけ収め続ければ独占的に使用し続けられるわけではありません。与えられた権利の管理・行使を怠らないよう注意が必要です。
現在、郷土料理の名称として多くの店舗で見かける「うどんすき」という文字は、以前は美々卯に独占排他権が与えられていました。
出典:J-PlatPat
しかし、あまりにも多くの人に無断で使用され、なおかつそれに対し美々卯が権利行使をせず放置してしまったため、普通名称化されました。
手間・費用をかけて取得した権利であっても、管理を怠ると自社の知的財産権を失うリスクがあるのです。
登録商標を維持する限り、管理業務が必要となるのを覚えておきましょう。
商標は自分だけで登録できる!
商標の出願・権利化の手続きは複雑で専門性が必要であるといったイメージを持たれている人も少なくないでしょう。
ところが、商標登録は自力で行えます。
ぜひ、以下の商標登録を行うまでの流れをご覧ください。
PC1台でできる!商標登録の流れを見てみよう
商標登録出願は、自宅のPCのみで行えます。
それぞれのプロセスと、手続きのサポートをしてくれるサイトは以下の通りです。
手順 | 内容 | サポートサイト |
---|---|---|
1 | 使用する商品・サービスの区分の確認 | 類似商品・役務審査基準 |
2 | すでに登録されている他人の商標の調査 | J-PlatPatでの簡易検索 |
3 | 出願の手続き | 電子出願ソフトサポートサイト |
4 | 審査結果への対応※ | 特許庁のお助けサイト |
※不要な場合あり
登録時のポイントは、自社の使用したい商標が、すでに同じ分野において使用されていないか。
手順1では商標を使用する分野(区分)を決めます。
続いては手順2、その区分において他人が同じ商標を使用していないかを確認します。
同じ商標が見つかった場合は、自社の商品・サービス名の変更が必要です。同じ商標が確認されなければ、出願の手続き(手順3)を行いましょう。
特許庁が出願内容を審査し、特に問題がなければそのまま登録されます。
商標の登録を認められない理由があった場合には、拒絶理由通知書というものが通知されます。
通知書に記載された問題を解消する(手順4)と、出願した商標が登録されます。
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個人での出願と代行依頼を比較してみよう
商標登録は個人で行えますが、ときには専門家に代行依頼する方が望ましいこともあります。
- 費用
- 時間・手間
- 取得できる権利範囲
の3つの観点から、個人での出願と代行依頼を比較してみましょう。
費用
個人での出願の場合は、上述しました通り44,900円(区分が一つの場合)かかります。
代行依頼する場合は、
- 出願手数料
- 登録手数料
- 出願前の事前調査費用
などが追加で生じます。
追加費用は10万円程度で済むこともあれば、100万円以上かかることもあります。
弁理士事務所によって、費用の算出方法が異なりますので、代行依頼をする際は複数の事務所へ相談するのがおすすめです。
時間・手間
代行依頼の割合を増やすほど、時間と手間が省けます。
- 複数の区分における商標登録を検討したい
- 登録可能性を高めるため念入りな事前調査を行いたい
といった場合には特に代行依頼をするのが好ましいでしょう。
商標登録出願を検討する時期には、商品・サービスの開発業務に追われていることも少なくないはずです。
知的財産権に関する専門的な仕事は基本的に外注する、といった判断も選択肢の一つです。
取得できる権利範囲
代行依頼することで、
- 調査段階で自社商品・サービスと関連性の高い商標を発見しやすい
- 自社が取得できる権利範囲が明確になりやすい
などのメリットが得られます。
商標を使用したい範囲が広いほど、弁理士に調査を依頼するのが望ましいと考えられます。
個人での出願と、代行依頼する場合の違いをまとめたのが下表になります。
個人での出願 | 代行依頼 | |
登録にかかる費用 | 低い | 高い |
登録にかかる時間・手間 | 大きい | 小さい |
取得できる権利範囲 | 取得すべき範囲を見落とすリスクあり | 自社が必要な範囲を専門家の視点で判断可能 |
出願を行う際の参考にしてみてください。
まとめ
商標権は、消費者に馴染みのある知的財産権です。
一見、識別が難しい商品・サービスが溢れている社会において、ブランド価値は消費者から選ばれる理由の一つです。
自社のブランドを守り続けるために商標登録は不可欠でしょう。
ぜひ一度、自社商品・サービスに関する商標登録を検討してみてはいかがでしょうか。
企業の研究開発部門と知財部門での業務を経験。
知財部門では、主に特許出願・権利化業務を担当してきました。
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