自分で商標登録はできる?登録の目的から方法まで徹底解説!
商標登録は個人で出願可能
知的財産権の一つである商標は、全ての商品・サービスにおいて使用されます。
特定の商標を独占的に使用するには、特許庁に出願の手続きを行い、登録する必要があります。
知的財産権に関する手続きは難しく、専門家しかできないのでは、と思う人も少なくないでしょう。
ところが商標登録出願は、個人で、しかもPC1台で行えるのです。
本記事では、個人で商標登録を行う方法、登録のメリット、費用などをまとめました。
費用をかけずに自身の商品・サービス提供の権利を保護したいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
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PC1台&自力でできる!商標登録の流れ
実際に商標登録を行うまでの流れは以下の通りです。
- 使用する商品・サービス名の区分を確認する
- すでに登録されている商標と重複していないか調査する
- 出願の手続きを行う
- 審査結果に対応し登録を完了する
これらのプロセスは、PC1台で実施可能です。
個人での出願を検討されている人は、以下に各工程の詳細をまとめましたので、参考にしてください。
1.使用する商品・サービス名の区分を確認する
商標登録出願を行う際、まずは自身が提供する商品・サービスの区分を確認する必要があります。
商標は、区分という45個のカテゴリーごとに出願する必要があるためです。区分の詳細は特許庁ホームページの類似商品・役務審査基準をご覧ください。
例えば、洋服を取り扱っている人が商標登録を検討した場合を想定してみます。
出典:類似商品・役務審査基準〔国際分類第9版対応〕 | 経済産業省 特許庁
まず、区分の第25類「被服及び履物」で登録を行うのが望ましいように感じます。
ここでポイントとなるのが、第25類のみで問題ないかを確認することです。例えばほかの区分でも登録できる余地があります。
- 第22類「ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維」
- 第23類「織物用の糸」
- 第24類「織物及び家庭用の織物製カバー」
もし第25類のみで商標登録した場合、同じ商標をその他の区分において使用している第三者がいても、使用をやめさせるのが難しくなります。
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2.すでに登録されている商標と重複していないか調査する
商品・サービス名の区分が検討できたら、その区分において自身が使用したい商標がすでに使われていないか確認してみましょう。
少なくとも行うべきなのは、J-PlatPatでの簡易検索でしょう。
出典:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
使用したい商品・サービス名を入力し、検索してみましょう。
似たような商標がすでに登録されていた場合、自身が提供する商品・サービス名を変更する必要があります。
3.出願の手続きを行う
登録したい商標が決まったら、特許庁に出願の手続きを行います。
書面もしくはインターネットで出願可能です。
インターネットで出願する場合、電子証明書と専用のソフトウェア(インターネット出願ソフト)を用います。
電子出願ソフトサポートサイトを参考にすると準備しやすいでしょう。
なお特許庁のペーパーレス計画推進に伴い、手続きを書面で行った場合、電子化手数料がかかります。(2,400円+書面の枚数×800円)
費用削減のために、PCで出願の手続きを行うのが望ましいでしょう。
4.審査結果に対応し登録を完了する
出願した商標は、初回の審査で登録されない場合があります。
登録できない理由があった場合に通知されるのが、拒絶理由通知書です。拒絶理由が通知されても、出願内容を補正したり登録されるべき理由を述べたりすることで、登録が認められる可能性があります。
拒絶理由通知書に対応する際は、特許庁のお助けサイトを参考にしてみてください。
審査にて登録が認められ、登録料を納付すれば、手続き完了です。
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手続きを自分でやるか、代行依頼するか迷った際の判断基準
商標登録を自身で行うより、プロに代行してもらったほうが良いケースもあります。
提供する商品・サービスの重要度や規模によっては、特許事務所に相談し、確実に必要な権利範囲を取得すべきでしょう。
自身で商標登録を行うか迷った際には
- 費用
- 時間・手間
- 商品・サービスの重要度
を判断基準としてみてください。
費用
特許事務所に商標登録のための各工程を外注すると、以下の費用がかかります。
- 調査費
- 出願手数料
- 中間処理対応費用
- 登録手数料
これらの価格の合計は、10万円程度で済むこともあれば、100万円以上かかることもあります。外注を検討される際は、複数の特許事務所にて見積もりを行うとよいでしょう。
その際、調査をどの程度行いたいかを事前に決めておきましょう。
調査の範囲によって、費用は大きく変わります。
もしも商品・サービスの提供を開始しておらず、登録できなければ使用する商標を変更してもよい場合は、無料の範囲で調査する、といった選択も可能です。
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時間・手間
商標登録の手続きを外注すると、時間・手間を減らせます。自身の仕事量にあわせて、外注を検討してみてください。
新しい商品・サービスの提供を行おうとしている段階では、他の業務にも追われていることが少なくないでしょう。
商標については専門的な知識がある特許事務所に任せ、空いた時間で商品・サービスの開発に力を入れるのが望ましいかもしれません。
商品・サービスの重要度
商標登録の手続きを外注すると、調査や手続きの精度が上がります。
商品・サービスの重要度によっては、特許事務所に外注した方が望ましいでしょう。
外注することで、自身では見つけられなかった第三者の商標を見つけられたり、適切な区分での出願・権利化ができたりする可能性があります。
商標登録を自分で行う場合と、代行依頼する場合の違いをまとめたのが下表になります。
自分で行う | 代行依頼する | |
---|---|---|
登録にかかる費用 | 低い | 高い |
登録にかかる時間・手間 | 大きい | 小さい |
出願前調査の精度・登録できる可能性 | 低くなるリスクあり | 高い |
提供する商品・サービスと権利範囲の一致度 | 低くなるリスクあり | 高い |
登録後の管理・権利行使時の負担 | 大きい | 小さい |
出願を行う際は、各項目を考慮しながら検討してみてください。
商標登録は必要ない?商標登録をするメリットとは
商標は、だれが提供しているのか・品質は安定しているのか・どのような特徴があるのかを示す役割を担っている、商品・サービスにとって重要な目印です。
少し専門的にいうと、
- 出所表示機能:同じ出所から流出したものである
- 品質保証機能:常に同一の品質を有する
- 宣伝広告的機能:消費者に一定のイメージを与える
といった機能があります。
同じ目印を多くの人が使用した場合、消費者は商品・サービスを区別できなくなります。
商標登録はなぜ必要か?
商標登録は、消費者に安心して商品・サービスを提供するために必要です。
商標登録を行うメリットは、大きく2点あります。
- 提供する商品・サービスが属する区分において自身専用の商標となる
- 第三者による自身の登録商標の使用をやめさせられる
例えば、同じ名前の商品が複数の会社から提供されていたらどうでしょうか。
消費者の求める品質・ブランドの価値を、販売者が提供できなくなってしまいます。
iPhoneを購入した際、実はApple社ではない他社の異なる携帯電話であったら、消費者が満足することは少ないでしょう。
もし商標登録をしていれば、他社が同じ名前の商品を提供していることが分かり次第、商品の販売・商標の使用をやめさせられます。
商標登録の費用はどのくらいかかる?
商標登録にかかる費用(特許庁費用)は、以下の通りです。もしも弁理士に依頼する場合は、別途弁理士費用が11万円ほどかかります。
- 出願料:3,400円+(8,600円×区分数)
- 登録料(10年分):32,900円×区分数
※価格は2022年6月時点のものです
区分が一つのみであれば、トータルの費用は44,900円です。
新たな商標を使用し、商品のブランド価値をゼロから作り上げるのは容易ではありません。
自身のみが10年間安心して登録商標を使用できる点を考慮すると、手続きにかかる費用は決して高くはないでしょう
なお、商標は10年ごとに更新登録料(43,600円×区分数)を追加で支払うことで、存続期間を延長できます。
まとめ
あらゆる商品・サービスにて使用されている商標は、知名度や収益性に関係なく、消費者にとっての目印となります。
大手企業が提供しているサービスも、フリーランスの人が販売を始めた製品も、その商標が第三者に真似されて価値が低下するのを同様に防ぐ必要があります。
商標の登録の手続きは、特許・意匠に比べて簡潔です。
これから自身が提供する商品・サービスの知財権の保護を検討される人は、まずは商標登録出願をしてみてはいかがでしょうか。
企業の研究開発部門と知財部門での業務を経験。
知財部門では、主に特許出願・権利化業務を担当してきました。
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