どうすればいい?特許の拒絶理由通知と拒絶査定の対処法
特許申請の手続きを進めていると、拒絶理由通知を受け取ることがあるかもしれません。
- いったいどんな通知なのか?
- この書類を受け取ったあと、どうすればいいのか
こんな風に焦るかもしれませんが、拒絶理由通知=特許が取れない、というわけではないので慌てなくとも大丈夫です。
今回は拒絶理由通知と拒絶査定について解説します。
特許の拒絶理由通知とは
特許の拒絶理由通知とは、出願した発明の実体審査の結果、出願された発明に特許性がない、と判断された場合に送られる通知のこと。この拒絶理由通知には文字通り、特許にならない理由が書かれています。
この書類はあくまでも、現時点で特許と認められない理由を通知するものなので、適切に反論、修正すれば特許権は取れます。
拒絶理由通知の種類
拒絶理由通知には、2つの種類があります。
- 最初の拒絶理由通知
- 最後の拒絶理由通知
「最初の拒絶理由通知」は言葉の通り、出願人が最初に受け取る拒絶理由通知のことです。
「最後の拒絶理由通知」とは、特許庁の説明を借りるなら『原則として「最初の拒絶理由通知」に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する拒絶理由通知』のことです。
出典:特許・実用新案審査基準 第I部 第2章 第3節 拒絶理由通知
この書類は原則2回までしか出されないものなので、基本的に2回目に送られた通知が「最後の拒絶理由通知」になり、書面にも最後とする旨が書かれています。
とはいえ、2回目に送られた通知全てを形式的に「最後の拒絶理由通知」にしているわけではなく、実質的に判断しています。
具体的には、本来1回目で知らせるべきだった指摘を連絡したり、1回目の指摘内容をミスしていたりする場合は、2回目でも「最初の拒絶理由通知」として処理されるのです。
拒絶される割合は?
ここで気になるのが、いったいどれくらいの人が拒絶理由通知を受け取るのか、ではないでしょうか。
PPHポータルが2021年7月~12月に集計した統計情報によると、一発で特許権を認められた人の割合は14.1%。つまり85.9%の人が一旦は拒絶されているのです。
なお最終的な特許査定率(特許を取れた人の割合)は75.8%です。つまりたいていの場合は、後ほど紹介する対応をすれば、無事に特許が取れるんです。
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なぜ拒絶された?拒絶理由一覧
発明が特許として認められないと、拒絶理由通知が送られて来てしまった場合、しっかりとその原因を見極め、それに合った対応をすることが重要です。
特許の拒絶理由は大きく4つに分類できます。
- 新規性なし
- 進歩性なし
- 先願発明と同じ
- 特許明細書の不備
新規性なし
新規性なしとは、特許において重要視されている、発明の新規性が欠如していることを意味しています。
つまり出願された発明と、既存の技術とで違いがないことを指摘されているのです。
進歩性なし
新規性なしと表現は似ていますが、進歩性なしの場合はあらたな発明であるということは認められています。
しかし特許に値するほど既存の技術から改良された点がない、と指摘されている場合に「進歩性なし」と通知されます。
先願発明と同じ
「先願発明と同じ」とはつまり、既に同様の発明が他者によって出願されている状況です。
特許明細書の不備
特許明細書の不備は、発明の説明が不十分であったり、特許の請求範囲が不明瞭な場合などに出される理由です。
提出した書類内容にもよりますが、請求の範囲を修正することで解消できる場合が多いです。
拒絶理由通知への対応方法
拒絶理由通知を受け取ったあと、どうすれば無事に特許権を取れるのか?
詳しく解説をしていきます。
意見書・補正書の提出
拒絶理由通知が届いたら基本的には、意見書や補正書を提出することで反論したり内容を修正したりします。
意見書とは、審査官が出した拒絶理由に反論するための書類です。
補正書は特許の請求範囲を修正したり、明細書の内容を補正するための書面を指します。
分割出願
なかには分割出願という方法を取ったほうがいいケースもあります。
もしもひとつの特許出願に複数の発明があったとき、一部を分割して新たな出願をすることができます。この新しい出願を分割出願、もしくは子出願と言います。
分割出願は、たとえばこんなときに採用されます。
複数の請求項のうち、一部が拒絶された
→拒絶された部分を削除する補正をして、特許性が認められている部分を素早く権利化。拒絶された部分は分割出願として、後追いで権利化を目指す
申請した複数の発明が、発明の単一性という要件を満たしていない
→一部の発明を抜き出して分割出願することで、要件を満たしていないという拒絶理由を解消する
最後の拒絶理由が通知されたので補正できる範囲が限定された
→分割出願すると新たに書類を作るので、補正したかった部分が修正できるようになる。修正した内容で権利化を目指す
放置した場合どうなる?
拒絶理由通知を放置する、という選択肢もあります。その場合、特許出願の手続きは先に進みませんから、実質、権利化を放棄したことになります。
拒絶理由から弁理士に代行してもらう、中途受任もアリ
中途受任とは、出願手続きの途中から弁理士に代行をお願いすること。途中で依頼する弁理士を交代する場合も中途受任と言います。
たとえば「自分で必要書類を揃えて出願したら、拒絶理由通知を受け取ってしまった。どうやって対処すればいいか分からない」なんてときに助かるサービスです。
もちろん自分で意見書・補正書を作ってもOKですが、意見書・補正書の作成にはときに、出願書類作成時以上の専門知識が要求されます。
意見書・補正書を的確に作れないと、最終的には拒絶査定という、特許権は与えないと決めた行政処分を受ける危険性があります。
拒絶理由通知への対応は、プロである弁理士にお任せするのが一番安心です。
知財タイムズと提携している特許事務所は中途受任も対応可能!丁寧なカウンセリングでサポートするので、ぜひこちらのフォームよりお問い合わせください。
拒絶理由への反論にかかる費用
出願時同様、拒絶理由通知へ反論する場合にも、ある程度の費用が発生します。自分で対応するなら特許庁への支払いのみ、弁理士に代行してもらうなら特許庁費用にプラスして弁理士手数料がかかります。
【意見書の作成】
- 特許庁費用…なし
- 弁理士費用…平均66,485円
【補正書の作成】
- 特許庁費用…請求項を1個追加するごとに4,000円
- 弁理士費用…平均63,556円
【分割出願】
- 特許庁費用…14,000円
- 弁理士費用…15万~30万円
ただし書類作成にかかる労力がケースバイケースなので、拒絶理由の内容や依頼する事務所によって料金はかなり変動します。
参考:平成15年特許事務報酬(弁理士手数料)に関するアンケート結果(日本弁理士会)
いつまでに対処すればいい?
拒絶理由通知への対応は、応答期間という締切までに行う必要があります。
応答期間は通知の発送日から数えて60日。この期間内に対応が終えられるよう、早め早めに行動するのが安心です。
応答期間の延長制度もある
期間内に申請すれば、応答期間を2ヶ月延長することも可能です。なお延長手数料として2,100円を特許庁に支払う必要があります。
また平成27年の法改正により、期間延長のルールが緩和されました。
この改正により、延長手続きをせずに期限を過ぎてしまったとしても、後から2ヶ月間、応答期間を延長できるようになりました。
ただし通常の延長手続きよりも手数料が高額で、51,000円が必要になることに注意しておきましょう。
拒絶査定とは
拒絶査定とは、意見書や補正書を提出しても特許権を認めるに足りないと審査官が判断したときに出される判定です。
もっと簡単に言うと、出願された発明を特許として認めません、という決定です。
この場合は意見書や補正書を再提出しても、特許権は獲得できません。
拒絶が確定したら、もう特許は取れない?
ここで注意しておきたいのが、拒絶査定=特許権を取れない、というわけではないこと。
もしも拒絶査定に納得できなければ、審判を請求することができ、この審判に勝てば特許を取得できるのです。
この審判は、拒絶査定不服審判と呼ばれています。
拒絶査定不服審判という選択肢
拒絶査定不服審判を受けたい場合は、拒絶査定が届いてから3ヶ月以内に申請をします。(特許法第百二十一条第一項)
審査請求費用は、特許庁に49,500円+(請求項の数×5,500円)を、弁理士に18万円~25万円程度の料金を支払います。
気になる審判の成功率は68.2%と高めで、半数以上が特許として認められています。
しかし成功するとは限らないわりに費用は高いので、本当に審判を請求するべきかどうか、事前に出願した発明をよく見直して慎重に検討する必要があります。まずは知財のプロである弁理士と相談をしてみましょう。
特許出願手続きで困ったことは、弁理士に相談しよう!
拒絶理由通知や拒絶査定が来ても、的確に対応すれば特許権が取れるので、すぐに諦めたり極端に不安を感じる必要はありません。
このような特許権取得までに発生する手続きは、知財のプロである弁理士に代行してもらうのが安心です。
一番安心なのは、最初の出願手続きから弁理士に頼んでしまう方法ですが、拒絶理由の対応から代行してもらう、中途受任という方法もOK!
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